『さよなら!僕らのソニー』 立石泰則 (文春新書)
昨日は愛猫とのお別れの話でした。
今日はソニーというか、古き良き日本の技術者集団とのお別れなのかなあ。「さよなら!」ですからね。
そして、なんかもう起死回生は難しい、つまり再会は難しいかなと思ってしまいました。
これはソニーに限ったことではなく、また、ある意味技術者集団に限ったことではなく、大和魂との別れと言いましょうか、日本の伝統的な精神性との別れと言いましょうか、そういうスケールの話のような気もしてきます。
そうそう、ちょうど今日はプロレスに関する番組を三つほど観ました。まずはサムライTVでの天龍源一郎とスタン・ハンセンとの対談。そして、新日本プロレスの東京ドーム大会レッスルキングダムの一部、さらにはBS11のアントニオ猪木(IGF)特集。
その三者三様のプロレス模様の中にもまた、古き良き昭和を懐かしむ部分と、それとは全く違う平成のプロレスをそれはそれで楽しむ部分と、頑固なまでに昭和の魂を伝承し復興しようとする部分と、いろいろなものを感じました。
おそらくいろいろな分野で同じことが起きているんでしょうね。そして、それがそれぞれうまくいくか失敗するか…。
ソニーは昭和の職人魂、すなわち創業の精神をいつのまにかなおざりしてしまい、一方でグローバル化というある意味フィクションに呑まれてしまい、そのブランド力を完全に失ってしまいました。
つまり、方向性とともにそのやり方に大きな問題があったのです。それを丁寧に検証したのがこの本です。
まあ細かい内容のレビューはAmazonでご覧下さい。私はちょっと違った角度から書きます。
今、私の学校も変革を迫られています。一般企業ほどではないにせよ、私学ですから当然経営戦略という観点も必要になってきます。
なんとなく私がそのあたりの担当になっているので、この本はまさに他人事ではない内容でありました。
時代に合わせる必要があるところと、揺らいではいけないところ、その両者のバランスというのは本当に難しい。
学校にももちろん「建学の精神」というのがありまして、それは絶対に揺らいではいけないものだと、みんなが認識してはいますが、ソニーと同様、そのスタートに居合わせた人々がどんどん減っていく現状の中で(私も第二世代です)、どう温度差をカバーしていくか、これは大変難しいものです。
本文にもありましたとおり、だいたい昔気質のトップというのはワンマンでカリスマ性があって、めちゃくちゃな要求を押しつけたりして、しかしそのおかげでいろいろと奇跡的な製品ができあがったりするわけですね。
それを今どきの若者たちに伝えても全然ピンと来ない。そのとおりやったりすると、つぶれちゃうか、あるいは反発してくるか、とっととやめてしまう。昔はなあ、こうだったんだ!と口角泡飛ばせば飛ばすほど、そのギャップは広がっていきます。
何十年、何百年もずっと続いているモノというのは、実は変わっていないようで、その時代ごとにしなやかに変身していたりするものです。一見変わっていないようで、実は変わっているとか、一見変わっているようで、内実変わっていないとか。
だめになっていく過程でのソニーにも「技術力」はあったと思います。時代を読む力もあったと思います。ある意味では、技術力がありすぎ、そして時代を先読みしすぎたような感もあります。
また、ソニーは変わっていないけれども世の中がダメになったとも言えます。職人の作った高価なものよりも、多少性能が低くても、あるいは壊れやすくても安い方がいいという価値観の蔓延ですね。
そして、いつのまにか、ソニーはそういう大衆の側に自らの基準を合わせてしまった。グローバルマネー世界に魂を売ってしまった。そうとも取れます。
教育の現場でも同じことが言えますね。ただ生徒が集まればいいというわけではない。しかし、生徒が集まらなければ学校自体がなくなってしまう。そこで、どこに着地点を見定めるか…これには、実はデータよりも経験的な勘が必要だったりします。それこそ職人的な技。
難しいけれども、だからこそやりがいがあり、面白い仕事であるとも言えます。教育界では比較的ゆっくり変革していけばよい部分もありますし、保守的で許される一面もあります。
しかし、さすがにこういう世の中になったからこそ、教育から世の中を変えていきたいという大志が湧いてくるのも事実です。機を逸さないように、存分「勘」を働かせてやっていきたいと思います。
ああ、それにしても私はソニー信者じゃなくて良かったな。これは信者には辛いわ。私はどちらかというとアンチでしたから、この失敗譚をありがたく他山の石といたしましょう。
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コメント
ソニーよりアップルの心配をするべきだと、ソニー信者の私は言いたいです。
投稿: LUKE | 2012.01.06 00:07