論より証拠
↓6月の宿泊座禅会にて猊下と
今日は我が学園の理事長先生の旭日小綬章受章祝賀会がありました。今まで学園がお世話になった多くの方々においでいただき、素晴らしい内容の会になったと思います。
私もいろいろな方とお話させていただきましたが、特に心に残りましたのは、今年6月に宿泊座禅会でも大変にお世話になった臨済宗向嶽寺派宮本大峰管長猊下のお話でしょうか。
猊下のご祝辞の中で、我が校の中学生をお褒めいただき、大変うれしく、また恐縮いたしまして、ご挨拶にうかがいましたところ、30分以上私の話にお付き合いくださいました。まことに有難いことであります。
私は教え子たちに教えられた様々な禅の教えにつながることをお話し申し上げましたが、猊下からはご祝辞の中でも話されました「論より証拠」について、いろいろな例を含めて分かりやすくお話いただきました。
「論より証拠」、これは猊下が駆け出しの雲水であった頃、かつて本校の名誉校長でもあられ、妙心寺派の管長でもあられた名僧梶浦逸外老師によく言われた言葉だとのことです。
逸外老師と言えば、昭和を代表する名僧中の名僧ですね。あの笹川良一氏が友として、いや親として慕っていたという方です。そういう面では、昭和の日本を精神的な面で支えた方とも言えるでしょう。まさに「清濁(聖俗)併せ呑む」、いや「清濁(聖俗)不二」の境地に至った方だったのではないでしょうか。
これはなかなか貴重な映像ですね。そうそうたる面々が揃っておりますな。
論より証拠…つまり、理屈をこねるのではなく、体現して見せよということでしょうね。これはまさに禅の魂を言い当てた言葉であると思います。
私のような野狐禅以前の野ダヌキ禅は、それこそ「論」にばかり興じていて(笑)、全く体現していないし、体感すらしていないわけでして、今にも逸外老師の喝が飛んできそうにさえ思われます。
しかし、生活の全て、あるいは人生自体が禅の修行だと考えれば、ワタクシたち俗な人間もまた日々刻々「証拠」を体現しているとも言えるわけで(と無理矢理な我田引水でありますが)、実際猊下とのお話の中でもそのようなことが出てまいりました。
いずれにせよ、論より証拠の裏側には、証拠を生むための辛苦が必要であって、それはまさにブッダの言う「生まれたことの苦しみ」にほかならないでしょう。
猊下もお若い頃、大変に苦しみ、そしてあることをきっかけに発心され、仏道に励まれることになったとのこと。そのきっかけとは?とおうかがいしましたが、それは話すと長いからとお笑いになられました。
話すと長いというよりも、話せることではないのでしょうね。論ではないわけです。今のお姿こそが証拠であって、それに至る道筋は問題ではないのかもしれません。それを、まさに俗っぽい興味から、ワイドショーのレポーターのような質問をしてしまいましたワタクシの野ダヌキぶりには、今、酔いが醒めてみて、とても恥ずかしい気持ちがいたします。
私も「論より証拠」を示せるように日々刻々精進したいと思います。ただ、お話の中でも申し上げたのですが、この世の中は、そうした悟りの種たる辛苦を、とにかくインスタントに取り除く方向にばかり進んでいます。特に子どもたちを取り囲む環境はそうなっていますね。
6月の座禅会でもそうだったのですが、実は子どもたちは、辛苦や不自由を普通に受け入れる能力を持っています。大人になるとなかなか素直に受け入れられないような体験こそ、若い頃にある意味「強制」しておく必要があると思います。それが現代的な価値観において、たとえ不条理、理不尽であっても。その究極の形が「食う寝る坐る」にも描かれていた「修行」というシステムなのでしょうね。
猊下、本当にありがとうございました。そして、理事長先生、おめでとうございました。このようなあり得ないような機会を与えていただけたのは、全て理事長先生のおかげさまです。ありがとうございました。
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