由紀さおり&ピンク・マルティーニ 『1969』
これは素晴らしいアルバムですね。今、世界中で評判の1枚です。
由紀さおりさんについては、こちらで『う・ふ・ふ』を紹介しました。日本を代表する歌手の一人ですね。
由紀さんの歌のうまさ、声の美しさはもう言うまでもありません。このアルバムでも驚異的な歌唱力を存分に発揮しています。
もとはと言えば、アメリカの人気ジャズオーケストラ「PINK MARTINI」のリーダー、トーマス・M・ローダーデールが由紀さんのLPをレコード屋さんでジャケ買いし、それを聴いてその歌唱力と楽曲のレベルの高さに驚いたところから始まった縁だそうですね。
由紀さんのレコードをジャケ買いするアメリカ人もすごい…いや、アメリカのトップミュージシャンを魅了してしまった由紀さんと日本の歌謡曲がすごいってことでしょうか。
このアルバム、とにかく驚きでした。何がって、ある意味全然ジャズじゃなかったからです。まんま歌謡曲なんです。
「PINK MARTINI」のイメージからは全く程遠いからビックリしたわけですね。まさに日本の歌謡曲アレンジ。文句なしの昭和歌謡。
もちろん、このブログで何度も強調してきたように、日本の昭和歌謡は本当の意味でのワールドミュージックであり、またその伴奏は日本を代表するジャズのビッグバンドが務めてきたわけですから、大きなくくりでは「ジャズ」と言えなくもありません。
しかし、ここまで「まんま」だとは。普通日本人が歌謡曲のジャズカバーをやれば、「ああいうふうに」なるじゃないですか。ジャジーにね。ところが、これはまんま歌謡曲だった。
アメリカのトップジャズミュージシャンが、ここまで日本の昭和歌謡のアレンジを研究してくるとは。いかにも演歌風な部分もあって、ちょっと笑っちゃいました。
もしかすると、昭和歌謡が世界的なブームになっていくのかもしれません。実際このアルバム、イギリスをはじめとしたヨーロッパやアメリカのチャートを席巻しつつあります。
あらためて歌謡曲のバックオーケストラを聴きますと、ゴージャスかつ歌を引き立てるアレンジという意味では「イタリア」を感じますね。オペラの歴史です。もちろんそこから流れるヘンリー・マンシーニのような映画音楽やムード音楽の世界。
まあホントにワールドワイドな音楽ですわ。いかにも日本文化らしいですね。博覧会状態でありながら、やっぱり「日本」なんですよ。すごいなあ。
これをきっかけに、世界中に昭和歌謡やJ-POP、J-ROCKのブームが起きるといいなあ。そのまた集大成であるフジファブリックの楽曲なんか一番ウケそうですし。期待しましょう。
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コメント
山口先生お久しぶりです!8期生のあかねです。ロボじゃないです。
このまえ学祭があったんですけど、
そのとき駅で若い男女が「よろしくおねがいしまーす」って言いながら何かを配ってたんですよ。
学祭関連のものだと思ってなんとなく受け取ってみたら、
仏教系宗教団体の本(立派な装丁)との冊子(たぶん若者への布教目的)でした。
近々9期生にお守りか絵馬を送ろうと思ってるんですが、それに同封してもいいですか??笑
ちなみに「シリーズ第7巻目」、「著者渾身の一冊」だそうです。
投稿: あかね | 2011.11.21 23:11
由紀さおりさん、夜明けのスキャットの頃からファンでございます。子供ながら、(当時)お若いのにもかかわらず臈たけた色気にどきどきしていました。ジャケ買いの気持ちわかります。
投稿: 貧乏伯爵 | 2011.11.22 10:22
競走馬も、強い馬ほど美しく、また不思議と良い名前だったりするのと同じように、アルバムの中身もジャケットやタイトルに現われるものです!(キリッ!)
最大の音楽市場であるアメリカという国では、なかなか母国語以外の音楽が受け入れられない状況が長く続いておりますね。坂本九と NENA くらいしか記憶にありません。カナダや北欧の歌手も時々チャ-トに顔を出しますが、アメリカで売るために英語で歌っております。おそらく米国民は外国語の音楽になれていないからだと推測します。由紀さんのアルバムをきっかけに、少し市場が膨らむと、日本にとっても諸外国にとっても嬉しいことなのですが。
投稿: LUKE | 2011.11.23 09:17