メタンハイドレートは救世主か悪魔か
今日、渥美半島沖でメタンハイドレートの採掘試験始まったとのニュースがありました。
「燃える氷」ことメタンハイドレートは、資源貧国日本にとって救世主となるのではと期待されている物質ですね。
上の地図をご覧いただくと分かるとおり、日本は世界的でも有数のメタンハイドレート産出地です。原発事故のこともあり、エネルギー問題が取り沙汰されている昨今、国内で産出されるこの資源が実用化すれば、これはたしかに喜ばしいことと言えそうです。
メタンハイドレートの開発は1990年代に本格化し、国の事業としては現在重要な折り返し地点に来ています。今回の採掘試験も成功すればおそらく世界初となる画期的なものとなるでしょう。
この試験は当初の計画どおりに行われるもので、震災や原発事故、あるいはそれに伴う原発利権や石油利権の弱体化によるものではありません。
もちろん、世の中でまことしやかにささやかれている、ちきゅうによる「人工地震説」、「核爆発説」、「メタンハイドレート爆発説」などとは関係ありません。私は、そういう自然を馬鹿にした(つまり人間の力や科学の力を過信した)陰謀説などには与しません(苦笑)。
しかし、地震とメタンハイドレートが関係ないかということ、そんなことはありませんね。上の地図は世界の震源地図です。メタンハイドレート埋蔵地図とずいぶん似ています。それは当然です。メタンハイドレートが生まれて保存される環境と、地震が発生する環境には共通点があるからです。
地球の運動の力がかかるところには、恵みと災いの両方が存在するのです。富士山に住んでいると本当にそう思います。
今回採掘が行われる渥美半島沖、すなわち東部南海トラフもまた、思いっきり東海・東南海地震の予測震源域ですよね。南海トラフ全体で考えると、いわゆる東海・東南海・南海三連動巨大地震の震源域そのままです。
そんなところで採掘をやって大丈夫なのでしょうか。こういう心配は当然あっていいものと思われます。
それは杞憂だと専門家(国)は言いますね。穴を開けると言っても地球規模からすれば針の穴のようなものだと。
しかし、東部南海トラフにおけるメタンハイドレートの埋蔵量は、天然ガス「たった14年分」とはいえ、体積にすれば1兆立方メートルを超えます。穴は小さくとも、抜かれるガスの体積がそれだけになれば、これはなんらかの影響があってしかるべきです。100%何もないとは言えませんね。
現在考えられている抽出法は「減圧法」だそうです。メタンハイドレートは高圧化で安定していますから、その圧力を下げると勝手にわき上がってくるのだとか。
つまり、地震の発生源であるアスペリティに対してもなんらかの(プラスかマイナスかは分からない)圧力の変化を与えるわけですから、地震のトリガーにならないとは言えません。
もちろん、当該地域での大地震の発生は、将来的には100%避けられないわけですから、その時期を早めることにメリットがあるという考え方もできるわけですし、場合によっては連動を避けるきっかけになるかもしれない。
しかし、そうして自分たちの都合で自然のサイクルに手を加えることが、はたして人間には許されのかどうか、これは考え方が分かれるところでしょう。私はあまり積極的に賛成できません。
冷静に考えてみれば、今回試験が行われる東部南海トラフにおけるその埋蔵量は天然ガス「たった」14年分弱であり、その開発期間や開発費用のことを含めると、はたして本当に今必要な資源なのか疑問に思わざるをえません。
日本全体で考えると天然ガス100年分近くの埋蔵量があると言われていますが、しょせん100年分とも言えますし、そこにあるものをまた使いきろうとしているとも言えます。
その場しのぎの積み重ねに終始するよりも、私たちのエネルギー消費のあり方を考えなおすべき時だとも思いますね。大変難しいことなのですが。
はたして、メタンハイドレートは救世主なのか、はたまたある意味原子力よりも怖い悪魔なのか。私たち人間にはそれを知る術はありません。実際、歴史上の戦争のほとんどは資源エネルギーの取り合いから始まっていますし、エネルギー問題は常に大いなるかけ、ロシアンルーレットなのです。
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