追悼 バイソン・スミス & 立川談志
なんということでしょう。まさか今日このお二人の訃報を聞くことになろうとは。
プロレスラーのバイソン・スミスさん、ついこの前20日には札幌のノアのリングで元気な姿を見せていたのに。信じられません。まだ38歳。プロレスラーとしてはまさにこれからという時でした。
第17代・20代GHCタッグ王者ではありましたが、三沢さんの最後の試合の相手であったり、パートナーが来日できず王座を返上したり、この前のシリーズ、グローバル・リーグ戦では、小川選手に大けがを負わせてしまったり、なんか暗い影を感じていたのも事実です。そして、まさかの急死。プエルトリコで心不全を起こしたとのこと。
日本を主戦場とし、また純粋に日本を愛してくれたレスラーに心から哀悼の意を表します。
彼の日本での評価を上げた一戦、2007年の三沢光晴さんとのGHC戦を紹介します。お二人ともこの世にいないなんて…本当にプロレスは命懸けの仕事ですね。
そして、すぐあとに立川談志師匠の訃報も届きました。ずいぶんと体調が悪い、声が出ないという話は聞いていましたが、まさかここ3週間意識がなかったとは。
また昭和の天才がこの世を去ってしまいましたね。この世の荒廃とは対照的にあの世はどんどん充実していきます。皮肉なことです。
「立川流」というと、私は「真言宗立川流」を先に思い出すほどですから、それほど談志さんに興味があったわけでもありませんし、彼の落語のファンというわけでもありませんでした。しかし、彼の言動にはなぜか惹かれる部分があり、また、どこか「この人は孤独なんだな」というような一種の哀愁を感じていたのは事実です。
いわゆる天才であり、だからこそ敵も多く作る人だったようですね。彼自身「落語は非常識の肯定、人間の業の肯定」と言っていましたが、つまりは談志さん自身が落語に救われていたわけでしょう。
そう、どんな分野でも、天才というのは、彼らの生み出す作品に彼ら自身が救われているという部分があるのです。
実は天才の主体は本人にあるのではなく、彼らの生み出した作品にあるのです。また、逆に言えば、結果として他者に救われる才能を持っているのが天才だとも言えます。
この世は「純粋」な者にとっては実に住みにくい構造物です。だから私たちはその構造物に合わせてどんどん「不純」になっていくのですが、一部その「純粋」さを持ったまま正しく生きることが許される人たちがいます。それが「天才」たちです。社会的な意味での免罪符を与えられているんですね。
それが与えられるのにももちろん条件が必要です。それは「伝統」と「歴史」を理解することです。談志さんについては言わずもがなですね。「古典」を知り尽くし、愛し尽くし、結果としてそれらに愛されて守られるんです。
天才と称されるにはエポックメイキングな業績が必須です。エポックを作るということは、それまでの「伝統」や「歴史」や「古典」を破壊して、新しい価値観を創造することだと思われがちです。もちろん表面的にはそのとおりなのですが、破壊をするには、破壊すべき対象を理解し、自分のものにしていないいけません。
そういう意味では、天才の仕事自体が、他者の存在に基づくものであり、無数の他者に守られているものなのです。
世の中と戦い、伝統と戦うということは、実は世の中に愛され、伝統に愛されるということなのですね。
彼の名演はたくさんありますが、今日はこれを紹介します。この話術、教員としても学ぶところ満載です。
75歳。天才としては決して「短命」ではなかったかもしれません。いや、天才は何歳で亡くなっても、やはり我々にとっては「短命」なんでしょうか。全て天才の死は残念です。
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コメント
天才論に一々納得いたしました。
私も談志師匠の落語自体はあまり好きではありませんというか、むしろ嫌いでしたが、ご本人自身は大変魅力的に感じておりました。最近の声の枯れようは、晩年の高橋竹山を思い出し、氏の映像を見るたび、いたたまれない気持ちでおりましたので、ショックと言うより「とうとう来たか」と、寂しく受け止めてしまいました。
投稿: LUKE | 2011.11.27 00:08