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2011.09.15

『教育と魂の開発-東洋学的考察』 桑原昭吉 (文芸社)

83554066_2 日はある講演会で桑原昭吉先生の貴重なお話を聴く機会を得ました。そして懇親会ではお隣に座らせていただき、そこでもまた素晴らしいお話をうかがうことができました。
 昭和15年生まれの桑原先生、なにしろお元気でいらして驚きました。持っていらっしゃる魂魄のエネルギー量が違う。さすが毎朝2時間の禊を何十年も続けていらっしゃるだけのことはあります。「器」が違うので、当然中身が違う。
 そう、先生も講演の中でおっしゃっていました。いいお猪口で飲む酒がうまくて量が増えてしまうと(笑)。結局それですね。人間も立派な器になれば、自然と中身の魂魄も上級なものになる。禊や潔斎、座禅というものは、そういうためにするものなのでしょう。
 桑原先生は、ロサンゼルスオリンピックで体操個人金メダルを獲った具志堅幸司さんの恩師であり、その偉業を裏で支えたことで有名な方です。
 先生は現在でも清風高校その他で教員として教壇に立たれているとのこと。教師生活50年ですか!本当に私にとっては大先輩です。
 清風高校は真言宗系の学校ですが、校内に神社があったりして、まさに日本的な宗教心を大切にした教育を実践しているようですね。
 先生は信仰の人としての一面でも尊敬すべき方です。人生、特に教育には「愛と希望と信仰」が必要だという信念には、私も同意します。
 もちろん、「信仰」というのは何か特定の宗教や神を信じろという意味ではありません。先生の言う「信仰」の基底には、「サムシンググレートへの畏敬の念」「人間としての謙虚さ」「生かされていることの認識」というものが太く流れています。
 桑原先生の「信仰」の中心にある出口王仁三郎はもちろん、「生かされている自分」という認識は、もちろん禅的な考えにも通底しますから、そういう意味でも私は先生のおっしゃる一言一言にうなずかざるを得ませんでした。
 特に先生独自の研究による、心(魂)と体の経絡の関係については、非常に面白く感じました。今、私たちは精神的な領域と肉体的な領域を分けることばかり考えています。近代、現代とはまさにそういう時代だったのでしょう。
 どちらかに偏ると、カウンターの力が働いて他方にまた偏る、といったような時代が続いていましたよね。そういう中で、先生のように、その両面が実は全くいっしょであって、あるいはそれを超えた自然界の営み、たとえば朝昼夕夜や四季の循環、天体の運行なども同じであるという考え方は、古くて新しいものだと感じました。
 本来なら教育はそういうスケールに根ざすべきだと思います。様々なモノのコト化、つまり「細分化」や「専門化」は大人になればいやというほど体験しなければならないわけですから。
 私も、私立の、それも仏教に根ざした学校の教員として、桑原先生を見習って行きたいと心から思いました。
 それにしても、あの世代の方々の元気さ、ある意味での破天荒さ(私たち夫婦はそれをバカボンと呼ぶ…笑)はすごいですね。すさまじい密度の「時代」を生きていらしたからでしょう。私のような高度経済成長後の日本に育ってしまった人間にとっては、本当に憧れです。信仰心すら湧いてきますね。
 しかし、今、世の中は再び密度の高い変転の時代を迎えようとしています。今日の別の方との話の中にもありましたが、来年はいろいろな意味で大変な年になりそうです。
 こういう時こそ、激動の時代を生きてこられた諸先輩方の体験から来る重い言葉に耳を傾けたいと思います。

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コメント

山口先生こんばんわ。

私は以前から先生の記事を読ませていただいていたのですが、まさか桑原先生と清風高校の話題が出てくるとは思っていませんでした。

実は私は今清風高校の3年生で、桑原先生は私が中学1年生の時の世界史の教科担当の先生でいらっしゃったのです。

桑原先生は本当に素敵な方で、かなりお年を召されてますが毎日お元気に私たち生徒をご指導して下さいます。


もともと山口先生の記事を読み始めたのはフジファブリックがきっかけでしたので、そう考えると本当に不思議なご縁です。

P.S.
以前にSTARのFM音源をお送りさせていただいたのも私です。先生の記事が読めて嬉しかったです。ありがとうございました。

投稿: しゆう | 2011.09.17 00:17

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