追悼!市川森一さん…『私が愛したウルトラセブン』 (NHK)
私の人生に多大な影響を与えた(であろう)脚本家の市川森一さんが昨日お亡くなりになりました。
訃報を聞く前に、本当に偶然市川さんのことを思い出していたのです。不思議なタイミングでした。
というのは、昨日、来春の受難節に演奏するバッハのマタイ受難曲(初期稿全曲)の練習に初めて参加しまして、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんけれど、あの曲に「バラバ!」と合唱が叫ぶシーンがあるじゃないですか。そう、イエスと極悪人バラバとどちらを釈放すべきかというシーンです。その「バラバ!」という民衆の不協和音を聴いた瞬間、あの「殺し屋超獣バラバ」を思い出したのです。
そのウルトラマンAの第13話「死刑!ウルトラ5兄弟」&第14話「銀河に散った5つの星」については、5年前のイースターの日に詳しく書いていますね。私はそこでも市川さんがクリスチャンであることに言及しました。
たとえばこんなところにも、私の奥深い所にある市川さんの影響が感じられますね。ウルトラマンシリーズ、特にウルトラセブンに育てられた私たち世代にとって、市川さんの残したメッセージは、心や体の無意識の領域にまでしっかり染みついています。
さあ、そんな市川さんに感謝と追悼の気持ちをこめて、今日は「私が愛したウルトラセブン」を紹介しましょう。
多くの市川作品の中で、私はこれが一番好きです。名作です。放送当時も感動した覚えがあります。
市川さん、上原正三さん、金城哲夫さんら脚本家を含め制作スタッフとキャストの皆さんの作品にかける情熱、葛藤、愛憎…歴史的作品が生まれる瞬間の人間模様が見事に表現された脚本です。
ほとんど全てが実名ですが、ストーリーはフィクション。しかし、フィクションが真実をリアルに語るという「作品」というものの本質を、最も素晴らしい形で実現した「作品」であると思います(内容や注目点はAmazonのレビューなどをご覧下さい)。
私もそうだったんですけれども、往年の熱いウルトラセブンファン、特に「アンヌ」ファンにとっては、「痛い」作品になる可能性大であり、正直期待していなかったというか、観るのも怖いというほどの作品だったんですね。しかし、大方の予想を裏切って非常に感動的な作品になっていたわけです。
そうしたファンの「思い入れ」から来る危険というのは、なかなか乗り越えられないのが現実です。それで失敗した作品は枚挙に暇がありませんよね。いわゆる実写版なんかほとんどそうしたリスクに負けて沈没しています。
そんなジンクスを越えてこの作品が名作たりえたのは、やはり脚本によるところが大きい。もちろん、役者さんたちの努力や演出(マニア的なこだわりが各所に見られました)も高く評価できます。しかし、なんと言っても市川さんの「思い入れ」がファンの「思い入れ」を凌駕したことが、この奇跡を生みだした大きな要因だと思います。
そういう方だったんですよね、市川さん。ワイドショーのコメンテーターとしての姿からはなかなか想像できなかったかも…。
今の私の大切な部分を占めている思想というのがあります。このブログにも比較的はっきり現れているのではないでしょうか。異端や異教徒や異境人、国つ神に対する天つ神、被征服者、歴史的敗者へのシンパシーや愛情…これらの源泉は、実は市川さんの「言葉」にあったのでは、と思うこの頃であります。
この作品にも、そうした視点が多分に含まれています。私も久しぶりにビデオをお蔵から引っ張り出してこようかと思います。そして、また遠くなってしまった昭和を懐かしみつつ、市川さんのご冥福をお祈りしたいと思います。
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コメント
市川氏は、時々近所の中華料理屋でお見かけしました。隣のテーブルになったことも。つい何か月か前にお見かけした時にはとても病気のようには見えなかったので、夫婦で驚いています。ご冥福をお祈りします。
投稿: AH | 2011.12.12 22:01