大阪都構想から「東京都」の歴史を振り返る
大阪W選挙、維新の会圧勝でしたね。東日本が疲弊している今、西日本から大きな波が起きるのは悪いことではありませが…橋下さんの唱える「大阪都構想」は、ある意味微妙なタイミングです。
歴史上、前回大阪遷都が叫ばれたのは、1923年(大正12年)のことです。ご存知のとおり関東大震災が発生し東京は壊滅。大阪で遷都論が湧き上がりました。それを受けて宮内省があえて「東京ハ帝国ノ首都ニシテ」との文言を入れた詔書を発表しました。
今回は東日本大震災の直後に(遷都論ではありませんが)「東西二都論」が大阪で叫ばれたわけで、これはもちろん偶然ではありません。
当然、国家の危機管理システムとして「サブ首都」があるのは悪いことではありませんし、実際天変地異の多い日本においては、そのような「首都拡散論」が長いこと唱えられてきました。
今回の橋下さんの「大阪都構想」に対しては、石原東京都知事が「天皇陛下がいらして国会があるところが都だ」という実にまっとうな「詔書」を発表しましたね。
今の東日本の疲弊と、橋下さんの(維新の会の)勢いからすると、本当に「都」を乗っとる「維新」が起きないとは言いきれないわけですから、お仲間の中からそういう釘を打ってくださるのは、我々東日本の人間からすると助かります(笑)。
ま、もちろん、前の「維新」は西日本から「都」を奪い取ったわけですよね。それを返してもらおうというのは、それこそ歴史のパターンとしてはありうることです。
そうそう、前もどこかに書きましたよね、江戸を東京に改称しようというアイデアを最初に唱えたのは、今の秋田県羽後町出身の佐藤信淵です。文政6年(1823年)のことですから、ずいぶんと先見の明のあった人物です。今、私は彼の業績の再評価を試みています。なかなか面白い人物ですよ。
正式に「東京」の地名が採用されたのは、明治元年(1868年)のことになります。「江戸ヲ称シテ東京ト為スノ詔書」が発表されました。
ちなみに明治の初めの頃は、「トーキョー」という発音と同時に「トーケー」という発音も一般的でした。漢字も古くは「東亰」だったんですよね。
「トーキョー」という読みが定着したのは、当時の教科書に「トーキョー」と表記されてからです。「トーキョー」ですよ、実際に。ぜひこちらをご覧下さい。明治はとっても「今風」ですよ(笑)。そうそう、この記事にもあるように、当時は「トーキョーシ」だったんですよ。。
1889年(明治22年)に東京府内15区を東京府から分立して東京市としました。ちなみにその時の東京市長は府知事が兼務したそうで、今で言えば、大阪府から大阪市を独立させて、府知事が大阪市長も兼ねたということですから、まるで今回の橋下さんの動きのようですね。
そして、1896年(明治29年)に東京市を東京都に改めて、府郡部を「武蔵県」とする法案が出されましたが帝国議会で否決されました。
その後も何度か「東京都構想」があったようですが、そのたびにポシャり、実際に「東京都」が生まれたのは、1943年(昭和18年)のことです。戦時体制の強化という目的があったのでしょうね。1月に政府の「東京都制案」が可決され、7月1日に東京府と東京市が廃止されて「東京都」が誕生しました。
その翌年、昭和19年から20年にかけて、ご存知のとおり「東京都」は大空襲に見舞われ、再び焼け野原になってしまいました。なんとも皮肉なことと言えば皮肉なことです。
しかし、その後再び「東京都」が復活したのは言うまでもありません。なかなかすごい歴史を持った「都」なんですよね。
将来、首都圏直下の大地震や房総沖の大地震も避けられません。あるいは戦争や東京に大きな影響のある原発事故も起きるかもしれません。しかし、そんなことがあっても、「東京」は再び立ち上がるのでしょうか。
私も何度か書いているように、東京は政治や経済や文化だけでなく、「霊的」な意味においても不思議な都です。たとえば大阪がその部分まで乗っ取れるかというと、ちょっと疑問でもあります。
そういう意味で、私はまだしばらく「東京都」の価値は下がらないと考えています。橋下さんには、ぜひとも「東京都」の(裏表の)歴史を勉強していただきたいと思いますね。
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