「やばい」の語源
今、外はかなり「やばい」ことになっています。季節外れの大雨。
ウチの近く、山梨県富士山西部で1時間に90ミリの記録的な大雨が降ったとのこと。まるで台風の真っただ中のようでした。
そして、公私ともども忙しすぎて「やばい」。いや、楽しすぎて「やばい」とも言える。
この「やばい」という言葉、現代人にはなくてはならない言葉になっていますね。若者がなんでも「やばい」というのを眉をひそめて聞いている立派な大人もいるかもしれませんが、まあ日本語の歴史、いや言葉の実態なんてそんなものです。
平安のものなんか読んでも、それこそなんでも「をかし」だったり、「いみじ」だったり、「いと」を多発したり…ま、枕草紙の話ですけどね(笑)。
そうそう、最近の「やばい」は、先ほどの「楽しすぎてやばい」のように、いい意味にも使いますね。「おいしすぎてヤバい」とかとかね。そういう意味では古語の「いみじ」や「ゆゆし」のように「絶対値が大きい」「非常事態」を表す語になったとも言えます。
さらに最近では「ヤバス」や「やばぽよ」などのように、派生変形も使われるようになっています。
今日はこの「やばい」の語源を探ってみましょう(単に個人的に気になったからですが)。
「やばい」が文献に現れるのは、実はそんなに古いことではありません。19世紀末の「日本隠語集」に「ヤバヒ…危険なること則ち悪事の発覚せんとする場合のことを云ふ」とあるのが最初です。
しかし、「やば」という語はもう少し前から使われていました。18世紀末の歌舞伎の台本などに「やばな」という形容動詞連体形として残っています。つまり、形容詞「やばい」よりも先に「やばなり」という形容動詞が一般的に使われていたということですね。さらに形容動詞の成立パターンから言えば、「やば」という名詞が存在したということも想像できます。
さあその「やば」ですが、これも文字として残っているものはいわゆる隠語(盗っ人言葉)であり、「看守」とか「刑事」を表す言葉です。やばり江戸の後期から使われていたようですね。しかし、それ以前に遡ることはできません。
そこで思い出したのが、山梨の方言です。山梨のある地域では獣を捕るために猟師が隠れている場所のことを「やば」というのです。
これはおそらく山梨固有のものではなく、いわゆる「山人」「サンカ」「マタギ」などの用語ではないかと思います(調べていませんが)。
猟師が獣を捕らえるのを、看守や刑事が盗人を捕らえるのに重ねたのでしょう。なんとなく分かりますよね。あそこには刑事が隠れているから「やばい」という感じ。これは私の憶測にすぎませんが、たぶん正解だと思いますよ。
「危険や不都合が予測されるさまである。危ない」が現代において発展し、「非日常。すごい。驚くべき」という意味を持ち始めたということでしょうね。
しかし、「やばぽよ〜」とか言ってるギャルたちは、そんな語源、つまり盗っ人言葉だったことなんか全然知らないでしょうね。おい、それってヤクザ言葉だぜ、その前は熊捕ってる猟師の言葉だったんだぜ…なんて言ったら、「ゲッ、ヤバッ!」とか言うんでしょうかね(笑)。
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