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2012.01.03

弥右衛門 帰幽のお知らせ

↓昨年の3月の寝姿
Img_1809 日、我が家の黒猫トリオのうち、最も巨大にして偉大であったヤエ(正式名称…山口大和守弥右衛門)が天寿を全うし土に還りました。享年十五。
 この写真のように、いつも死んだように寝ていたヤエが、今日は寝ているように死んでいました(さすがにバラは抱いていませんでしたが)。
 その場所は南側の窓の際でしたから、おそらく午前中いつものように日だまりで豪快ないびきをかいて午睡をむさぼっていたのでしょう。夕方、本当にいつもの寝姿で冷たくなっておりました。
 思えば彼は本当に素晴らしい猫でした。
 黒猫、デブ、鍵しっぽ、金の目玉、月夜に吠える…など、世界中で言われる「猫の王」の条件を全て備えた立派な男でした。
 性格もとにかくファンキーで、いわゆる猫らしくしれっとしたようなところは全くなく、どちらかというと犬のような、いや明るいオヤジのようなヤツでした。
 なんと言っても、人間とお話ができるというところが素晴らしかった。私もどれだけ彼にグチを聞いてもらったことか。こちらがどんなに落ち込んでいても、ヤエはいつもファンキーでマイペース。本当に日々救われてきました。
 ワタクシにとっては本当に心の友でした。もちろん、そんなヤツですから、家族にはもちろん、多くのお客様、猫マニアに圧倒的に可愛がられました。人が好きで(特に若い女性)、そのいかにもオヤジ然とした外見に似合わず甘え上手で、人が話をしていれば、必ず輪の中に入ってきました。電話をしていても受話器をよこせとしつこく絡んできましたっけ。
 それから、彼の特技はマッサージでした。彼の8キロに及ぶかという体重と、前脚による絶妙なモミモミ、そしてあの温熱効果は最高でした。私もよく背中に乗ってもらって凝りをほぐしてもらいました。
Img_0600 この写真は、なぜかトイレの中でくつろぐ弥右衛門です。素でやっているのか、ウケを狙っているのか、よく分かりませんが、とにかくすっ頓狂なことをやって皆を笑わせてくれました。
 本当に直前までいつものように、食べ過ぎるほど食べて(そして吐いて)、寝て、巨大なウンコをして、他の二匹の猫と遊んでいましたから、おそらくは睡眠中に心不全か何かを起こしたのでしょう。
 もう15歳ですし、あれだけ太っていましたから、そういうこともあろうかと思いましたが、それにしても天晴れな弥右衛門らしい最期でありました。漢だ。
 ああそうそう、それから将軍様…いやいや弥右衛門様の偉大なる功績として挙げておかねばならないことがありました。それはミーの世話役としての功績です。
 4年ほど前に拾われてきた下半身不随黒猫ミー。彼女は子猫の時に脊椎を損傷し、下半身が動かず、自力排尿もできないようなハンディーを背負っていました。動物病院のお医者さんも、もう回復の見込みはないし、命もそんなに長くないかもしれないとおっしゃっていました。
 そんなミーは今、まさに奇跡を起こし、後の片足で踏ん張って立てるようになり、また、ここ半年くらいで、ちゃんと自力でおトイレで排泄ができるようになりました。まさにお医者さんもビックリの奇跡です。
 実は彼女がここまで奇跡的な回復を見せたのは、ほかでもない弥右衛門のお陰なのです。
 彼は彼女がウチに来たその日から、ある意味オヤジらしさを発揮し、この若くておてんばな小娘と真剣につき合ってくれました。まさに「レスリング」です。レッスルする中で、彼女は年々運動機能を取り戻し、今私たち人間の手を煩わすことなく自活するようになりました。
 これは本当にすごいことです。愛なくしては為し得ない奇跡だったと思います。
 そんなミーは今、最後にヤエが寝ていたところを何度も行き来し、哀しそうな目をして、大好きだった兄貴、いやオヤジを探しています…。
Slideshow1 まあ、病気らしい病気やケガらしいケガは一度もなく、最後の最後まで明るく元気に生を全うした弥右衛門は、とっても幸せであったと思います。それは間違いないですし、私たちにとっても大きな救いであります。
 ケンカにも負けたことありませんし、ご覧のようにお犬様をも制圧しておりました。
 娘たちもさすがに最初は号泣しておりましたが、そのうちヤエの亡骸をなでながら笑顔で歌を歌うようになりました。これこそヤエの不思議な力です。
 夜、庭のこぶしの木の根元の凍った土を家族で掘り、弥右衛門を葬って円墳を作り、神社と為しました。三が日で何度も初詣での機会があったのに実現せず、結果として家族の今年の初詣でがこの弥右衛門神社となったのは、何かの導きだったかもしれません。
 「自分が幸せになるためには、人を幸せにするしかない」というお釈迦様の教えを、そのまま体現していたような猫でした。
 結婚してすぐに引き取った弥右衛門。思えば娘たちより長いつきあいでした。今までも我が家を明るく照らし、守ってくれた「猫の王」。きっと、これからも私たちに幸せを与え続けてくれることでしょう。私たちもあなたの生き方に学び、人を幸せにできるよう頑張ります…いや、生き物として自然に生きていきたいと思います。
 今まで彼を愛してくれた多くの皆様、本当にありがとうございました。
 最後に一言…この前のタコ八郎の記事に書いたタモリの弔辞をまねれば、こんなふうになるかなあ。

「ヤエが日だまりで死んだ。何も悲しいことはない」…涙
 
 


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コメント

私、ヤエ、いや、弥右衛門様と(ほんのわずかですが)お話したのは、姉と話をしていた電話ごしでの会話であり、最初で最後でありました。数ヶ月前の事です。噂に聞く通りで、賢そうな猫で、会ってみたかったのですが文章を読んで、感慨隠せず、コメントさせていただきました。

投稿: ヒロ(mixiネーム) | 2012.01.04 22:17

先生、お寂しいことと心中お察し申し上げます。
猫狂いの私としましては、先生のお宅の黒猫トリオ様方には、いつもブログ上で拝見しては癒されておりました。
先生だけにとどまらず、あわよくば猫ちゃん方にもお会いしてみたいと思っていたほどです。
2年前、私も飼い猫(白猫ですが)を亡くしました。
腎臓病を患い、亡くなる前日は下半身が不随となり、それでも階段を上り下りして私を追いかけてきていたことに驚きました。
亡くなった日は家族が仕事や学校に出かけるのを見送ってから、静かに息を引き取りました。少し苦しんだようでしたが、それを誰にも見せずに逝ったようでした。
今は黒猫一匹となりましたが、彼女はとても元気です。
先生の記事を読んで思い出してしまい、私事をだらだらと書き込んでしまいまいした。申し訳ありません。
弥右衛門様のご冥福をお祈りいたします。

投稿: 松原恵子 | 2012.01.05 10:17

ヤエ様に対する文章と、去年私が書いた喪中葉書の内容が所々ビックリするほど酷似しており、それが故、その悲しみの深さを察っせずにはいられません。

「死ぬなら死ぬって言ってくれ。潔いにもほどがある。」と、言ったら、.....贅沢なんでしょうな。

投稿: LUKE | 2012.01.06 00:06

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