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2012.04.07

ブラックボード〜時代と戦った教師たち〜(TBS)

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 聴率的には惨敗だったようですね。しかたないか。教育に対する要求は強くなるも、興味や夢は抱けない時代です。
 まず感想というか、結論めいたことを言うなら、非常によくできた脚本の作品だった。学校ドラマの歴史の中では出色だったと思います。井上由美子さんのシナリオ力はすごいですね。
 もちろんドラマはドラマですから、現実の時代性や学校世界のままとは言えませんが、教育史、昭和史についてもドラマについても人一倍厳しい目を持っている(?)私も、充分に満足できる内容でした。もちろん3作通して。
 私の祖父は戦地に赴き、(おそらく)人を殺して復員し、戦後教職に戻りました。今、私の隣で一緒に働いてくれているおじいちゃん先生は、まさに校内暴力に体当たりでぶつかってきたカリスマ(名物)教師です。そして、私は今という時代の中で教師をしています。そう、私がたまたま大田区で育ったというのも、このドラマに対する理解や共感を深くするきっかけになったかもしれません。特に高度成長期の「蒲田」の実態をよく知っていますから。
 結局この連作が言いたかったことになると思いますが、時代は変わりますが子どもは変わらないのです。時代が変わるということは、大人が変わるということです。大人が変わるということは、結果として子どもを「変える」ことになります。
 つまり、子ども(生徒)はいつの時代も純粋な器であり、澄み切った鏡だということです。
 大人が軍国主義化すれば子どもの軍国主義化しますし、大人がカネの亡者となって人間愛を失えば校内暴力がはびこりますし、大人が個人主義に走り他者に無関心になれば学級崩壊が起きます。
 もっと端的に言えば、親子の関係の変化が教室に現れるということになります。これは日々現場で実感していることです。社会の最小単位である家族、特に人間の基本的な紐帯たる親子関係がそこに鮮明に現れます。
 そういう意味で、このドラマは、世間に対して大きなメッセージを送ったと思いますね。学校って、先生って大変だね、ということだけでなく。戦後70年の流れの中で一つのテーマを描いたおかげでしょう。この時代、この季節のこの時間帯にこれだけの大作を投入したTBS。正直見直しました(笑)。
 それぞれの先生像はいわゆる熱血です。しかし、今までの教育ドラマ(たとえば金八先生)と違って、その熱血さが時代(社会・大人)には受け入れられず、様々な問題を引き起こしていきます。そのあたりは、我々プロからすると、なんとなく溜飲を下げられたというか…まあ、どんなドラマもその道のプロからすると、おいおいそんなことで解決するなら苦労しねえよ、ということになるのでしょうが…少し嬉しかったかも(屈折してますかね…笑)。
 実は先生というのは「熱血」であることが最低条件なんですよ。「熱血」とは、時代(社会・一般的大人)に流されないということですね。子どもが変わらないのと一緒で「熱血」も実は変わらないのですよ。ある意味「熱血」とは「子ども」であることでもありますから。
 ただですね、たとえばこの連作の主人公たる3人の先生ですけれども、みんなそういう意味では「熱血」であり、純粋であり、愛に溢れた人間なのですが、それだけではうまく回りません。教育現場、学校はチームプレーが重要です。熱血だけだと衝突するだけです。それをうまく活かす上司や同僚がいなければなりません。
 第三夜で言うと、副担任の熊谷先生なんか、実はなかなか優秀だと思いますよ。もちろん校長先生の存在も大きいけれども。
 あえて言えばですね、今の教育現場は、そういうチームプレーや連携プレー、ある種の補い合いができなくなっているんですね。特に公立。悪い意味での公務員化が極端に進んでいます。サラリーマン化じゃないですよ。公務員化です。ことなかれ主義というか、我関せず主義というか。
 明日は日曜日ですが、私の学校の入学式です。4月8日はお釈迦様の誕生日です。毎年その日に入学式を行います。それへ向けて、この三夜連続の「ブラックボード」は、とても良い刺激となりました。今まで通りやるしかないなと。今まで通りとは「不易流行」ということです。根幹の部分は変えてはいけない。しかし、時代に合わせる部分は合わせないと。変わらない子どもと、変わる大人(社会)、両方に関わっていかねばならないのが「教師」なのですから。
 ちなみに公式サイト、キャストの皆さんのインタビューがどれも興味深い。勉強になりました。

ブラックボード公式

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