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2011.08.03

『こんなもんじゃ―山崎方代歌集』 山崎方代 (文藝春秋社)

4163219706 日は丸一日、来年度から全面実施される中学新教育課程の研修会でした。私は国語ではなく、なぜか音楽と総合の分科会に出席。その内容についても、研修自体についても言いたいことだらけですが、ここで書いてもしかたないので割愛しますね。国語に出ていたらもっとイライラしたでしょう(苦笑)。
 音楽も総合も、それから昨日行われた数学も特別活動もとにかく「言語活動」という話になりました。それって国語でやれってことですか?いやそうじゃないみたいです。それぞれの教科で「言語活動」をしっかりやれと。おそらく現在の教育界にバカみたいに流行しているPISA型学力の悪影響でそういう物言いになるんでしょうね。
 そんなことはPISA以前のことであって、今さら号令だけかけてもしかたないのです。ワタクシ的にはですね、極論すれば、芸術科目「音楽」「美術」などと並べて「文学」を作り、創作と鑑賞はそちらでやるべき、国語はがっちりと「日本語力=論理力」を鍛える内容にせよ!ということなんですよ。
 で、本校ではその辺はしっかり分けて考えていて、本当の国語力の部分は出口汪先生の「論理エンジン」でガッチリ力をつけてあげているわけです。
 おっと、結局そういう核心の部分を書いてしまった。今日は、「鑑賞」「創作」、つまり「文学」の話だった(もちろん、「文学」のベースになるのは「日本語力」なんですが)。
 さてさて、文学の話。甲府にある会場に行く途中、少し時間があったので寄り道して時間をつぶしました。旧中道町の右左口…なんと読むか分かりますか?普通に読んではいけません。なんと「うばぐち」です。なぜ…という部分を語り出すと長くなるので後日。
 ここ右左口は歌人山崎方代のふるさとです。歌人山崎方代については説明するまでもないでしょう。山梨を代表する文化人です。昨日話に出た山頭火とよく並んで評される人ですね。たしかに飄々と自然体で生きながら、だからこそ強い孤独感を抱いていた表現者です。
 歌を紹介しましょうか。縦書きで表示されるでしょうか。選ぶのが難しいので、有名歌人の皆さんのチョイスをお借りします。時節的に地震に関するものから行きましょうか。この地震の表現からして「やられた!」ですよね。

ことことと小さな地震ないが表からはいって裏へ抜けてゆきたり

六十になればなればとくり返し六十を越えてしまえり

焼酎の酔のさめつつうかがえばなべてあの世のかげばかりなり

うつし世の闇にむかっておおけなく山崎方代と呼んでみにけり

ふるさとの右左口郷うばぐちむらは骨壷の底にゆられてわがかえる村

沈黙をつづけて来たる石ゆえに石の笑いはとどまらぬなり

わからなくなれば夜露に垂れさがる黒きのれんを分けて出でゆく

おのずからもれ出る嘘のかなしみがすべてでもあるお許しあれよ

ちちははの墓のうしろに方代の名前も彫りて朱を入れている

春を惜しむこの国の人幾重にも幾重にも上野の山とりまけり

こんなにも湯呑茶碗はあたたかくしどろもどろに吾はおるなり

真っ黒く澄みたる馬の目の中に釜無川が流れている

欄外の人物として生きて来た夏は酢蛸を召し上がれ

私が死んでしまえばわたくしの心の父はどうなるのだろう

一度だけ本当の恋がありまして南天の実が知っております

寒雀丸焼きにしてぎしぎしと頭も骨もかみしめておる

あさなあさな廻って行くとぜんまいは五月の空をおし上げている

さいわいは空の土瓶に問いかけるゆとりのようなもののようなり

羽白き鴉がさわぐ空の下女風太郎はみごもりにけり

息絶えし胸の上にて水筒の水がごぽりと音あげにけり

本当に泣いているのだ暗がりに威儀を正してめし食べている

そこだけが黄昏れていて一本の指が歩いてゆくではないか

袂より木瓜の実ひとつとり出してあなたの白い手にのせてやる

茶碗の底に梅干の種二つ並びおるああこれが愛なのだ

せきれいの白き糞より一条の湯気たちのぼるとき祈りなし

 う〜ん、こうして列挙しているうちに何も言いたくなくなった。「鑑賞」ってなんなんだ?「文学」なんて科目いらんわ(苦笑)。これもまた単なる日本語力なのかもしれない。
 最後に恥ずかしながら、右左口で理屈抜きに詠んだワタクシの歌を一首。まったくの蛇足ですが。

方代と思へば寄り来る野良猫とゆらり歩まむ右左口の坂

(この記事における作品の引用は私なりの考えに基づいたものです。本記事において著作権を侵害されたという方がおられましたらメールにてご連絡ください)

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コメント

論理力の重要性に同意します。
是非とも義務教育の時点で論理力を学ばせて欲しいです!!
僕は大学の選択授業でたまたま論理力、ロジックの組み立て方を「偶然」学びました。
これがなかったら今の自分の考え方というか、思考性はなかったと思うとぞっとします。
それほどこれを学ぶ前と後では劇的な変化が自分の中にあったからです。
そして、それは同時に日本語の素晴らしさを学ぶ機会にもなりました。
この時からなぜ国語は曖昧というか、テストや試験も曖昧なもやもやしたように感じてしまうのか自分の中で納得できました。
僕は理系の大学にいたにも関わらず、お恥ずかしい話ですが、その時まで論理性の重要さを本当に分かっていませんでした。大学の間に学ぶ事ができてよかったです。だから、本当に論理構築の仕方を今の学生たちに学んでほしいものです。
論理エンジンは庵主さんのブログで知る事ができました。ありがとうございます。
また、ダイヤモンド社のバーバラ・ミント氏の考える技術・書く技術と、斉藤嘉則氏の問題解決プロフェッショナルも大変勉強になりましたのでおすすめです。

投稿: ニキータ | 2011.08.09 20:23

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