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2012.01.22

崎川晶子 『アンナ・マクダレーナ・バッハのための音楽帳』

Refdp_image_0 昨日、クリスティーネ・ショルンスハイムを紹介しましたが、彼女と同様に、チェンバロとフォルテピアノ、さらにはクラヴィコードなどを弾きこなす日本人女性演奏家と言えば、この崎川晶子さんを第一に挙げなければなりません。
 今日はそんな尊敬すべき崎川さんのお宅におじゃまして、2月12日に行われるコンサートの練習をしてまいりました。
 まったく、私のような者が崎川さんのフォルテピアノ(こちらで紹介されている楽器です)の伴奏をさせていただくなんて、まあ信じられないというか、幸せというか、申し訳ないというか…。つくづく音楽を、楽器を続けてきて良かったと思います。
 ふだんあまり古典派を演奏しない私にとってはある種の挑戦でもあり、また勉強や成長の機会だと思っています。
 バロックに関しては、私なりにその「言葉」が体にしみついていると自負しておりますが、こうして時代が変わると、突然知らない言語で話をしなくてはならないような感じになります。それも、ここのところヴィオラばかり弾いていたのに、今回は全部ヴァイオリンですからなおさらです。
 そんなわけで、珍しく毎日練習をしているのを見て、家族は驚いております(苦笑)。
 その点、崎川さんはショルンスハイムと同様に、古典派以降の言葉も学びつつ、それをバロックに還元しているわけですね。やはり連続する他の世界を学ぶことは、その本体にとってもとても重要なことです。実はそこにこそ、私たち現代人がいわゆる古典芸術を再生(再創造)する意義と価値があるのだと、最近理解しました。
 この最新録音、「アンナ・マクダレーナ・バッハのための音楽帳」は、まさにそうした成果の粋であると感じました。レコード芸術2011年9月号において特選盤に選ばれたのも納得です(こちらのレビュー参照)。
 先日亡くなったグスタフ・レオンハルトらによる古典的な名盤以降、なかなかこれだという録音がなかったというのは事実ですね。あまりに有名な作品を含み、またある意味子どもでも弾きこなせる曲が多いということが、その主要な原因だったと思います。これを乗り越えるのは実はプロには難しいことだったりするのです。
 そういう意味では、崎川さんのこの新盤はまさに決定盤的であると言っていいでしょう。今日も見事なモーツァルトのコンチェルトのソロを生で聴きながら伴奏させていただきましたが、やはり、そうした時代的な、また楽器的な幅広さと、そしてなんと言っても真摯でありながら柔軟なお人柄による偉業なのでしょうね。見事な「バロック」の表現になっていると感じます。
 そう、もう一つ、崎川さんがフランスで学んだということも大切なポイントかもしれません。バッハ自身はもちろん、当時のドイツではフランス志向が強くありましたからね。フランスの音楽や言語を知ることは、ドイツバロック音楽を演奏するにあたって、実はとても重要な要素だと思います。
 そうしたフランス的な優雅さやエスプリのようなものが、この音楽帳の内容と見事に調和しているのです。特に音符の数の少ない曲(子どもでも弾ける曲)において、その「間」を埋めるのは、そうしたある種の「豊かさ」であるべきで、それはたぶん、バッハ自身が憧れた部分であっと想像されます。バッハはそれが苦手で、やたら音符を詰め込んじゃいましたからね(笑)。
 私も、今回のチャンス(ある意味ピンチ?)を活かして、大いに勉強させていただきます。そして、できるかぎり生命力に満ちた音楽を創造できるよう頑張ります。
 このたびの共演も不思議な縁のなせるわざですけれども、実は崎川さんからさらにもう一つ広がりそうなのです。本当に音楽というのは面白い。やめられませんね。

Amazon アンナ・マクダレーナ・バッハのための音楽帳

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