挨拶とバロックとジャズと…アドリブは楽しい!
昨日は麻酔&止血剤のおかげか11時間も寝ることができました(笑)。そのおかげで、今日の準備を全くしてない!という大ピンチ。
こういう時こそ今まで培った「集中力」と「アドリブ力」を活かすべし(人はそれを「ハッタリ力」と言いますが…笑)。
まずは中学校バスケットボールの新人戦の開会式にてご挨拶。子どもたちの顔を見て思いついたことをしゃべりましたが、結果として面白い内容になったのでは。こういう挨拶というのは通り一遍の固くてつまらぬものになりがちですから、逆に私のような変人の生の言葉の方がインパクトはあるのでは。
一期一会ですからね。生徒にとっても私にとっても大切な時間ですから、私にしか言えないようなことを言うべきです。オトナの世界ならステロタイプな眠くなるような挨拶もけっこうですけど、相手は未来ある濃密な時間を送っている若者たちですから。その内容については、後日書きましょう。
さて、挨拶が終わって私はすぐに家族と横浜へ。
今日は山手聖公会にてコンサート。プロの皆さんとご一緒させていただく貴重な機会です。詳細な内容はこちらをご覧下さい。超満員札止めの中で大変に気持ちよく演奏させていただきました。ご来場くださった方々、共演してくださった皆さま、ありがとうございました。
バロック音楽においてもアドリブは重要な要素です。たとえば今日のヘンデルのオルガン協奏曲では、もともとヘンデル自身の指示によって、「ここは長大なアドリブを入れよ!」というようなことが楽譜に書かれています。
バロックのアドリブにはいくつのパターンがあります。完全なる即興、つまりインプロヴィゼーションと、楽譜にはない音楽をあらかじめ作っておくというもの、あるいは装飾音を足すというものなどいろいろあるんですよね。
今日の演奏にはそのうち、あらかじめ作っておくパターンと装飾のパターンがたくさん織り込まれていました。それによって、私たち演奏家も「ライヴ」を味わいながら演奏できる。そうすると当然お客様も生きた音楽を体験できるますね。
それこそが、私がバロックを演奏する理由です。基本楽譜どおり演奏すべしという音楽はどうも…。
ちなみに今日の演奏会での私の最高のアドリブは…演奏ではなくて、あれでしたね(笑)。
実はそのオルガンコンチェルトの時に、ちょうど私の立ち位置にですね、西側のステンドグラスからお日さまの光が差し込んできまして、非常にまぶしい状況だったんですね。
楽譜が見にくいというワタクシの事情もあったわけですけど、多少経験を積んだおかげでしょうか、ステージ上の自分を落ち着いて客観視できるようになったんでしょうね、思わず笑ってしまったんですよ。
だって、あの赤、青、黄色の光が今自分に当たってるんでしょ?私だけ思いっきりスキンヘッドですし。教会のステンドグラスに照らされるお坊さんですからね(笑)。
で、影になる部分を探して右に左に前に後に動いてみたわけですけど、結果として、私がまるでミラーボールのように赤、青、黄色に輝くわけですから、厳かな聖公会の祭壇がまるでディスコの舞台ですよ(笑)。こちらにも青く輝く私が写っています。これを見て、カミさんは「ブルーマンじゃん!w」と言ってました。
これはお客様も笑いたいに違いない、しかしこの雰囲気ではそれもできず皆緊張を強いられている(お葬式の正座でしびれた人を見るかのように)に違いないと思い、自らの頭上で手でピカピカを表現して笑いをとって差し上げました(笑)。
皆さん、緊張が解けたようにお笑いになられました。見事会場が一体となった瞬間(?)。失礼いたしました(笑)。ま、これもアドリブ力の一つでしょうかね。
さて、演奏会が盛況のうちに終了いたしまして、私はお客様よりも早く会場をあとにしまして、電車でみなとみらいへ。そう、今日はたまたま教え子たちも横浜で演奏だったのです。
我が校が誇るジャズバンド部(ムーン・インレット・サウンズ・オーケストラ)は今月だけでも、地元各所での演奏はもちろん、ここ横浜、浜松、そして京都への遠征と多忙をきわめています。今やプロよりも忙しいのでは。年間60以上のステージを体験しているわけですから、私の比ではりません。
今日は横濱ジャズプロムナードへの参加です。私の終演時間から30分後出番ということで、ギリギリ間に合いました。
いつもどおり彼ら中高生は堂々とノリノリの演奏を披露してくれました。なかなかこうして外での活躍の場に居合わせることがないので、新鮮に感じましたし、いやあホントに立派だなあと思いました。私なんかよりずっと落ち着いているし、お客様の心をつかんでいる。すごいですね。
ここでも彼らはアドリブをこなしていきます。もちろん、彼らのアドリブのほとんどは楽譜に書き起こされたものなのですが、それにしても、あのライヴ感を出すのは見事です。
ジャズもバロックと同様、楽譜に書かれた部分と書かれていない部分、すなわちワタクシ流に言うと「コト」と「モノ」のバランスが面白いジャンルですよね。
この前クラシックはジャズを用意するための存在にすぎないというような過激な発言をしました。ある意味ではそれは正解であると思っています。クラシック専門の方々にはそういう意識は希薄ですけれども、実際そういう解釈をした方が面白いし、近代西洋芸術音楽の真の価値を認めるためも必要な視点だと思います。
その点バロックというのは、半分前近代なんですよね。私たちが古楽器を愛好するのは、楽器が近代工業製品として不完全だからです。また音楽自体も、通奏低音にはベースラインとコードネームに該当する数字しか書かれていないこと、旋律楽器や歌にもアドリブが必須であることなど、古代的、民族音楽的な部分を残しているわけです。
そのバランスがジャズに近いところもあるわけですね。もちろんジャズは全く別のアプローチでそのバランスを追求しました。この前書いたとおり、楽器は完全なる工業製品を用います。電子楽器さえも当たり前に使いますかね。楽器がそういうものであるということは、音楽理論も近代ヨーロッパのものをそのまま使います。しかし、そこにアドリブやモードやブルースや不協和音を導入して、古代に原始に還ろうとしたんですよね。それが新しかった。
私がバロックとジャズと、それ風な人生(笑)を愛するのは、そういう世界が好きだからなんです。今日はそういうことをいろいろなところから再確認した一日でした。
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