« 『賢いスポーツ少年を育てる』 永井洋一 (大修館書店) | トップページ | 『没後150年 歌川国芳展 江戸の奇才浮世絵師』 (静岡市立美術館) »

2011.07.30

リニアモーターカーという「愚かな夢」が現実に

110115_1 震災後、いつか書こうと思っていたことを、この前週刊朝日に書かれてしまいました。そういう意味では少し遅ればせとなってしまいましたが、ずっと思っていたことを書かせていただきます。
 幼い頃、リニアモーターカーに憧れを持っていました。科学雑誌に夢の超特急として紹介されてきたからです。私と東海道新幹線は同級生ですから、少年としてその先の技術に憧れるのは当然ですね。
 レールの上を走るのではなく、空中に浮上して走るなんて、まさに少年の心を踊らせるものでした。
 今考えると、そうした雑誌などに、原子力発電についても書かれていましたよね。夢の技術としての原子力。もちろん「鉄腕アトム」がはたした役割も見逃せません。
 そんな少年の夢の一つ原発は、大人になった私たちを大きく裏切ることとなりました。
 その夢の技術は本当に必要だったのか。原発抜きの電力行政はあり得なかったのか。
 たしかにあの頃は深刻なオイルショックがあって、石油に頼らないエネルギー政策が急務とされていました。今なら太陽光発電などの代替発電システムを考えられますが、当時はそこまでの技術がなかったのも事実です。原子力(核力)は世界的に見れば、かなり歴史のある科学技術でしたから、あの時の国民の決断をただちに糾弾することはできません。
 ただそれを無反省、無批判に続けてきたこと、そして「裏の危険」が「表の利権」を生んできたことに問題があるのです。
 そして、もう一つの「夢」であるリニアモーターカー。これはどうなんでしょうか。
 私はリニアモーターカーこそ、原発以上の「愚」であると思うようになりました。
 まず、オイルショック時の原発のような、喫緊の「必要」があるのかということ。これは絶対に「ない」と言えます。
 現行の東海道新幹線の稼働率が下がり続け、空席が目立つ中で、はたして新たな中央新幹線が必要なのか。実際に国民の97%がリニアは必要ないと感じているんです。当時の原発に対する世論の比ではありません。
 時速500キロで地中を走行する列車に誰が乗るのでしょうか。速度が高ければ駅は多く作れません。いちいち減速、加速していては、超特急の意味がなくなるからです。だったらより速い従来の飛行機で移動した方がいいでしょう。運賃が半額になるなら話は別ですが、おそらくそうはなりません。
 なぜなら、この一大アホプロジェクトの総開発費と総工費は合わせて10兆円にはなるからです。そして、1列車あたりの電力使用料は現行新幹線の3倍とも言われています。また、根本的な構造上、現行の新幹線よりもかなり少ない乗客数になります。
 いったいこれで何をしようとしているのでしょうか。理解できません。
 また、今回決定した南アルプス貫通ルートに恐ろしさを感じない人はいないでしょう。糸魚川静岡構造線と中央構造線という2大メガ断層帯を突っ切って地下40メートルを走る超高速列車。想像するだけで恐ろしいことです。特に両構造帯は東北の巨大地震以来活性化の傾向を呈しています。
 ご存知のように、地震動は地表よりも地下の方が小さいので、ある程度までは地下の方が安全だという面もあるのですが、なにしろ構造帯周辺に発生する地震は10メートル規模で動く新たな断層を生む可能性を持っています。地下トンネルが一気にその規模で破断されたらどうなるか、子どもでも想像できると思います。
 原発もそうだったのですが、結局「少年の夢」というある意味「愚かな夢」を、大人になりきれない「永遠の少年」たる「科学者」や「政治家」たちが実現しようとしているとも言えますね。
 私が少年の頃には「末は博士か大臣か」などと言われました。結局どっちにもなれませんでしたが(苦笑)。ある意味よかったかもしれません。少年の夢をそのまま持ち続けることは、愚かなまま権力を持つということになるからです。
 私の住む地域には「リニア実験線」があります。閑静な山里に突如現れる化け物のような構造物。違和感を抱かずにはいられません。
 先日も甲府盆地の方に行った際、「リニア」という表示をしたトラックが無数に土を運んでいました。私たちが反対するいとまもなく、「夢の超特急」「日本を元気にする」リニアモーターカーという「愚」が着々と動いています。
 脱電力、節電の流れに逆行し、原子力発電所を増設する理由にもなりかねないリニア。工費はぜひとも東北の復興に回してもらいたい。こう思うのは私だけではないでしょう。
 総延長の8割近くがトンネルになると言います。山に穴を空けるということの宗教的な意味も考えねばなりません。特に、南アルプス。有史以来誰もが無言で避け、迂回してきたあの山脈に大穴を空ける時、何かが起こるような気がしてなりません。


|

« 『賢いスポーツ少年を育てる』 永井洋一 (大修館書店) | トップページ | 『没後150年 歌川国芳展 江戸の奇才浮世絵師』 (静岡市立美術館) »

ニュース」カテゴリの記事

旅行・地域」カテゴリの記事

歴史・宗教」カテゴリの記事

自然・科学」カテゴリの記事

コメント

初コメントです。

記事拝見致しました。

真面目な意見
もう必要ないです。

南アルプスに穴を開けるべからず。

リニアは莫大な金とエネルギーの無駄遣いです。

環境破壊の道具であるリニアを後世に残してはいけません。

投稿: I love train | 2015.09.19 19:42

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/55913/52352240

この記事へのトラックバック一覧です: リニアモーターカーという「愚かな夢」が現実に:

« 『賢いスポーツ少年を育てる』 永井洋一 (大修館書店) | トップページ | 『没後150年 歌川国芳展 江戸の奇才浮世絵師』 (静岡市立美術館) »