『寺山修司全歌集』 (講談社学術文庫)
今日は朝日新聞さんの取材を受けました。折り紙に関することです。久しぶりに生徒たちと折り紙の授業を楽しみました。どんな記事になるのでしょうか。
最近、本当に少年時代の自分に感謝するんですよね。昔取った杵柄というか、昔の自分に救われてばっかり。あの頃、出会ったモノやコト、そしてヒトが、今でも生き続けていて、そうして自分を助けてくれる。仕事のベースがほとんどそこにあります。
折り紙も音楽も文学も絵画も機械も地学も天文も、ぜ〜んぶ小中学校の時に出会ったものばかり。それらが今の自分の生活や趣味や仕事のベースになっている。
あれ?つまり、あの頃から全然成長してないってことですかね(笑)。永遠の中二病ってオレのことか。
というわけで、今日はこれを紹介しましょう。最近再会したものです。そう、再会って本当に楽しいですね。寺山修司との再会。あの頃の自分との再会。
私が寺山に執心していたのは、高校から大学にかけてでしょうか。姉が演劇をやってましてね、寺山にずいぶんと憧れていて、天井桟敷にも入ってやろうかと画策していたのを記憶しています。
今思えばビートルズに出会ったのも姉の影響ですし、やっぱり家族というか兄弟の影響というのは大きいですよね。今ウチの娘二人を見ていても、妹が姉から影響を受けているのがよく分かります。というか、ほとんど強制的にも共有させられていますね。まあ、そうやって文化というのは伝承・伝播されていくのでしょう。
さて、寺山については、ええと、今までどんなことを書いてきたかなあ。あったあった、ええと6年前に「田園に死す」について書いてますね。「寺山修司について語るのはほとんど無意味でしょう」いきなりこれかよ(笑)。
いやいや、たしかにそうかもしれない。土方巽の言葉もそうなんですよ。王仁三郎の霊界物語もそう。「コト」で「モノ」を語ったところが、彼らのすごいところなんです。だから、一般的な、規格化した、社会化してしまった「意味」から入ると、もうその本質が見えなくなるように仕組まれている。
この歌集も全く同じ罠が仕掛けられた装置のコレクションとなっていますよ。特に、最近ご縁をいただいて自分自身も「エセ歌人」を気取っていますから、この寺山というその道の鉄人の偉大さが、全く痛いほどによく分かります。
ずるい。ずるい。このずるさは、やはり青森の太宰治に共通するところがある。同じ東北人であるウチのカミさんなんか、もう寺山を読むと大笑いしてしまう。決してまじめな顔で分かったフリなどしません。
私は秋田の山奥に異邦人として潜入してしまったあの夜のことを思い出します。つまり、カミさんにいわせると、本当に「ずるい」のだそうです。東北のあの日常のモノガタリを商品にして、都会で、いやいや世界的に評価されるまでになった太宰や寺山や土方は「ずるい」と。なるほどねえ。
彼らはあえて母語を封印して、「日本語」(標準語あるいは共通語)というフィクションでそれをやらかした。そこが、我々「日本人」(標準語あるいは共通語話者)からすると、実に魅力的に感じるわけです。高度経済成長下の東京で育った若かりし頃の私なんか、すっかりやられてしまった。そして、今でもやっぱりやられてしまう。
では、太宰風に、寺山風に、土方風に文章を書けるか、歌を創れるかというと、これがまた無理なのです。なんちゃってまではできますが、本格的には無理です。
こう考えてくると、文学や芸術というものは、すなわち「母語」の共通語への翻訳である、とも言えそうですね。
私は、「文化」を「その土地の自然が人間の活動を通じて現れたもの」と定義していますが、それとも似ていますね。
うむ、分かったぞ!そうか、オレが何ごとにも「エセ」で、本物の「芸術家」になれない理由が。「故郷」がないからだ。「母語」を持たいないからだ。そうか…これって今からどうしようもないじゃん!残念すぎます。
いくら青少年時代に豊かな体験をしても、それ以上にはなれないのか…。
Amazon 寺山修司全歌集
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