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2011.09.17

心の三本柱

110917_9_16_53_hdr 日は臨済宗向嶽寺派管長猊下のお話。そして、今日は妙心寺派管長猊下のお話。考えてみると、いや考えるまでもなく、とんでもない僥倖であります。
 臨済宗妙心寺派河野太通管長猊下もまた、私にとっては大変な憧れの方です。6年ほど前に猊下の「不二の妙道を行く」を拝読いたしまして、本当に私の人生は大きく変わりましたから。
 それほど、猊下のお言葉は美しく私の心に響いていたのです。そんな猊下のお言葉を直接聴く機会が訪れようとは。
 実は今年5月に初めてお会いして、「猊下の御本を読んで人生が変わりました」ということだけはお伝えしていたのですが、その時は本当に緊張してしまって、それ以上のお話はできませんでした。
 今日は1時間目の礼拝の時間に、生徒たち対象に「まことの私」という題で講話をしてくださったのです。それが実に素晴らしい内容でした。
 ちょうど今日は、中学校の方では、オープンスクールがあって、在校生とその親御さんを中心として討論会を行なうことになっていました。つまり、反抗期という難しい時期に、あえて親子の関係を見直すという企画をしていたわけです。
 それに先立って、この僥倖に恵まれた生徒たちは、今はよく分からないかもしれませんが、素晴らしい体験をしたと思います。猊下のお話はまさに「母と子」の関係をベースにしたことだったからです。
 まず、猊下はチャップリンの言葉を引用され、人生に必要なものとは何かを語られました。
 「勇気と希望と、わずかばかりのたくわえ」…チャップリンのこの言葉に加えて、猊下は四つ目として「友達」を挙げられました。なるほどその通りですね。心を通わせる友人がいれば、勇気も希望も生まれるでしょうし、もしかすると、お金に困った時も助けてもらえるかもしれませんね。
 そして「まことの私」と出会うために何か必要かというお話の導入として、まず「自分自身の最も古い記憶は何か思い出してみよう」とおっしゃりました。
 そうすると、私たちはあることに気づきます。つまり、最も母親に世話になっていた赤ん坊の時の記憶がないということです。毎日おしめを替えてもらい、おっぱいをもらい、泣けばあやしてもらっていたそんな大切な恩さえも忘れてしまうのですね。逆にお母さんはその時の記憶を鮮明に持ち続けるでしょう。そこにすでに親子のすれ違いが起きていますね。
 しかし、そのことに気づくと、まずは親に対して「ありがとう」という感謝の気持ちがわくはずです。そして、それを覚えていないこと、そして忘れてしまっていること、意識していなかったことに「すみません」という懺悔の気持ちがわきます。
 ただ、私たち人間は愚かなもので、なかなか親にそういう気持ちを伝えることができません。そうしているうちにもうそこに親はいなかったりするものです。
 ですから、そうした「恩」を、たとえば母親自身に返すのではなく、世の中全体に返していくのだと。それが「皆さんお元気で、おすこやかで」という報恩につながっていく。
 この「感謝・懺悔・報恩」こそが、まことの私に出会うために必要な「心の三本柱」だとおしっしゃいました。なるほど、これは大変に深い言葉だと思いました。
 私は猊下の御本を読んでから、恩というものは、その人に返さなくてもいい、実はそれは天下の回りものであるということを知り、大変に気持ちが楽になったことを思い出しました。
 私はそれまで、たくさんの方にたいへんにお世話になっていながら、結局その恩返しができないままその機会を逸してしまったことが多くあり、自分のいい加減さ、不甲斐なさに苦しんでいました。
 しかし、考えてみると、もちろんその方に直接言葉を送ったり、物品を送ったりして報恩をすませてしまうよりも、実はその方の「魂」「生き様」を受け継ぎ、その方にしてもらって嬉しかったことを、他の人にたくさんたくさんしてあげる方がずっと本当の報恩になるのではないか。
 親子の関係という人間関係の基本でさえもそうじゃないですか。自分の親にしてもらったことを、自分の子どもにするしかないのです。そして、そうやってずっと私たちは報恩をつないで来ているわけです。
 ある意味では、現代は、その報恩の紐帯を断ってしまう時代のような気もします。しかし、それが断たれた時、おそらく人類は滅亡するでしょうね。
 そんな時代において、やはりお釈迦様の教え(気づき)というのは、本当に重要になってくると感じます。
 この有難い講話(法話)のあとで行われた、親子の討論会は、それはそれは見事に充実した内容となりました。涙あり笑いありの、それぞれの魂や生き様が輝く会になりました。これもまた本当にご縁の生む奇跡だったと感じました。
 河野太通管長猊下、本当にありがとうございました。そして皆さまの真剣で純粋な「命」に感謝です。私も、こうした皆さまからのご恩を、世の中に返していけるよう精進いたします。


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