BUMP OF CHICKEN 『ゼロ』
一昨日の記事でも話題にしましたバンプの新曲「ゼロ」、さっそく聴いてみました。
私は意外にも(?)ほとんどゲームというものをしない人間なので、FINAL FANTASYも全く知りません。なんとなくの勝手なイメージしか持っていないので、もしかすると、この楽曲の本当の意味は分からないのかもしれませんが、まあそういう人もたくさんいるでしょうしね。バンプのファンが皆FFのプレーヤーだとは限らないわけですから。
FFというと、それこそなんとなくですが、中世ヨーロッパ的なイメージがあります。また近未来的なイメージも。これって面白いですね。そういうファンタジー系の近未来って、なぜか中世風なことが多い。日本に限らずそういう傾向があります。
これってどういう文化的歴史的背景があるのか、案外考察されていません。私も実はよく分からないのですが、まあ一つ言えることは、近現代という一つの固定された世界観があって、我々がそこに生きていて、そしてそこに常に違和感を持っているからこそ、いろいろなファンタジー(物語)が生まれるということ。その反近現代の象徴が「中世」ということになり、それが近未来という半近現代にも投影されるということでしょうか。
つまり、私たちの記憶、あるいは知識の中の最も近現代に近い過去、つまり近過去は中世であって、ファンタジーの源泉はそこに依拠するしかないということでしょう。つまりファンタジーの限界がそこにあるとも言えますね。
で、藤原くんはそこにどう挑んだかというと、やはり我々の記憶や知識という「過去」から逆算して近未来の音楽をやったと感じました。
たとえば、いわゆるAメロは固執低音を含む、まさに反近代的、つまり中世風と言ってもよい自然短音階に基づいたコード進行とペンタトニックの音階を使っています。音作り的にもなんとなくケルティッシュですよね。
Bメロというかブリッジを経て、平行調のサビに入りますと、近代音楽の入り口、バロック的な下降バスに普通の長音階のメロディーが乗ります。そしてサビの終わりには、フジファブリックの志村正彦くんも好んで使った胸キュン進行があって、ある意味一気に現代性を帯びてくるわけですね。そして偽終止して中世に戻る。
こうした中世(前近代)と現代をうまく融合することによって、FFと同様に近未来的な音楽を実現していると思います。これが、藤くんの意図したところなのか、感性のなせるわざなのか、私にはわかりませんが、結果として世界観の統一ができたと思います。
歌詞の世界はいつもどおり難解ですね(苦笑)。語り過ぎるほど饒舌であるほど謎が深まる、そういう言葉の残酷さがあぶり出されるのが、藤原くんの詩の世界です。昨日の綾小路きみまろさんとは、ある意味好対照かな(笑)。いや、多義性ということでいえば同じか。
彼の詩にいつも感じる、なんといいますかね、何気なく流れていく「現代」の「日常」への不安というか、違和感というか、そんなものがこのゼロにも感じられます。
終わりを描いて、しかしそれがスタート地点ゼロであるというのも、やはり、「今」の終わりが「未来」の始まりだという感覚に基づいたものでしょう。つまり、私たち凡人が流されているだけの日常に、彼は確かな変革の期待をしているということです。
私たちがつい見過ごしてしまう、あるいは無意識に封印してしまう「現代(今)」の様々な汚点や矛盾を、彼はしっかりかき出してくれます。そして、共有する。不安や不快感を共有するだけでなく、未来への希望を語る。みんなで変えていこうというメッセージを感じるのは私だけではないでしょう。そこがバンプの魅力です。
今は消えそうな私小説を正統的に引き継いだ感の強いJ-ROCKの世界において、やはり彼らは特殊な存在だと思います。それは、藤原くんの持つ独特な「公共性」がもたらしている現象でしょう。ある種宗教的な感じがするのは、そのためです。そこが好きか嫌いかは、はっきり分かれますがね(苦笑)。
こうしてみると、ドラえもん、ファイナルファンタジーという流れも、そういう未来性や公共性、あるいは宗教性を象徴しているかもしれないと思えてきます。いかがでしょうか。
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