リストの「キリスト」に「人間」を聴いた…
リハ風景
リスト「キリスト」全曲演奏会、盛況のうちに終了いたしまた。
ご来場くださった皆さま、ありがとうございました。そして、演奏者の皆さま、お疲れ様でした。
本当に素晴らしい体験をさせていただきました。お誘いくださった淡野弓子、太郎さまありがとうございました。
私にとっては全くの未体験ゾーン。新たな発見が多数ありました。リストを演奏するのも初めて。というか、19世紀後半の音楽を演奏するのも初めてです。
私、変なんですよね(笑)。古楽と現代大衆音楽は演奏するけれども、いわゆるジャンルとしての「クラシック」の部分がすっぽり抜けていた。最近皆さまのおかげでそこを埋めつつあります。
今日もバロック・ヴァイオリンでいつもお世話になっている渡邊慶子さんと話したんですが、「あごで押さえて弾くのも久しぶり」「ヴィブラートのかけ方が分からない」など、モダンの方々からすると、実に妙な状況なんですよね(ま、まんまバロック・チェロでリストを演奏していた猛者もいらっしゃいましたが…笑)。
私はモダンをちゃんと弾いたことがないので、音楽や楽器や演奏技法の変化(進化かどうかは別として)というのをつくづく感じることが多い。おそらくそうやって歴史の流れ通りに技術を習得していっているのは、世界でも私くらいでしょう(笑)。
あれだけ大きな会場で演奏するのも初めてでしょうかね。新宿文化センター、初めて足を踏み入れたんですが、すごいですね。区でああいうホールを持っているんだ。
そしてホールに設置してあるパイプオルガン。ああいう大型のパイプオルガンを生で聴くのは実は初めて。初めて聴くのが演奏者として、というのが実に多いですね。
楽器のみならず、楽曲に関しても、最近そういうことが多くて楽しい。今回の「キリスト」ももちろんそうです。実はロマン派自体初めての経験です。聴くこともほとんどなかったので。私にとってのロマン派は演歌でしたから(笑)。
初めてと言えば、今回の演奏会の一つの目玉、リストが指定した「ハルモニューム」という楽器のことも書かねば。
私たちヴィオラのすぐ後ろに鎮座したこの楽器がハルモニュームです。まさにリストの時代、19世紀のオリジナルです。日本はもちろん、世界でもなかなかお目にかかれない。
ものすごく簡単に言ってしまうと、昔幼稚園にあった(今でもあるのかな?)足踏みオルガンですね。実際歴史的に考えてもそういうことです。
私のすぐ後ろで「ふいご」が動いていました。風の音、それも人間が起こす風ということで言えば、やはり管楽器に近いのでしょうか。リストがこの楽器を使いたかった理由がよく分かりました。
ヨーロッパの演奏家たちによるこのリストの「キリスト」の録音でも、ほとんどがオルガンで代用されています。それが、日本でこうして復元演奏されるすごさ。リストもびっくりというか、喜んでいることでしょう。
そして、全くの偶然だそうですが、新宿文化センターのパイプオルガンは、ハルモニュームも製作したというかのカヴァエ・コルの様式によるロマンティック・オルガンです。すなわち、強弱がつけられるオルガンですね。19世紀ロマン派の夢とアイデアと工業技術が凝縮した空間となりました。
もちろん、ロマン派の音楽に対する挑戦と実験、そして発見という点でも興味深かった。いや、大変でしたよ。あんなに♯や♭がたくさんついた楽譜を読むのは初めてですから。そして、いきなりのめちゃくちゃな転調(笑)。♯7つから♭5つとかね。対応するのに必死…というか死亡。
なぜ、私たち近代人はああいう表現を必要としたのでしょうかね。近代人というか、近代ヨーロッパ人でしょうか。古代日本人(?)である私には、正直別次元での出来事というか、いやある意味新しくも古臭いような気もしましたね。
つまり、いつも言っている、「近代ヨーロッパ音楽」という世界的に見ると非常に特殊で狭い音楽に対する自己嫌悪というか自己批判というか、それが現れているかなと。五線譜に表現される(表現されてしまう)音楽の異様さというか、不自然さというか、そういうコトに対してモノが湧いてきたような感じでしょうかね。
その象徴が長三度の気持ち悪さでしょうか(こういうと理解されないことが多いのですが、世界全体で見ると実際そう感じる人の方が多いのです)。そこを克服するために不協和音や半音階、そして異常なほどの珍奇な(!)転調を施したりして、その座りの悪さをごまかそうとした感じがします。
バッハ(神)に対する絶対的な敬意と、そこから生まれる「人間」の卑屈な精神というか。いや、悪い意味ではなく、人間回帰なんですよ。そして、その後印象派が生まれ、さらにジャズが生まれ、現代の大衆音楽で再び「人間性」を取り戻したと。聖から俗への回帰というか。
そういうプロセスを痛烈に感じながら演奏していました。リストも人間性を取り戻そうと必死だなと。それも「キリスト」の一生を通じて、信仰における「人間性の回復」も含めて、歴史と戦っているなと。
私は音楽に限らず、ロマン派についてなんの経験も知識もなかったのですが、今回の経験で、急に何かつかんだような気がしましたし、私の中に「ロマン派的なるモノ」があることが分かりました。これは大きな発見でしたね。
やはり、自分が経験して初めて分かることがたくさんありますね。それも自分の守備範囲外のことを経験すると、ある種の「苦痛」や「困惑」が発見の手助けをしてくれる。今さらながら「成長痛」「筋肉痛」「産みの苦しみ」を味わった気分です。
本当にありがとうございました。
最後に、そんなロマン派の原点回帰、人間性回復の祈りを感じた1曲を。今回のオラトリオ「キリスト」の第13曲。ハルモニュームと女声合唱による聖歌です。この古代性こそが実はロマンだったのかと実感して、本番中に涙が出てしまいました。足踏みオルガンの懐かしさってこれだったのか…。
この動画ではハルモニュームではなくオルガンを使っているようですが、ぜひ聴いてみてください。復活祭のグレゴリオ聖歌です。最後の和音のみ近代人リストが現れていて、それはそれで感動ですね。
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今日は、昨日東京で活躍した(?)ものを紹介しましょう。
なら、カードも入れられるケースを探そうということで、見つけたのがこれ。
デザインや素材もなかなかいいでしょう。パッと見iPhoneだとは思えない。それが予想外に功を奏してくれました。というのはですね、会議の時とか、さりげなく机の上に置きやすくなったのですよ。ケータイ、スマフォ然としていると、なかなかそれって難しいじゃないですか。しかし、これだと、そういう気配を消せますし、実際手帳だと思う人がほとんどのようです。
全体は本革調のポリウレタンレザー。フタのワンポイントであるラインは本物の木材が使われています。この質感がいいですね。天然素材の安心感というか温かみというか。
ちなみにこれ、デザインも素材もいいんですけど、なんとなく工作のレベルはイマイチでして、少し手を加えました。フタのロック具合もきつすぎたので一部削りましたし、iPhoneを収めるプラスチックの枠の部分もなんとなく歪んでいたので修正しました。ま、それも私にとっては楽しみの一つでしたけど。
毎年春は秋田に行っているのですが、今年はちょっと忙しくて断念しました。そう言えば昨年も震災後で行けなかったんだな。雪解けの秋田も大好きなのですが。
場所は神保町。日本教育会館の地下にある「御燗」というお店です。なぜ、私がここに行くことになったのか…いろんな事情をご存知の方にはとっても意外に思われることでしょう(笑)…というのは、とりあえず置いといて。
今回はカミさんと、そして職場の後輩と一緒にうかがったのですが、そのおいしい料理とお酒、そして温かいお店の雰囲気のおかげで、あっという間に4時間が過ぎてしまいました。こんなに時間が早く感じられたのは初めて。そのくらい満足だったということですね。
実は、このお店のおかみさんが、ウチのカミさんの地元の先輩でして、二人は今日24年ぶりに再会したのでした。カミさんの生まれ育ったところは、このブログでも何度か紹介しているとおり、羽後町の山の中でして、地域の人たちはみんな顔見知りという感じのところ。今はお互い地元を離れて違う場所で生活しているのに、こうして四半世紀近くを経て再会できたのは…。
今日もお店は常連さんとおぼしきお客様でいっぱいでした。場所柄教育関係の方が多いようで、今日も山形の先生方とお話をさせてもらったり、お酒を酌み交わしたり、とても貴重な体験をさせていただきました。いろいろ勉強になったなあ。
ニュース等でご存知のとおり、29日の日本地理学会において発表があるようです。
本日めでたくUniversity of Mt.Fuji(富士山大学)が開校いたしました。その最初の講義「フジファブリック学」第1回「茜色の夕日」の講師を担当させていただきました。
今日は国語部会で後輩たちにお話をしました。今まであまり言わなかったことも歯に衣着せず言わせてもらいました。
おお、体が痛い。すねに青あざができている。あいつ強くなったな…。
考えてみると、上の娘にはけっこう体当たりでぶつかっていった記憶があるのですが、下の娘はある意味要領がいいのか、そういうことはなかったんですよね。もしかすると、そういうモノを求めていたのかもしれません、お互いに。
今日は「語り」と朗読にヴィオラでBGMと効果音をつける仕事がありました。得意のぶっつけ本番即興演奏です。まあまあうまく行ったかな。私が参加した演目はあまんきみこ「ちいちゃんのかげおくり」、芥川龍之介「蜘蛛の糸」、小泉八雲「雪女」でした。
また一つの時代が遠くなりました。我々がそれを「昭和」と呼ぶ時、すでにそこは吉本隆明さんの言う「共同幻想」の原理が働いています。
くしくも今日、新幹線の100系と300系が引退しました。
ちょいと忙しいので、今日は軽めに。この前
昨日は有感地震が5回しかなく、それも関東・東北は福島沖の1回だけ。まさに嵐の前の静けさでしたね。打って変わって今日は20回以上になりました。
三陸沖のアウターライズと言えば、昭和の三陸地震ですね。震源を比較してみましょう。似ていますね。ちなみに昭和三陸地震では、このポイントを始点として南に100キロほどプレート表面が跳ね上がりました。
世間では新型iPadが評判となっています。たしかにあの液晶はすごい。興味はあるけれども、どこで何に使ったらいいのかよくわかりません。よって眺めているだけです。
プロレスとジャズの親和性は高い。というか、本質が同じなんですよね。
我々は3.11と同様に、この3.9も忘れてはいけません。ある意味、この3.9だけが我々に対する警告であったわけですから。
3.11から1年になろうとしています。しばらく防災に関する記事が続くかと思います。今日は東京の話。
今日、ちょうど「首都直下地震、震度7のおそれ」というニュースが流れましたね。この発表以前の国や東京都の試算によると、震度6強の東京湾北部震源地震が起きた場合、死者は阪神淡路大震災とほぼ同数の6400人ということでした。震度7になることによって当然その数は増えると思いますが、それ以前に、震度6強でも、さすがにこの数字はないでしょう。ケタが違うと思います。関東大震災で10万人ですからね。
浜離宮朝日ホールで行われた、東京クラシカルシンガーズ・オーケストラ・オン・ピリオド・トウキョウによるバッハのマタイ受難曲初期稿全曲演奏会、超満員札止めの中、無事そして感動的に終了しました。ご来場くださった皆様、ありがとうございました。
今日は桃の節句にちなんで、ピーチの話を少し。
ところでですね、私、人ごとながら桃の将来を心配してしまうんですよ。ピーチというか航空業界全体、いや飛行機という乗り物の存在に関してかな。
カミさんが英語のセンセーをやっていることもあり、また、自分自身があまり英語が得意でないからか、「英語教育」にはけっこう興味があります。
GoogleがEUなどの延期要請を無視し、予定通りに新しいプライバシーポリシーの適用を開始しました。
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