「want to」か「have to」か
う〜む忙しい。今年は特に忙しいぞよ。忙しいというのはいいことです。ありがたいことです。
「want to」ではなくて「have to」が多いということは、自己を滅却できるということなので、悪いことではない。
禅の修行はそれを徹底している装置です。あそこには「want to」はありません。「have to」だけです。いや、あえて言うなら、「have to」を「want to」して入山するということでしょうか。
一般社会という虚構の世界では、たとえば人生を充実させるには「have to」ではなく「want to」で行動しなさいと言われますね。たしかにそうです。「want to」なら楽しいでしょう。
しかし、考えようによっては「want」というのは「欲」ですから、あんまりいいことではないんですよ。
そうそう、面白い話。「want」の語源も「欲」の語源も全く一緒なんですよね。「want」は「欠けている」「不足している」です。「欲」という字の語源は種々あるようですが、やはりつくりの「欠」に注目すると、「欠けている」「不足している」のニュアンスがあるものと考えられます。ちなみに人間の心理に使う時は「慾」の字を用いるのが正しい。
つまり、「want」も「欲」も「足りないからほしい」という気持ちが根底にあるわけですね。それが大きな問題だと思います。
まず「足りない」と思うこと自体、問題がありますね。この「不足感」「不満足感」こそが、人間の、特に近代人の煩悩の原因であります。知足の反対ですね。満ち足りていれば欲することないわけです。
仏教ではそういう境地を目指しますよね。というか、満ち足りているとも思わない。満ち足りていると思うと、それが基準になって相対的な不足感を生む可能性があるからです。
要はあるがままの現実を受け入れるということです。ワタクシの「モノ・コト論」から言いますと、「want」や「欲」はコト、受け入れるべき世界はモノということになります。
私は別に修行をしているわけでもありませんし、悟っているわけでもありませんが、自分の欲望というのはあんまりなくて、それを満たすこと、それが満たされることよりも、外から強制的に働く力、いわば「have to」の方に興味があります。
なんで、この「have to」は私のところに来たのか考えたりするのが好きなんです(変な趣味ですよね)。なんでオレがやらなきゃならないんだよ!?ではなくて、おおよくぞオレのところに来てくれた!っていう感じ(笑)。
いつも書いているように、自分の「コト」世界だけだとなんの成長もないんです。昨日の自分と同じなんですね。それより外部から訪れる「モノ」に身を任せている方が、想定外の自己が生まれる。これは実は楽しいことです。現実的にも、無理やりやらされたことによって新たなスキルを身につけることがほとんどですよね。
have は heavy に通ずる言葉です。重いモノを持たされてハーハーしている感じが「h」に、あるいはブーブー言ってる感じが「v」に現れていますね。そういう「負荷」が現れている。「have to」にもそういう感じがありますよね。
しかし、筋力もハーハー、ブーブー言いながらトレーニングしないと付かないのと同じく、様々な人間力を付けるにも「have」が必要なんですよ。だから、私はそういう負荷をありがたく思うのであります。
ちなみに「持」という漢字には、寺にモノを保管する、その状態を持続するという意味があります。
さてさて、長々と書いてもいられない。私にとって書くことは「have to」ではなくて、実は「want to」だったりして。あんまり成長が見られませんからね(笑)。
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