『世界初中継 宇宙の渚』 (NHKスペシャル)
いろいろと考えさせられる番組でした。
少し前なら、実際に宇宙に行った宇宙飛行士しか味わうことのできなかったこの感動を、こうして世界中の人々とほぼリアルタイムに共有できる。
こういう時だからこそ、私たちの地球を外側から客観的に見ることは大切です。それがこうして可能になったのは、科学技術のおかげです。やはり科学にも功罪があるのだなあと感じました。
たとえばインターネットもそうですが、人々の心をつなぐための科学は大いにけっこうだと思います。
オーロラや流星、スプライトも素晴らしかった。でも、やっぱり一番心に迫ったのは、私たちの日本列島の姿でした。
甲府盆地の灯が見えていますね。あの南側に私の住む富士山があるのだなあ。月並みな言い方ですが、自分なんて本当にちっぽけな存在なんだなあと思いました。
「渚」という言葉、よく考えましたね。地球と宇宙は緩やかにつながり、互いに干渉し合っているということをうまく表現していると思います。
厳密に言えば、「渚」は陸と海の交わるゾーンを表す言葉ですので、「地球と宇宙の渚」というのが正しいのかもしれませんが。
石巻付近の漁火が鮮明に映し出されていましたね。まさに渚で起きた自然災害を思い出さずにはいられませんでした。
同様に、今は静かにせめぎ合っている宇宙の渚も、今後どのような想定外に襲われるかわかりません。やはり私たち人間のスケールの小さいこと、特に脳内で考え得るコトの微小さを常に意識しなければなりませんね。微笑なコトを何十億集めたところでたかが知れています。そして、その補集合全てが「モノ」です。
それこそがお釈迦様のおっしゃった「空」であると思います。そうしますと、「空(クウ)」が「空(ソラ)」に通じ、「空(ウツ=宇宙)」につながるのは、偶然かもしれませんが面白いことです。
ちなみに「宇宙」は古訓では「あめのした」と読み、今言う宇宙ではなく、地上世界すなわち地球のことを表しました。それは矛盾ということではなく、おそらく神世においては、今私たちが科学技術をもってして外から地球を見ているように、意識の中で自由に宇宙と行き来していたのではないかと思います。だから、地球は宇宙の一部であり、あるいは地球は宇宙の雛型であるということを知っていたのではないでしょうか。
番組の美しい映像を見ながら、時空を超えてそんなことを考えました。
そう、これこそが「美」の原点なのかなとも思いましたね。あの生中継を見た全ての人が「美しい」と思ったことでしょう。醜いとか汚いなんて思った地球人はいないでしょう。
そうすると、私たちが地上で求める「美」、つまり芸術の類は、やはり宇宙の雛型の表現なのだということが分かりますね。究極の美、芸術は宇宙にあり。地球もまたそれなり。
私たち人間も、宇宙の一部として、地球の一部として美しく生きなければなりませんね。
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