『大麻入門』 長吉秀夫 (幻冬舎新書)
非常に勉強になりました。
生物学、政治学、歴史学、宗教学、そして日本語学的にも、今まで知らなかったこと、疑問に思っていたことが満載。よくまとまっている本だと思います。
国語のセンセーとしてはずかしかったのは、「麻薬」や「麻酔」の「麻」と、「大麻」の「麻」は同じものだとなんとなく思い込んでいたことですね。
本来「まやく」は「痲薬」であって、「麻薬」と書くのは「痲」が常用(当用)漢字になかったからだとは知りませんでした。「痲」は「しびれる」という意味であって、「麻」とは関係ありません。「麻」はとんだとばっちりを受けたということですね。
ここで断っておきますが、私はドラッグとしての「大麻」の解禁には基本反対です。単純に、酒や煙草と同様なくてもいいものだと思うからです。
現行大麻取締法の成立事情や過程(この本に詳しい)がいかであれ、現行では禁止されているわけですから、やはり法に従わなければなりません。ただ、全ての法と同様に、その歴史性や時代性などに鑑み、よく議論して改正していくことは必要だと思います。
ドラッグとしての大麻(マリファナ)については、たとえば映画『スーパーハイ・ミー』について書いたこちらの記事にさりげなく(?)書いたことがありましたっけ。
いや、あの映画は大麻をドラッグとしてのみとらえていたのではありませんね。他の側面もえぐりだしていました。
あれからだいぶ経って、この本を読んでみようと思ったきっかけは、ある「神社」の儀式にありました。
我が校のすぐ近くに通称「下浅間」、「冨士山下宮小室浅間神社」という神社があります。そう、その記事にも書いてあるように、志村正彦くんとも縁の深い神社です。
そこで、昨年の9月、素晴らしい儀式が行われました。『御更衣祭』です。60年に一度の神様(コノハナサクヤヒメ)のお着替えですね。本当に感動しました、あれは。
あれから1年して、神社から「神秘の稀祭 神衣御召し替え 富士山北口里宮に伝承される」という冊子をお贈りいただきました。多く写真や資料が掲載されている、なかなか立派なものです。
それを興味深く眺めておりましたら、「大麻」という文字が目に飛び込んできました。
そして、ああそう言えば神道と大麻は切っても切り離せない関係だったな、と思い出し、具体的にどういう関係があったのか調べたくなって、この本を注文したというわけです。
神道では「大麻」は「たいま」とも読まれますし、「おおぬさ」とも読まれます。祓えのときに用い幣帛(へいはく)ですね。これが実際に麻を使って作られていました。また、たとえば注連縄や神事としての相撲の「横綱」も本来は大麻草で作るべきものでした。
麻は非常に生命力に溢れた植物であり、またいろいろな用途において優秀な性質を持っていましたから、どこか「神」に通ずる部分があったのでしょうね。世界的に見ても、宗教と結びつくことが多くありました。
もちろん、ある種の陶酔感や幻覚作用などと宗教が結びついたということもあるでしょう。しかし、日本では、ある意味その点を利用されて、主にアメリカの事情によりGHQがその使用や所持を禁止するに至りました。
そのアメリカの事情については、この本に非常に詳しく書かれていますから、ぜひお読みいただきたい。ある意味では、ここでも日本古来の「魂」が欧米列強の「マネー」に駆逐されていく様子を見ることができます。非常に象徴的だなあと思いましたね。
もちろん、医療用、産業用、あるいは食料としての「大麻」についても詳しく書かれています。これほど豊かな「資源」と「文化」を、一つの法律のもとに本当に全て失ってしまっていいのか、とりあえず誰もが疑問に思うことでしょう。
そうした様々な背景を知らねば、先ほど述べた「議論」も始まりませんね。そういう意味で、この本のタイトル「大麻入門」は、全く間違いでないことが分かるでしょう。非常にまじめな「論文」であったと思います。おススメします。
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