舞踏家・書家・料理家と共演(響演・饗宴)
動画アップしました!
↓リハーサル風景
素晴らしい体験をさせていただきました。皆さんありがとうございました。
山中湖畔にある素敵な宿「ホトリニテ」で、舞踏家の大倉摩矢子さん、書家の渡辺大壑さん、そして料理人の堀内一紀さんによるコ・パフォーマンスがあったのですが、そこに飛び入りでヴィオラの即興演奏をさせていただきました。
今考えるとずうずうしくお邪魔をさせていただいた感じがします。お三人の共演にキズをつけてしまったのではないかと申し訳ないとさえ思います。
さらにずうずうしくもそういう反省を抜きにしてしまいますと、私としては本当に感動の時間だっと言えます。
禅宗のお坊さんにして書家の渡辺大壑さんとは、もう四半世紀のつきあい。昔はよく呑みながら芸術談義や宗教談義をしたものです。その中で、よく書と音楽の共通性や違いについて語り合っていました。それがこういう形でのコラボレーションになろうとは。
舞踏家の大倉摩矢子さんとは、本番4時間前に初めてお会いしました。しかし、私は、彼女が付箋をいっぱいつけた「病める舞姫」を持っているを発見し、ああこれは行けるぞと思ってしまいました(これまたずうずうしくも)。
不思議なものですね。数年前に土方巽と唐突に接近した私、そこから舞踏の世界にずんずん引き込まれてしまいました。そして、今日の共演。
本当に私なりの理解でしかないのですが、たまたま親しんできた「書」と「舞踏」の世界。それはすなわち「縄文」的な世界にほかなりません。そこに自らが音楽で挑戦するということになろうとは夢にも思いませんでした。全くご縁というのは不思議なものです。
縄文的なモノ、それは「大地」に根ざしたものです。書は紙という大地に筆を打ち込み魂を刻み込む。舞踏は床という大地に身体を打ち込み魂を刻み込む。
では、音楽は?私にとっては非常に困難な、しかしわくわくする挑戦でした。生まれて初めての経験を、プロの表現者たちの中、お客様の前でするわけですから(お客様の中には世界的なミュージシャンもいる!)。それも即興で。
正直、書と舞踏は本当に素晴らしかった。台風による大雨と大風、徐々に増水してエネルギーを溢れさせようとする山中湖、それを遮断せず自然に受け入れてしまう歴史ある宿。そうしたシチュエーションも含めて、あまりにも「ライヴ」な瞬間の連続であったと感じました。
そのあまりの素晴らしさに、私もすっかり呑み込まれ、そして呑み込まれたおかげで、不思議と自然に演奏することができたと思います。古楽器を持っていったのも正解でした。湿度や気温に大きく影響を受ける裸のガット弦。より前近代的、古代的な「不自由さ」と「自由さ」に助けられた自分がいたのも事実です。楽器が勝手に叫んだり、沈黙したりしてくれましたから。
音楽にとっての「大地」とは、やはりドローンバスです。書とのコラボではそこを強調しました。一方、舞踏とのコラボは対照的に大地からの飛翔(の妄想)を表現したつもりです。大倉さんの舞が子どもの夢をイメージさせるものでしたから。
終演後、いよいよ若手料理人堀内一紀さんによる表現をいただく時間です。お客様といっしょに、まさに「大地」を感じさせるシンプルだけれどもエネルギッシュなお料理をいただきました。
お客様の中で野菜の味噌煮込みがヴィオラの音のようにザクザクしていておいしいと語った方がいらっしゃいました。この「おいしい」という根源的な快感を与えられる「料理」という芸術に、少し嫉妬してしまいましたね。味覚には理屈や言葉はいりません。
そう、縄文的、古代的、純日本的な表現は、「言葉」以前の感動であるべきですね。渡辺さんの書はほとんどが「甲骨文字」。文字以前、言語以前のイメージ世界です。文字も文字となり言語の記号となった瞬間に想像力を失ってしまいます。意味を得てデジタル的な狭窄世界になってしまうんですよね。
舞踏もまさにそれです。意味以前の動き。ワケがわからなくて正常、ある意味健康的なわけです。私は土方にそれを学びました。
大地に根ざすということは「舞ふ=回る」ということですよね。自然、地球、宇宙に身をまかせるということは、「人間」の傲りを捨てるということです。人間の傲りの象徴が「言葉・言語」であることは言うまでもありません。人間は言葉をもって世界を切り分け整理して支配制御しようとしたわけですから。
というわけで、これ以上「コト」の葉でカタるとせっかくの「モノ」世界が魂を失ってしまうからこのへんでやめておきますね。
とにかく楽しい素晴らしい体験でした。まさに響き合う「響演」と「饗宴」でありました。もしもう一度チャンスがあれば、またその場、その時の言語以前の表現ができるような予感がします。このような機会を与えていただいた皆さまに心から感謝いたします。
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