『演出家の仕事』 栗山民也 (岩波新書)
明日、BUMP OF CHICKENの「ゼロ」発売日ということで、本屋さんで藤原くんの言葉を少しつまみ読み。bridgeの3万字インタビューがなかなか面白かった。
特に、ソロでも充分やっていけるのでは?というイジワルな質問に対する答えにあった「アンサンブル」論は実に重要だと思いましたね。他者の融合にこそ音楽の力は生まれる。これは私が常に実感していることです。
そんな「アンサンブル」論が、この本にもあります。
「アンサンブルのよい舞台」というと、一糸乱れ呼吸のあった舞台だと解釈されがちですが、はたしてそうなのでしょうか…と始まり、モロッコのマラケシュでのある音楽体験について語っているところです。とても刺激的な部分ですね。引用します。
人間の性格もそうですが、芝居は全員違った立場の人が舞台上でぶつかり合い、それぞれが自分の声で主張する。そのときの衝突のうむ、不調和な調和の時間。私は、それこそアンサンブルだと考えます。アンサンブルという言葉は、「演劇とは何か」という言葉と重なります。
この解釈は、実によく理解できますね、体験的に。そのとおりです。演劇でも音楽でも、はたまたプロレスでも。私は人生においてもそれをベースにしているのです。単なる仲良しではつまらないのです。ある意味闘魂に基づいた力学。衝突にして調和。アウフヘーベン。
そうそう、今日燃えろ!新日本プロレス 1号を買ってきて、DVDをじっくり観ましたよ。猪木 vs ホーガン、猪木 vs 前田、アンドレ vs ハンセン、タイガーマスク vs ダイナマイト・キッド…どれも、素晴らしいアンサンブルが生まれていました。予定調和の現代学芸会プロレスもどきとは大違いのエネルギーが生じていました。ホンモノですね。
今、1年生が演劇の稽古に励んでいます。その道では実力も実績も豊かな先生に来ていただき、指導をしていただいています。
今回は私は珍しく?完全に観客側に回ろうと思っています。なにしろ、教師は演出家であるといつも思っている私ですからね、なにかと「演出」したがる傾向がある(苦笑)。
そのような意味でも、この本は私にとってのバイブルの一つです。素晴らしい内容です。
もちろん、具体的に演出家がどのような気持ちでどのような技術でその仕事をしていくかもよく分かります。しかし、その意味では、他の職業を紹介した本と同じ価値しかないでしょう。この本のスゴイところは、それがそこにとどまらず、見事な文化論、あるいは哲学になっているところです。
一流の芸は全てに通じます。だから芸なのです。ホンモノはそういうものです。本物の調和が衝突から生まれるように、本当の普遍性は個性から生まれるのです。
教育においても、私はそこを理想としてやっていきたい。そういう意味で、どんな教育関係の書物よりも、この本は有用です。
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