« 瀬戸龍介・花世・360°ライヴ in 河口湖円形ホール | トップページ | パンチング・メタル風 iPhone4 ケース 『elago BREATHE』 »

2011.09.20

フジファブリック 『STAR』 (アルバム)

4547403010930 生フジファブリックのニューアルバム。
 まっさらな気持ちで聴こうと思ったけれど、やはりそれは無理でした。それはたぶんメンバーにとっても同じことでしょう。
 最初に聴き終え思わずつぶやいてしまった言葉。

 「たしかに志村正彦がフジファブリックの全てではなかったが、志村正彦は志村正彦以外の誰でもなかったということか。当たり前のことだが妙に胸にしみた」

 その後何度か、いろいろな姿勢で聴いてみました。しかし、結局結論は変わりません。無理に別の感情を装っても意味がないのです。もうどうしようもない欠落感。
 もちろん、その欠落感も含めて、私たちはこのアルバムを高く評価すべきです。意地悪なほどに客観的に音楽的に聴けば聴くほど、このアルバムのクオリティーの高さを感じないわけにいきません。純粋に今、日本のアーティストでこれだけの個性的かつ普遍性を持ったサウンドを作れるバンドはないでしょう。それは曲にも詞にもアレンジにも演奏にも言えることです。
 ものすごくフジファブリックらしいアルバムであり、そういう意味では、前々作「CHRONICLE」よりもずっとフジファブリックらしい。
 しかし、もちろん何かが足りない。それはフジフジ富士Qで感じたモノと同じでした。
 「いない」という意識する時点で、彼はちゃんと「いる」のです。絶対にまっさらな気持ちで聴けないから、永遠に「いる」のです。当たり前のことですね。私たちの頭の中から、もちろんメンバーの中からも、彼は消えない、消えるわけがない。
 私もいろいろな形でいろいろなバンドの欠落感を味わってきましたが、これほど「リアル」に開いた穴を感じたことはありませんでした。
 つまり、「いる」と思うから、今度はリアルに「いない」のです。
 しかし、繰り返しますが、それも含めてこのアルバムは高く評価されるでしょう。残されたメンバーにとって、その「穴」は埋めようがないことなど、いやと言うほどに分かっていると思います。だから、大変な挑戦であったと思います。それは自分たちに対して、そして志村正彦という天才に対する戦いであったはずです。
 私たちファンもそれぞれ葛藤があるでしょう。私ももちろんそうです。楽曲「STAR」についてこちらで書いた時は、それこそ意地悪な形で自分自身や他のファンの人たち、あるいはメンバー、そして志村くんと戦ってしまいましたね(苦笑)。でも、あれもあれで正しい自分なのです。いろいろ試行錯誤して悪戦苦闘して前に進んでいくしかないのですから。
 特に大変な戦いを強いられたのは、山内総一郎くんでしょうね。彼の努力のあとは充分に感じることができました。ある意味けなげなほどの純粋な「歌魂」ですね。もちろん他のメンバーも今まで以上に成長した姿を見せてくれています。作曲や作詞の技法に格段の進歩があったと思います。
 楽曲「STAR」の記事にも書いたとおり、志村くんは「ジョン&ポール」に匹敵する才能があったと確信しています。特に彼の持つジョン・レノン的な「言霊」世界には独特なモノがありました。常人を超えた、しかし常人が共振する「魂の叫び」を持っていました。
 あえて言うなら、やはりそうした部分がこのアルバムには欠けているかもしれません。構築された「コト」はあるけれども、湧き上がる「モノ(ノケ)」はないのかもしれません。それは、やはり、ビートルズとソロになったポール・マッカートニーの作品との違い、あるいはロイ・ウッドのいた頃のムーヴやELOと、ジェフ・リンだけになったELOの作品の違いのようなものかもしれません。
 でも、私はポールもジェフも大好きですし尊敬しています。逆にジョンやロイに違和感を抱くこともあります。私自身がそうであるように、世界もまた多様な感性の集合体であり、どれが正しいということはありません。
 だから、私はこの作品を好きになるでしょう。いや、もう今好きなのです。充足感を抱く自分と、欠落感を抱く自分の両方を認めたい。いや、先ほど書いたとおり、「満たされている」ことと「欠けている」こと、「いる」ことと「いない」こととは表裏一体であり、不二一如なのです。
 私は、今までのフジファブリックのアルバムと同様、この「STAR」をくり返し聴いていきたいと思います。志村くんと一緒に…。

Amazon STAR(初回生産限定盤)(DVD付)


|

« 瀬戸龍介・花世・360°ライヴ in 河口湖円形ホール | トップページ | パンチング・メタル風 iPhone4 ケース 『elago BREATHE』 »

モノ・コト論」カテゴリの記事

音楽」カテゴリの記事

コメント

まだ手にしていないのです。
注文すらしていなかった。

それでいて、彼らのインタビュー記事を読み
彼らの出演する番組を聴いたり、観たり・・・。

3人なんだよね。
4人なのに、3人なんです。

理解してる自分、知ったような口をたたく自分。

前に進むものだ、何だって。
キラキラまぶしいってんだ。

昨日、「STAR」「ECHO」を聴いてから仕事へ行きました。
車の中で「アラカルト」をかけたら、
静かな気持ちだったのに涙がでました。

この日を待ってたのに、おかしな話です。

先生の記事を読んで、Amazonポチっとしました。
聴こう、聴こう。
歩こう。

投稿: Yuzuki | 2011.09.21 12:59

先生、こんにちは。

欠落感。そうです。そうなんです。

その言葉が一番しっくりきます。

このアルバムを聴いたあと、すぐに CHRONICLE を聴きました。

そうして感じた欠落感を埋めているんです。

けど STAR も、まぎれもなくフジファブリックでした。

私もこのアルバムを好きです。

投稿: aramoruto | 2011.09.21 16:29

Twitterにて、ふと思いつき「志村正彦」を検索していたら、ここへ辿り着きました。

ずっとフジファブリックを好きなつもりでいたけれど、結局「志村正彦の居るバンド」を好きだったのだと、STARを聴いて思い知らされました。

3人を応援したいと思う気持ちも、純粋なものではなく、志村正彦が生前大切にしていたバンドメンバーだから、なのだと。

少しでも、穴埋めをしたくて、志村正彦の残り香(?)を探そうとしてしまいます。
思い出は、儚く甘く美しく…と分かっているのに、思い出してはホッとして、その後とても悲しくなります。

こちらでブログを読み、またひとつ正直な気持ちに気づけました。

彼のいないフジファブリックは物足りないです。
と言うより、彼がいない時点で、全く違うバンドの誕生なのだと思います。

でも、残された者は、志村正彦が名付けたバンド名を引き継いだ。クレジットに名前まで入れて。ホームページからは彼の姿が消えたのに。

わたしは、志村正彦が作り上げたフジファブリックをずっとずっと、忘れません。
否定はしたくないけれど、今のフジファブリックに、納得は出来ない。

だけど、3人の新しい音楽は、キラキラしていて、そんな3人にまた新しいファンが増えるのだなと思うと、眩いし、嬉しいです。

そんな新しいファンの方々に、「フジファブリック」も好きになってもらえますように。

投稿: おこめ | 2011.09.21 22:38

山口先生こんばんわ。私も20日のうちにこのアルバムを聴いていました。 先のお二方や先生がおっしゃる通り、このアルバムには何とも言えない欠落感がありました。 ですがやはり残された3人がその欠落感と対峙した痕も感じられて、この先私にとって大切なアルバムとなることを予感させるような内容でした。 志村さんが行ってきた、形而上のモノを曲や詩として体現させるいわば'神降ろし'的な表現の仕方は今はまだ出来ないかもしれません。 ですが天才志村正彦には及ばずとも、天才と長い時間を共にした彼らなら、いつしかとても素晴らしい曲、詩を生み出してくれるのではないかと期待しています。

投稿: しゆう | 2011.09.21 22:56

先生、先日はたいへんお世話になり、ありがとうございました。
富士山にも雪が積もったようですね。
時の流れを感じます。

「STAR」、私も繰り返し聴いています。
私の感想は先生がおっしゃって下さったこととほぼ同じです。
心に大きな穴がぽっかり開いているけれど、このアルバムからはメンバー3人のまっすぐな思いが感じられました。

昨日、京都音楽博覧会に行って来ました。
音博はアコースティック・ギターがメインとなるので、他のフェスほど賑やかな感じではなく、「ぼちぼち」な感じが良かったと思います。
フジのステージもほっこりとした感じでした。
最後の「ECHO」を総くんが大切そうに歌った時には、やはりグッときてしまいました。

先生は相変わらずお忙しそうですが、どうぞお体にお気をつけて、益々ロックして下さいね!!

投稿: 松原恵子 | 2011.09.24 17:11

コメント書かせて頂くのは久しぶりです。
ご無沙汰しております。

少々遅れてこのアルバム聴きました。

「欠落感」皆さんもおっしゃっているようにとても
感じます。でも私は「MUSIC」の時の方がそれが
大きくて正直未だ通しては聴けずにいます。
だから今回それを覚悟の上で聴きました。

このアルバムは志村さんに向けられたものの様にすごく
感じました。どれを聴いてもメンバーが志村さんに宛てて書いたものの様に聴こえました。
山内さんのプレッシャーはきっとはかり知れないものが
あったと思います。
覚悟の上で聴きましたが 私は好きです。

頑張ってもらいたいです。応援します。

投稿: さつき | 2011.09.25 02:57

CDを貸していただき、ありがとうございます。
今、ちょうど曲を一通り聞いたところです。
僕は志村さんを失った「欠落感」というより、志村さんが残してくれた「存在感」を沢山覚えることができました。
ステージの袖にいる志村さんがいる様な、「志村正彦エッセンス」を感じるコトができました。

これからのフジファブリックが楽しみで仕方ありません!

乱文、長文失礼しました。

投稿: 厨二病少年 | 2011.09.26 20:59

初めてメールします。
私も先生とほぼ同世代のフジファンです。
私は、志村日記や「音楽と人」での彼を見ていると、志村君の音楽家としての才能をひしひしと感じつつ、同時にその存在は、メンバーの音楽家としてのストイックさと寛容あって成り立っていたのだなと思います。あのヒリヒリした彼の感性を、それぞれも音楽家として優れたメンバーが、彼を閉じ込めず、守りきったことによって、生まれた音、というのでしょうか。(特にCHRONICLEに関しては。)
「STAR」についての「喪失感」というのも分からないでもありません。が、私にはそれよりも、志村君の音楽を必死に支えてきた彼らの、前を向くその力強さの方が響きました。志村日記で、志村君自らがメンバーのファンだ、と書いてました。
天国の志村君と一緒に5年の彼らの音を楽しみにしたいと思います。
ダラダラとすみませんでした。

投稿: りすけ | 2011.09.26 23:40

先生お久しぶりです。

まっさらな気持ちで聴くために、敢えて雑誌は一切見ないで聴きました。

かとをさんは相変わらず…に見せていただけかな。でもアルバムの歌詞カードには今まで見たことない表情の横顔。
ダイちゃんも しむしむに「男のくせに〜」と度々いじられていた水玉は卒業でしょうか。服も 蝶ネクタイも“花柄”でした。
ソウくんの努力と葛藤は想像を絶します。

彼が一番多くを求められた事でしょう。
そして それに純粋に応えようとする彼。
縦横無尽にステージを動き回る彼を見ることはないかもしれません。
凄く…心配なんです。
ソウくんが今を楽しめているか。
三人にも言える事ですが
今 本当にやりたい音楽ができているのか…。
しむしむを意識するあまり 歌詞を不思議にしてみたり(“創った”変 は違和感があります…しむしむは“湧きだす”変なんです)
…まあ今までもしむしむの音楽を実現するために 三人は“自分の音楽”はできなかったのかも。
でもしむしむの音楽を実現するのが楽しいとも 過去に彼等は言ってました。

フジファブリックという大きな大きな看板を背負ってしまった三人。

いつか気負わず 彼等の音楽ができますように。

投稿: さお | 2011.09.29 14:28

こんばんは。
STAR、聴きました。
フジファブリックの新譜なんだけれど、別物のような…。
志村くんが作った曲は一つもないのだけれど、フジファブリックの曲らしい曲たち…。
それはそれはファンとしては複雑な気持ちでいっぱいです。
でも音楽は、正に「音を楽しむ」モノだと思うんです。
それは詩も同じことで。
その時々で、楽しめたり、そうでもなかったり…。
気持ちの赴くままに、気持ちの良いように聴いて行きたいと思います。
メンバーも皆さんまだまだ若いし、いろんな道を選べたばずだけど、それでもフジファブリックを選んだということを信じて、応援して行きたいと思います!

投稿: かえで | 2011.09.29 22:08

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/55913/52788864

この記事へのトラックバック一覧です: フジファブリック 『STAR』 (アルバム):

« 瀬戸龍介・花世・360°ライヴ in 河口湖円形ホール | トップページ | パンチング・メタル風 iPhone4 ケース 『elago BREATHE』 »