『上下のしきたり』 友常貴仁 (三五館)
この本が上司だ!
剣道家でもあるワタクシの上司が貸してくれたこの本、いやあ勉強になりました。そして、何かスカッとしましたね。気合いが入りました。
大和古流廿一世当主である友常さんの言葉は、切れ味のいい刀のようで、ある意味心に鋭く突き刺さりますが、それが不思議と心地よかったりもします。
たしかにこういう言葉を発する上司だったら心から敬服するでしょうね。男として惚れるというか。
なるほど、「しきたり」とは「為来」かあ。長いこと「してきた」ことには深い深い意味があるということですね。単純な「マナー集」とははっきり言って全然重みが違う本です。そこに歴史が詰まっているからでしょう。
集中して一気に読み終えた、その最後に添えられた「あとがき」が秀逸。全てを語っています。まさに我が意を得たりでした。あえて全文紹介します。
百年に一度の経済恐慌を克服せよ
とうとう化けの皮がはがされ、百年に一度の経済恐慌がやってきた。
アメリカ的なる考え方の敗北なのである。現場の実働を重要視せずに、金融に力を注ぎ、世界中の経済を支配してきたそのツケが、二十一世紀のはじめの十年で噴き出したのである。
本書がこうした現実の中で誕生したことに、喜ばしくも意義があると思っている。
資源のない国日本が、アメリカの真似をして生きてきた。合理主義、成果主義ともっともらしく叫び、人間の優劣をつくりだし、富の格差を助長してきた。そこには日本特有の人情も思いやりもあったものではない。
日本人なら、そのおかしな考え方にもう気づこう。基底に思いやり・節約・勤勉を、もう一度とりもどし、新しい経済活動の扉を開くときではないか。
二十一世紀は、組織という名の集団に身を置かねば生き残れない時代となった。志のある集団が力を合わせないと生き残れない。
日本の戦国時代がそうであった。個人の戦力では必ず滅ぼされた。一族郎党が力と知恵を増強し、生き残ってきたのである。まさに今、経済戦国時代がはじまった。
生きるか死ぬか……組織にいて生き残る道を見いだそうとする者にとって、新しい意識改革が求められている。それは、組織の中で生き残っていく闘い方でもある。
この本の読者にはどんなことをしても、生き残り、出世し、幸せになっていただきたい、と念じている。
天然の鯛
最後にあたり、過去からの伝言を、現代の叡知として活用する秘伝をお伝えして締めくくりとしよう。当家の家系につながる楠正成が尊んだ精神「まこと」、それをわが老師がわかりやすく、次のように私に諭してくれたものである。
うまいものは、なぜうまいのか。それは「まことがこもっている」からうまいのである。例を示せば、天然の鯛はうまい。養殖の鯛は劣る。天然の鯛は、「まことがこもっている」からうまいのである。養殖の鯛は、まことではない。だから劣る。
人生、「まこと」を貫きたいものである。まことのこもった者と付き合いたいものである。歴代が、先祖が、「まこと」をもって生き抜いたように、おまえも「天然の鯛」を貫け。
そうだ。どんな仕事も、「まこと」をこめたいものである。「下」にとどまることなく、まことの「上」になり、周囲を輝かせていただきたい。
百年に一度の経済恐慌は、あなたにとって好機である。今やっている仕事を見直し、その中で自分がどうすればほかの人に貢献できるのか考えさせてくれたチャンスなのだから。
うまくいかないからといって土俵を替えてはいけない。うまくいかないときこそ、耐え忍び、工夫することである。技術を積み重ねた、熟練の技を身につけなければいけない。そして、「まこと」のこもった仕事のできる自分を築いていくのである。
一所懸命、熱心にやることである。熱い心で、朝から晩まで時間を忘れて、懸命にやることのできる「一所」をみつけたなら、あなたは必ず勝つ。
そんなあなたを応援するために、本書はある。
今日はこの本を読んで気合いが入りました。さっそく若手十数人を連れて職場の近くに飲みに行きました(笑)。たまにはハメをはずしてストレス解消も必要です。
若いパワーを存分に活かしてやりたいと、いちおう上司である私は思いました。
そして私は何を思ったか、飲み屋をあとにして、家まで歩いて帰りました。距離にして15キロ、標高差400メートル。3時間弱で帰宅。やればできる!若い者にはまだまだ負けていられませぬぞ!
そんな力を与えてくれる本でした。
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