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2012.01.15

たま虫色? (2012 センター試験 国語…小説)

20120117_111719 て、センターの小説です。
 まず最初に、昨年の記事の復習をしましょう。こちらです。自分で言うのもなんですが、なかなか本質的な問題を突いてますね。もちろん、私の考え方は今年も変わっていません。コメントくださった皆さんの意見も貴重です。
 繰り返しますが、大学入試には「小説」の問題を出すべきではありません。そして、文学鑑賞や創作は「国語」ではなく「芸術科目」として「音楽」や「美術」や「書道」と並べてやるべきです。以上。
 …と、ここで終わるわけにはいかないので、以下今年の問題の感想などを。
 そうそう、去年の私の咆哮にも多少の効果はあったのでしょうかね。「もし小説の問題を出すならば、短編を丸ごと出してほしい」と書いたら、まあ今年は井伏鱒二の短編小説全文が出たじゃないですか!ww
 うん、やっぱり言うべきことはちゃんと言うべきだな(と、自分の手柄にしている…笑)。
 実際これは結構なことでした。昨年書いたように、出題者の脳内と受験者の脳内の情報領域がなるべく一致していた方がいいですからね。
 しかしですね、やっぱり小説の問題は難しい。というか、小説を問題にするのは難しい。出題者の苦労のあとが見て取れます。だから、どうせなら出さない方がいい。百害あって一利なしとは申しませんが、一害って一利なしなことで人生を左右したく(されたく)ありません。
 この「たま虫を見る」、なかなかいい小説だと思いますが、こうしてテストされて情報として読んでしまうと、その魅力が半減してしまいます。井伏さんにも申し訳ないですよ。
 問題としてではなく、ぜひ小説として読んでみてください。問題はこちら
 さて、問で問題視されそうなのは、問3、問4、問5でしょうか。たしかに情報処理としては面倒です。
 しかし、受験テクニック的に言えば(あくまで自己流ですが)、たとえば問3は動詞を中心に注目して、傍線部の「吐息をついたり」「相手をとがめる」に相当する部分を検証すれば、それほど難しくないでしょう。選択肢5の「落胆し」「非難する」が正解です。
 問4も選択肢全体を読むとニセ情報に混乱するので、最後のところだけ読みます。傍線部の「泣き顔」が次のどれなのか。「情けなさ」「悔しさ」「無力さ」「ふがいなさ」「寂しさ」。その判断のためにそれぞれの感情を修飾する部分を下から読んでいきます。日本語の記述方法(語順)と我々の思索(認識)過程は一致しないことが多いのです。
 問5は悪問ですね。答えがありません(笑)。本文のこの部分、素直に読むならば、二ヶ所の「人を押しのけ」は同じ意味と取るべきでしょう。さらに言えば、傍線部前の「(人々は)私を後ろにおしのけ」を受けての比喩的表現でしょうから(「おし」と「押し」の違いは無視…苦笑)、そういう観点で選択肢を見ていきます。で、正解にたどりつければ、これは問題のない問題なのですけど…どうしても絞れません。
 あえて言うなら、最終段落で牧師になる算段をしているので、それが「私」の新たな行動だとするなら、まあ正解3の「自分の立場も守らなければならない」になるのかなあ。その程度の「押しのけ」と「割り込み」だったというのがオチなわけですから(たぶん)。
 まさに「玉虫色」な問題ですな(笑)。
 いずれにせよ、20分程度でここまでいろいろ妄想するのは大変です。
 古文は、これまたおととしの記事が効いたのか、ずいぶんと文章が短くなった上に、勉強したことが活かされる問題になってきました。漢文とのバランスがよくなったと思います。
 全体として、センター試験国語は改善の方向には進んでいます。しかし根本的な問題点は解決されそうにないですね。頑張れ、全国の国語科教師たちよ。

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コメント

待ってましたこの記事(笑)
去年も見させてもらいました。
小説を最後に残して、問3に10分費やして時間切れ…。

でも全体では去年より30点上がったので、理系の自分としては文句はないです。

あと少し頑張ります。

投稿: 浪人生 | 2012.01.17 23:22

>さて、問で問題視されそうなのは、問3、問4、問5でしょうか。
う~ん.... 私は問2がわかりません^^。

正解は選択肢①ということですが、④もありか、と思いました。「怒り」がNGワードなのでしょうけれど、兄になぐられた「悲しさ」は、十分「怒り」に通じる感情であるはずです。
このような、選択肢の合致度を勘案することは、小説ではとくに、「読む」行為を浅くする訓練にはなっても、深くする方向には働くまいと思います。

何よりも、こうした現代文の‘過去問’を受験勉強として演習することは、問題文がすぐれたものであっても、それを学ぶのではなく、出題者の作った、苦心の作とはいえ、まことにどうしようもない選択肢の悪文ばかりを、ひたすら読み込むことになるわけです。
それも、出題者の意図を‘KY’で読んでやることに注力するわけです。

こういう作業は、国語力・言語感覚を磨くどころか鈍磨してゆくばかりだと感じます。こういうことを、中学・高校の生徒さんたちが、勉学の最終目的の一環として、戦後数十年やってきたのですから、オカシくならないほうがオカシい、と思います。
こんなことを ― 能力はないことを自覚しつつ ― 仕事にしながら、慨嘆落胆に明け暮れるこの時期、です…。

投稿: へうたむ | 2012.01.18 05:25

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