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2011.09.04

ビートルズ 『ヘイ・ジュード』 とヴィヴァルディ・バッハ・志村正彦

 ートルズ人気投票「ヘイ・ジュード」1位というニュースが。なるほど日本人には特に人気のあるビートルズ・ナンバーですね。
 ビートルズのベスト1を選ぶのは非常に難しいわけですが、とりあえずワタクシとしては1位にはしませんね。特別上位に食い込むかというと、それも微妙です。というか、ビートルズのランキングをするのは無理ですし、ベスト20などを選ぶのも非常に困難です。私にとっては全ての音楽の中で別格なのです。
 この曲を初めて意識的に聴いたのは小学校5年生の時でした。その時の違和感は今でも忘れませんし、正直消え去っていません。
 その違和感の原因はいくつかあります。そして、それがそのままこの曲の特徴であり、魅力となっています。
 まず、この曲がクラシック音楽のような和声でできていることです。いちいち細かく示しませんが、いかにもポールらしい「作った」曲という感じがしますね。
 冒頭部分一つとっても、もろにバロック音楽しています。コード進行はヴィヴァルディの有名な四季の中の冬の第2楽章と全く同じです。メロディーの進行はバッハの管弦楽組曲第1番の序曲とかぶっています。ちょっと聴いてみてください。

↓ヴィヴァルディ冬より

↓バッハ管弦楽組曲第1番より

 どうです?面白いでしょう。ポールがどの程度これらの曲を意識していたかは分かりません。しかし、ポールの楽曲全体にヨーロッパ近代音楽の、ある種の「作為性」を感じ取ることができますね。
 ビートルズの魅力の一つは、ポールのようなテクニシャンとしての作曲家と、ジョンのような魂の作曲家が共作、競作してある種の化学変化が生じていることです。そして、そこに絶妙なバランスが生じている。これはもう奇跡としか言いようがありません。
 それから、もう一つの違和感の原因は、サビの転調です。近代西洋音楽的でありながら、ある意味肝心のサビの部分は非常に破格な転調をしています。すなわち、サビが全体の調に対して下属調すなわち5度下(4度上)に転調しているわけです。
 近代西洋音楽から現代のポピュラー音楽に至るまで、特に好まれて使われている音階下降バスという定番を使いながらも、独特な「違和感」を残すのは、この転調のおかげです。ここがポールの天才的なところですね。
 上に載せたヴィヴァルディのラルゴにも下降バスが見られます(下降しきった所での属調への転調も同じ)。そして、後半属調から主調に戻す強引さも、ちょっとヘイ・ジュードに似ている(つまり違和感がある)かもしれません。
 それにしても、ヘイ・ジュードにおけるその強引な転調テクニックはすごいですね(戻しも含めて)。これほど「属七」和音を有効に使ったポピュラー音楽はそんなにありません。考えてみると、属七和音の有効利用もまたバロック期に始まりました。ヘイ・ジュードは(レット・イット・ビーと並んで)バロック音楽なのかもしれませんね。
 そのあたりが当時小学生であって、まだまだバロックやクラシックの「不自然さ」への免疫がなかった私に、違和感を抱かせる原因だったと思われます。なんというか、気恥ずかしいというか、ちょっとした居心地の悪さですね。いい曲なんだけれども、すっと胸に響かなかった。
 それから後半のあの印象的なリフレインですね。あそこもまた属七的、すなわち下属調への強引なエネルギーに満ちたコード進行です。そのしつこさとともに、それこそ破格であり、当時としても今としても画期的な展開であると思います。あれは誰のアイデアでしょうね。ジョージ・マーティンでしょうか。
 まあとにかくポール・マッカートニーという人は、近代西洋音楽の系譜上で「天才」だったということですね。
 さて、最後にもう一つ、日本が世界に誇る天才の作品を一つ。フジファブリックの志村正彦くんは、ポール・マッカートニーとジョン・レノンの両方の才能を持ち合わせていたと感じます。彼の作品(ビートルズとも縁のあるRoger Joseph Manning Jr.との共作ということになっていますが)の中でも、特にビートルズの影響や匂いのする「Chocolate Panic」です。お聴きになって分かるとおり、ヘイ・ジュードの影響も色濃く現れていますね。

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コメント

このチョコレートパニックをアップした者です。

私もよそでブログをしています。
記事に貼り付けたくて、フジをいくつかアップしました。

志村くんの命日に、こんなマニアックな記事に辿り着けて嬉しいです。

私はいま、42才です。
中学の頃、夜、ビートルズのラジオを聴くのが大好きでした。だからと言って詳しくはありませんが。。笑

また来ます。


面白かった!!!ありがとう!

投稿: きみこ | 2011.12.24 17:57

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