『言葉の力- 「作家の視点」で国をつくる』 猪瀬直樹 (中公新書ラクレ)
「言葉の力」…毎日それについて考えています。昨日も中学生の合唱を聴きながらいろいろ考えました。
変な話に思えるかもしれませんが、今日「言葉の力」を感じたのは、女子プロレスの団体対抗戦のニアライブを見ている時でした。そこには、今、世の中に足りない言葉がたくさんあったのです。特に教育界に欠けている言葉…それはすなわち「魂」につながるものなのですが…が見事に力をもって存在していました。
今、女子プロレスの世界では、ベテランがそれぞれ団体を作り、若手を育てるという、まさに教育が行われています。そこで発せられるベテランたちの言葉には、実に重みがあります。若手の心と体、そして私たちファンの心を動かす力があるのです。私たち夫婦は試合が始まる前から泣きっぱなしでした(笑)。
それに比べて、今の政治家の言葉はどうでしょう。失言はもう問題外ですね。失言集ができてしまうくらいですから。日本語の歴史においても、これほど汚れた時代はないでしょう。
失言ではない普通の言葉でさえも、とても人の心や体を動かすような重みを持つものはありません。猪瀬さんもそこを嘆くことからこの本を始めています。
女子プロレスを見て思うのは、「言葉の力」は行動と経験に基づいているということです。そして、その行動と経験とは、ある意味言葉にならない「志」、あるいは「魂」に基づいているということです。それがない言葉には力がないのです。
つまり、志や魂に突き動かされた行動と経験から生まれた言葉以外は全て「嘘」だということです。表面だけをごまかすメッキのような言葉には継続的な力はありません。
猪瀬さんは「言語技術」という言葉を使っています。これは、我が校が出口汪さんの論理エンジンを使って生徒に伝授している「論理力」とほぼ同義であると感じました。戦後日本の国語教育に欠けていたものです。欠けていたというか、おそらくアメリカによって意図的に骨抜きにされたその「骨」の部分でしょうね。
そうした技術や論理力と志や魂がどう関係しているのかと疑問に思われる方も多いことでしょう。ある意味正反対に位置するような気さえしますよね。
しかし、これらは実を言うと表裏一体というか、ほとんど同体であると言ってもいいものなのです。
つまり、真剣に他者を動かしたいという意志を実現するには、「他者意識」が絶対に必要なのです。受け取る側に立って言語を駆使しなければならない。それが猪瀬さんの言う「言語技術」であり、出口さんの言う「論理力」であるわけです。
そしておそらくそういう本物の言葉が持つ力のことを、我々は古来「言霊」と呼んでいたのだと思います。テクニックやロジックと「言霊」は相容れないのではないかというイメージを持つのが一般でしょう。しかしそうではないところが面白いところであり、難しいところなのです。
最後に、この本の後半、猪瀬さんの読書術は興味深かった。とりあえず買って10分読む。全部読まなくてもいい。必要な時に思い出して、取り出して読む。そのためには買った上での10分の「立ち読み」が必要だとのこと。これ、よく分かります。
う〜む、それより何より、センダイガールズの里村明衣子の「言葉の力」はすごかった!!
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