ツイッターという矛盾
↓鳥のさえずりが大学の「訓告」に
私も尊敬申し上げている早川由紀夫さんのツイートが大きな問題(話題)となっています。
早川由紀夫さんは火山学者で群馬大学の教育学部教授。早くから、福島第一原発事故に伴う放射線被害の危険性を訴えてきた方です。彼が発表した放射線汚染マップは、私もTwitterでいち早く紹介させていただきました。
ご存知の方も多いと思いますが、問題となったのは次のツイート。
『福島県の農家は、ことしもコメつくるつもりなんだろか。つくったとして、誰が食べるんだろか。
セシウムまみれの干し草を牛に与えて毒牛をつくる行為も、セシウムまみれの水田で稲を育てて毒米つくる行為も、サリンつくったオウム信者がしたことと同じだ。福島県の農家はいま日本社会に向けて銃弾を打ってる。』
たしかに過激な比喩ではありますが、実際に起きていることを考えると、これは真実であり、正論であると言えます。
このツイート(及び以前のいくつかのツイート)に対して、大学当局から訓告が発せられました。そこにはこんなことが書かれています。
『貴殿のインターネット上のツイッターにおける福島県の被災者や農家の人々に対する配慮を著しく欠く発言は、運営に要する経費の大部分を国費によって賄われている国立大学の教員として不適切な発言と言わざるを得ず、「本学の名誉若しくは信用を失墜する行為」を禁止する就業規則の規定に抵触している。よって、今後はインターネット上のツイッターにおける不適切な発言をすることのないようにされたい』
早川さんのツイートのどこがどう「不適切」なのか。大学の発した訓告を読むと、一連の比喩が福島の方々に対して配慮を欠いており、その行為が群馬大学の名誉や信用を失墜させる可能性があるという点において「不適切」だったということがわかります。
つまり、ウソをついた結果誰かに害を及ぼしたとか、実際に福島の方を傷つけたとか、そういうことではなく、被害者は群馬大学だということになります。
これは正直、権力による言論統制、口封じであると感じます。早川さんもそう受けとって「大学の自殺」であるとし、ツイッターやマスコミを介して反撃に出ています。
そのような一連の流れも興味を引くものでしたが、私としてはその端緒となった「ツイッター」自身の矛盾を改めて考えさせられましたね。
その矛盾とは…私が2年ほど前に書いたことそのままですね。
twitter、tweetという「さえずり(つぶやき)」、あるいは「興奮」という、本来全く公共性のない、ほとんど理性を介さないような「独言」が、大衆によって、これまた非常に無責任なワンクリックによって「リツイート」され、それがさらにねずみ算式に無責任度を倍増させていく。そういうシステム自体が非常に問題だと思います。
私自身、あるツイートが何百何千とリツイートされたことがあり(かの孫正義にまで!)、私の発した実に無責任な言葉が、それこそ私という主体から離れて独り歩きしていくことに、非常なる恐怖と不安を覚えたことがあります。
そして、今回の早川さんのつぶやきの結末が、上に挙げたような、実に「公共性」を帯びた、個人を感じさせない、形式的で、ある種理性的な「訓告」に至るというところが、まあ面白いと言えば面白いじゃないですか。ついにはニュースで真面目に語られたりして、全くもって滑稽です。
今回の早川さんのツイートは、政治家や閣僚や官僚の不適切発言や失言とは違います。しかし、システム上、結果としてああいう「公式文書」や「ニュース原稿」になってしまうという結末においては同じとも言えなくもありませんね。
つまり、私にとっては、もうTwitterの時代は終わるということです。公共性を帯び、公式性を意識して発言しなければならなくなった時点で、Twitterの本来の意義はなくなっているということです。
そして、それは私が予感したとおり、もともとTwitter自身が持っていた矛盾だということなのです。私もそろそろ潮時かなと思っています。
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コメント
足なんて飾りです。偉い人にはそれがわからんのです
みたいな感覚受けました 自分の意見があったとしてそれを人に伝えるにして 安易な事を言えば、言論自体にパワーがなくなるから影響力がない だったら過激なことを言えばいいんだろ!、ってやると叩かれる うーん・・・ 難しいですね
投稿: にわかガンオタ | 2011.12.17 18:50