人間関係の修復力について
ある意味この二人が私たちを熱くさせた!?
おお、体が痛い。すねに青あざができている。あいつ強くなったな…。
親子ゲンカの話を皆さんにするのもなんですが、最近思っていることに関係しているので、ぜひ読んでください(笑)。
先ほど下の娘(小3)とガチの喧嘩をしました。口げんかではありません。格闘です。
昨日その娘と一緒にサムライTVでスターダムの後楽園ホール大会の速報を観ていたんですよね。それで、メインの高橋奈苗vs里村明衣子の素晴らしい戦いに感動して、こういう折れない心が大切だ、戦いの中から尊敬の念が生まれる…てなことを語り合っていたわけです。
その成果がさっそく出ました(笑)。いやあ、負けん気強いわ。
発端は…たぶんこんな感じでした。娘二人とも、最近はパソコンやiPhoneやDSのディスプレイばかり眺めていて、その中のヴァーチャルな世界にはまりすぎてまして、今日は母親が食事の準備を手伝ってと言ってもそっちのけ、しまいには不機嫌になっていたので、それでこっちもちょっと溜まっていたモノもありましてね、怒鳴ったんですよ。
そうしたら、なぜか下の娘がいきなり私にローキックをしてきた。その時の妹の怒りは実は姉に向かっていたんですが、そこに乱入してきた私にも何か気に入らないモノを感じたんでしょうね。
当然心のプロレスラーたる私は格が違うとばかりに、蹴られながらも、全然効いてないよ、もっと打って来いや!と、ノーガードで間を詰めて娘を後退させていきます。迫力で圧倒しようとしたわけです。
今までなら、そこでやめていたのに、今日の下の娘はなかなか引き下がりません。近距離からパンチを放ってきます。そこで私はパンチを封じるために彼女の両手首をつかみました。すると泣きじゃくりながら、強烈なキックを私の急所に叩きこんできたではありませんか(笑)。
さあ、こうなったら、木村政彦に金的を打たれた力道山状態です。いきなり私もキレてしまいました。ちょうど居間に昼寝用の布団が敷いてあったので、そこに押し倒してマウントポジションを取ろうとしました。
しかし娘は、驚くほどの回転と怪力のキックで私の接近を許しません。その中にも数発の金的がチーンと命中し、ますます私は熱くなってしまいました。
彼女の両足を取って逆エビに持って行こうとしますが、それこそどこから力が出ているのかというほどの馬鹿力でそれを阻止してきます。しかたないので腕と足の両方をつかんで持ち上げ、マットに叩きつけたり、ケツにサッカーボールキックをしたりしましたが、それでも心が折れません。時々、場外(?)のマットのない所に落ちたりして、頭をゴンとか床にぶつけているのに、今日はいつもと違って痛いフリすらしません。
そのうち、母親が心配して止めに入り…ではなく、父親に暴力を振るう娘にキレて、参戦しようと近づいて来ました。つまり、私の加勢をしようとしたのです(笑)。大声で何か叫んでいます。
しかし、私は、これはオレとコイツの戦いだ!下がれ!と言って母親をも威嚇します(マジでプロレスの見過ぎでしょ…笑)。上の娘はただ狼狽するだけ。
で、結局どのくらい戦ったでしょうね。二人ともずっと全力を出していましたから、けっこう息が上がってきました。いや、正直こんな小娘ちょろいと思っていたんですが、本当に予想以上に強いし粘るんですよ。うわぁ、赤ん坊だと思ってた娘も成長したなと、本当に心から思う瞬間でした。
で、ある意味私の方が先に心が折れちゃったのかもしれません。ずるい戦法に出てしまいました。つまり冷静を装って理屈で攻めはじめてしまったのです。もともと理由がよく分からない戦いでしたしね。
しかし、ダメなんですよ。「モノ」世界に「コト」を持ち込んでも。その時の娘には「物の怪」が憑依していますから。ある意味自分にもそういうモノが憑いて言葉を超えたコミュニケーションをしていたのに、自分から土俵を下りてしまった。
そんなにいやだったら出ていけ!…今思えば、それも変な理屈ですが、私はある意味伝統的なずるい攻撃に転じてしまいました。
娘は無言でこちらをにらみつけ、そして、そこに敷かれていた掛け布団を抱えて、そのまま玄関から外に出ていってしまいました。布団を持っていくところが可愛いっすね(笑)。
すぐにカミさんが心配して娘を追いかけました…いや、それも違うな、カミさんも怒りが収まらず、そのまま娘に逃げられてはたまらんと、追い打ちをかけたのです。
なんだか、外で怒鳴りちらしています。優しく「お父さんに謝りなさい」と慰める優しい母親ではなく、まるで鬼神です。いったい何を競い合ってるんだ?ウチの家族は。上の娘だけは冷静なレフェリー(笑)。
で、庭のデッキに布団を敷いてふて寝しようとしていた下の娘は、母親にとっつかまって部屋に帰って来ました。しかし、私の前は素通りして、二階の子供部屋へ。そこから籠城が始まりました。
我々3人はそんな下の娘を無視して夕飯を食べ始めました。すると、下半身不随の黒猫ミーが階段の下から、二階に向かってニャーニャー言い始めました。そして、上半身の力だけで階段を昇り始め、途中何度か転げ落ちながらもなんとか二階まで昇りきり、娘の籠城している部屋の閉ざされたドアの前でニャーニャー鳴き続けました。
私たちが耳を澄ましていると、ガチャとドアの開く音が聞こえました。どうもミーを部屋に招き入れたようです。
そうして5分くらい経ったでしょうか、再びガチャとドアの開く音がし、まずミーがダダダダダと階段を駆け下りてきました(ほとんど転げ落ちているのですが)。そして、その後ろから静かに娘が階段を下りてきました。
私があえて目を合わせず無視していると、娘は私の前に回っていきなり土下座したと思うと、泣きながら「ごめんなさい、ごめんなさい」を繰り返しました。
またここからはプロレス的世界です。そう、戦いを終えて互いを尊敬しあう一つの形、すなわち互いに頭を合わせて礼をしあったのです。いやあ、プロレス教育っていいなあ…(泣)。私も思わず涙してしまいました。
「いいんだよ、いいんだよ」「ごめんな」「お前強くなったな」「大したもんだ、その折れない心」。
私がそう言うと、娘はおもむろに私の背後に回って、優しく肩をもみ始めました。お互い真剣にぶつかり合って本当によかったと思いました。
考えてみると、上の娘にはけっこう体当たりでぶつかっていった記憶があるのですが、下の娘はある意味要領がいいのか、そういうことはなかったんですよね。もしかすると、そういうモノを求めていたのかもしれません、お互いに。
これを「体罰」だとか「虐待」だとか言う人もいるでしょう。私はそういう次元で子どもに接しているわけではありません。なんと言われようとここは譲れません。
最近、学校でこういう話をよくします。最近の子どもは人間関係に疲れることが多い。子どもというか若者もだな。
それは、人間関係の修復力を持っていないからです。いや、持っていないとか身につけていないというのではなく、それを信じていないのです。
つまり、人間関係には「自然治癒力」があるということを体験していないのです。その人間関係の自然治癒力が絶対的に保証されているのは「家族」の間においてです。ウチの娘どうしを見てもそうですね。ものすごい姉妹ゲンカしますが、すぐにケロッとして一緒に遊んでいる。母親が娘を叱っても叩いても一緒です。すぐに甘えるようになる。
それは言うまでなく、絶対的な「愛情」に基づいているからです。理屈を超えた本能的世界です。そこで私たちは人間関係の「自然治癒力」を実感し、他者に対してもその存在を信用し、その効果を期待するようになります。それが人間関係の「修復力」です。
それが最近の親子関係では、ある意味親が子どもに気をつかって体当たりの勝負ができなくなっている。はっきり言ってしまえば、親が子どもとの関係を崩したくないというか、子どもに嫌われたくないというか、そういう気持ちで接してしまっているんですよね。
そうして育った子どもは、そういうふうに決定的に憎しみ合い、殴り合った(とその時は思っている)ことがあっても、すぐにその関係は修復し、逆にそれを通じて分かりあえたり、そういう可能性があることを知りませんから、まずは人間関係が崩れたり、ちょっと軋轢が生じたり、意見がぶつかり合ったりすることを避けたがります。
そして、実際にそういう問題が起こると、絶望的な気持ちになってしまい、病んでしまいます。上司に叱責されて出社できなくなる新人社員とか…。
だから、絶対幼い頃にウチみたいに(いや、ウチは行き過ぎだろ…苦笑)、しっかりぶつかり合った方がいいのです。親もある意味バカみたいに感情に任せて暴れたりした方がいいと思います。あっ、学校の先生もね(笑)。
そして、もちろんその逆、バカみたいに褒めたり、喜んだり、一緒に遊んだりも必要です。そういう意味でも、ウチはプロレスに育てられていますね。
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コメント
いつも楽しく拝見させていただいてます♪
今日の記事を見ていて、初めのほうは笑いながら読んでいたんですが(庵主さんの急所は大丈夫でしたか?w)、読み進めるうちに感動して涙が出てきました。。。
絶対的な愛情を前提にしたぶつかり合いというのはすごく大切なんだと改めて教えてもらえました。ぶつかっても安心、大丈夫なんだっていうことを身を以て体験できることはすごく有り難いことなのかもしれませんね。
、、、それにしても庵主さんの御家族はすごいなぁ(笑)
投稿: ニキータ | 2012.03.23 22:43