BBC This World 2012『Inside the Meltdown』(メルトダウンの内実)
衝撃のドキュメンタリー。必見です。2月23日にイギリスで放映されたものです。
津波が福島第一原発を襲う瞬間の映像、高台に避難する作業員、原子炉建屋内の生々しい映像、自衛隊、消防隊の命がけの作業、菅さんの現地視察の機内映像…とにかく、我々日本人が見たことがない映像が目白押し。すさまじい映像資料であり、圧倒的な緊迫感です。
そして、その災害に見舞われた人、危険な作業にあたる人、さらには当時の首相もでしょうか、とにかく個人の内面にまで迫るその制作方針と手法には改めて感心しました。BBCおそるべし。
逆に言えば、なんで日本でこういう映像やこういう証言が放送されないのか、非常に疑問ですね。やはり報道規制というものがあるのでしょうか。
もちろん、様々なドキュメンタリーにおいて、外国のメディアの方がその国のそれよりも核心をつく、あるいは本質を表現するということはよくあります。日本がその立場になったことがあることもよく分かっています。しかし、ここまで大切なことが隠蔽されていたとなると、さすがにショックです。
菅さんにしても、なぜ国民には言わず、外国のメディアにはこうして語るのでしょうか。ある意味残念なことです。菅さんの言葉には、自己弁護も感じられましたが、一方では一国の命運を担わざるを得なくなった一人の人間としての苦悩や覚悟というものも感じなくはありませんでした。
ただ注意したいのは、これがどこまで「ドキュメンタリー」「ドキュメント」かということです。BBC自身が作った「芸術のわな」にも示されていたように、これはあくまでBBCが構築した「世界」であります。
実際、どこまでが現場の映像で、どこまでが再現映像なのか、ちょっと微妙なところがあったような気がします。
しかし、そういう危険性を充分意識しても、この番組の説得力は最上級だと感じました。それはやはり、「世界」の中の「個人」の言葉に重みがあるからでしょう。「世界」は創れても「個人」は最終的には創れませんから。
危険な作業に向かう人々は、これは喩えが悪いかもしれませんけれども、なにか特攻隊員のようなオーラを出していましたね。男だなと。
そういう人たち、そして期せずして肉親を亡くしたり、被曝をしてしまったりした人々のことを思うと、我々が感情論、人情論で「福島の野菜を食べよう!」とか言っているのが、実に愚かなことに思えますね。私たちは再び来るであろう地震や津波に無防備ではいけないし、不用意に被曝することも許されないはずです。
この番組、ぜひNHKで放映してほしいものです。まあ、大変に難しいとは思いますが。
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