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2012.01.12

藤巻亮太 『光をあつめて』

 日は宮中で歌会始の儀が行なわれました。それにちなんで、本校でも冬休みの宿題で作った短歌でプチ歌会を開きました。
 中学生は初めて短歌を作るので、お題はなしですが、「比喩表現を使う」ということだけは条件としました。
 結果としてなかなか立派な秀歌がそろい、先生たちもビックリ。私自身も、芸術にとっての比喩の重要さを再認識しました。
 あと、面白かったのは、やはり歌の内容が「もののあはれ」になるということですね。つまり、「時間」にまつわるものが多いということです。
 特にそういう指導や鑑賞をしたわけではなかったので、彼らは日本人としての自然の感性で、そのような歌を作ったのでしょう。あるいは「比喩」と「時間」の関係というのもあるかもしれません。
 いずれにせよ、「もののあはれ」=「(時の流れに代表される)不随意に対する嘆息」こそが、日本人にとっての最重要テーマだと痛感しましたね。教え、教わらなくとも、これは我々の遺伝子に受け継がれているものなのですね。
 さて、今日はレミオロメンの藤巻亮太くんの誕生日であり、また、彼の初ソロシングル「光をあつめて」の先行配信の日でありました。
 彼がバンドを離れてソロ活動を開始するということに対しては、私もまあいろいろな思いがあります。それこそ「もののあはれ」ですね。時の流れと、全てのモノの変化の一部と考えれば、別に残念に思う必要はありません。
 「もののあはれ」とはここに明記したように、決して本居宣長の言うようなボンヤリしたものでもジメジメしたものでもありません。ただ「想定外」「不随意」なだけであって、プラスの変化という側面もあるのです。
 そう、この曲の歌詞にもあるとおり、「時の無常の中に花が咲く」こともあるのです。
 生徒たちの「歌」の中には、そういうプラスの「もののあはれ」が満ちあふれていました。つまり、無常、変化というのは、破壊であると同時に再生、成長の物語の源泉でもあるわけです。
 藤巻くんの変化については、私は、まあなんとなくではありますが理解できるところもあるんですよね。あの3人の中では、唯一彼だけが持っているメンタリティーというか、スピリットがあるなと思っていたんです。
 これはある種の宗教性とも言えます。彼の遺伝子にはそういうモノが実際ありますし。私も半分そういう世界で生きていますから、彼の詩やメロディーや声や行動から、そういうモノを感じ取ってきたわけです。
 これは誤解されたくはないのですが、そのどちらが上とか下とかではなくて、とにかく違う次元で生活している人とは、なかなか「仕事」ができないのも事実です。
 誤解しないでくださいよ。ものすごく分かりやすく言ってしまえば、これは「趣味」の問題です。魂の趣味の問題なんです。それを偽って仕事をすることに疲れてしまうことは、実は誰にでもあることではないでしょうか。
 彼がここに至るまでには、いくつかのきっかけがあったと思います。バンドが10年続いてきたというのももちろん最大の理由でしょう。どんな仕事でも10年目はマンネリや商業化の完成期ですから。
 それから、こちらで紹介した「Your Song」にまつわる体験、すなわち志村正彦くんの存在と不在というのも絶対に影響していると思います。
 志村くんは、ある意味アルバム「CHRONICLE」において、バンド内ソロ活動をしてしまったのだと思います。彼が命を賭してそれをやった。藤巻くんはそれを聞き込んだんです。
 そして、その後、あの震災や原発事故がありました。これらの外的な体験、すなわち想定していなかった外からの力こそが、藤巻くんにとっての「もののあはれ」そのものであったのでしょう。
 レミオロメンはフジファブリックと違って、メンバー間の距離が非常に近い。それはそうです。幼なじみバンドなのですから。その良さと弊害という両面は当然ありますよね。藤巻くんは、バンド内ソロ活動はとてもできなかったのでしょう。
 それにしても、フジファブリックはそのフロントマンを突然失ってもバンドは活動を続け、新しい世界を切り拓きつつあり、レミオロメンはそのフロントマンがソロとしてデビューする形でバンド活動は一旦休止…とは、まさに「もののあはれ」ですね。
 そう考えると、世界の長老バンドやBUMP OF CHICKENはすごいな。逆に心配なほどです。誰かがとんでもない我慢をしてるんじゃないかと(笑)。
 さて、楽曲「光をあつめて」ですが、たしかに見事な、躊躇のない藤巻節が展開していますね。素直にいい曲だと思います。単なる幸せの共有という次元を超えたメッセージがこめられていますね。
 ピアノが小林武史さん。結局藤巻くんのスピリッチュアルな部分を理解し支えられるのは、コバタケだったということでしょうか。きれいなピアノを聴かせてくれています。ドラムがあらきゆうこさんというのはやや意外でした。オサのドラムよりも男らしい(決然としている)気が(笑)。ベースは元Syrup16gのキタダマキさん。前田くんとはずいぶんと違ういい味を出していますよ。
 たしかにこうして違うメンバーの音の上に乗る藤巻くんの声というのは、新鮮というか、こちらにも想定外の発見があるというか、とにかくこのソロプロジェクトの始動を純粋に喜びたいと思いました。
 これに伴って、治くんと前田くんもどんな活動をしていくのか、それも楽しみですね。そして、進化した3人が再び音楽を奏でる日に期待したいと思います。

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コメント

不二草紙様初めまして。藤巻さんのファンの者です。
レミオロメンの新しい記事がアップされていないかなーと、時々拝見していました。
今回の記事も興味深かったです。レミオのライブの時には、雨が上がったり、山梨の粉雪ライブの時に、粉雪が降ってきたり。ヒラマヤに行った先で写してきた、リアルな龍の写真を見ていたら、神様に見守られているような気がします。
ここ数年は日本も大変だと思いますが、彼の歌と優しさに癒されて、過ごしたいと思います。
前田さんと、治さんの音楽活動も気になります。

投稿: hikari | 2012.01.14 17:35

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