『和』の精神とは…その1
今日は明治記念館において「メキキの会15周年祝賀会」に参加いたしました。
真の志を持った者同士の気脈(ネットワーク)を形成することが目的であって、現代的な意味でのメリット(それはほとんど即物的即時的経済上のメリット)が何もないこの会が、こうして長く続き、ますますその会員を増やしているのは、実に面白いことです。
いわゆる損得勘定抜きでも、現代社会においてこうして濃密な人間関係というのが成立しうるのだという壮大な実験場でもあります。
今回のテーマは「和の精神」。基調発題として船井総研の船井勝仁さんが「和の精神の基本はまず自律」というお話をされました。そして、出口光会長が大震災を体験した私たちが創り出すべき「大和(だいわ)」の国について語り、その一つの道具である「新世代ソーシャルネットワーク」を発表しました。
またその間にメキキの特徴の一つであるテーブルシェア、すなわち各テーブルでの一人一人の発表がありました。テーマはもちろん「和」です。
私もいろいろな分野からお話ができるなと思ったのですが、ほとんど初めての方々でしたし、実社会における経験という意味では、教師である私は何分心もとない存在なので、あえて外見から入りやすく(?)仏教の方からお話させていただきました。
今日はそれをも含めて、私なりの「和」観を紹介しましょう。私は案外にも実証主義的な人間なので、どちらかというと「歴史的事実」のお話になると思います。
「和」について語る時、案外忘れがちなことがあります。それは「和」という言葉が漢語であるという事実です。
「和」というといかにも「日本」「ヤマト」という感じがしますよね。しかし、これって実は日本語ではないのです。外来語です。中国語ですね。
つまり、「和」にあたる言葉というのは日本語(大和言葉)にはなかったのです。このことが何を意味するか。実はここがとても重要です。
言語というのは「意識」そのものです。ワタクシのモノ・コト論で言えば、脳内で処理された概念「コト」の記号であります。
ということは、「和」という言葉が使われる以前には、「和」という概念はなかった、意識されていなかったということです。
では、いつ「和」という言葉が生まれたのか。すなわち「和」の内容が意識化されたのか。
それは皆さんご存知の「十七条の憲法」においてです。つまり、西暦604年、聖徳太子が「為貴以和」と記してからなのです。
このことがどういう意味を持つのでしょうか。聖徳太子はご存知のように渡来系の人物だと言われています。実際当時の政治の中枢は当時の先進国である朝鮮半島の方々がほとんどを占めていました。そして、もちろん彼らは先進思想である「仏教」を日本に持ち込みました。
ここで大切なことを確認しておきましょう。彼ら外来の民は日本を占領しにきたわけではありません。圧倒的な文化力、生産力、武力を誇っていたわけですから、当然占領や植民地化という発想であってもおかしくなかったはずです。しかし、結果として全くそのようなことにはなりませんでした。
いや、実質的には占領ではないのかという方もいらっしゃるかもしれませんが、よく考えてみてください。占領や植民地化の第一歩は言語の強制・統制です。しかし、当時の都でも地方でも、話されていたのは立派な「大和言葉」でした。つまり、外国から来た政治の中枢部がわざわざ彼らにとっての自国語を話さず、彼らにとっての外国語であるはずの「日本語」を勉強して使用したのです。
これは世界史的にも非常に珍しい状況です。当時の都の人口の7割以上が渡来人だったとも言われています。普通そういう状況なら、当時朝鮮半島で話されていた言葉が標準語となっていてもおかしくありませんよね。
では、なぜ日本語は消えなかったのか。それは私たちが想像してみるしかありません。
私たちがある程度の優位性を持ってある土地に行ったとしましょう。その土地の言葉を勉強して話したり書いたりできるようになるには、自分がどういう気持ちである必要があるでしょうか。
そうです。親しみはもちろん、ある種の「敬意」が必要ですよね。言葉の面で「郷に入りては郷に従う」という状況になるということは、文化的、人間的な意味で相手に優位性を認めるということにほかなりません。
実はそのような事実、そして外来の彼らが持ち込んだ世界的な思想である「仏教」との親和性こそが、「和」の精神の根幹となっていると、私は感じているのです。(その2に続く)
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