「歌」とは…そして、なぜ音楽をやるのか
武久源造 『バルダキン・オルガンの世界』
本郷教会でのバッハカンタータ演奏会、いや演奏会というよりも「礼拝」ですね、参加させていただいた私も大変に感動いたしました。やはりああいう場所でああいう形で演奏すべきものです。
それにしても、まあなんでまた…そう、またやらかしてしまいました。というか、やられてしまいました。
午後富士山から東京へ車で向かったのですが、いつも間違えない道をなぜか間違えて、気がついたら三鷹の禅林寺前。あららまた導かれてきてしまった。ということで、ついでに太宰治の墓参りをしました。
皆さん、覚えていらっしゃいますか?太宰の墓参→演奏会と言えばこれ。
「参った」…太宰治のいたずら(!?)
エロイカ本番演奏中「弓が折れる」という信じられない事態が起きた奇跡の(?)一日でした。
で、今回もまたやられましたよ。あり得ませんよ。本番チューニング中にヴィオラの弦が切れた…のではなく、「抜けた」!テールピースの穴に引っ掛けてあって、ずっと大丈夫だったのになんで本番中に…。
おかげでまた皆様を待たせることに(苦笑)。弓の時もスペアをたまたま持っていたので、なんとかしのげましたし、今回も切れちゃったのならスペアがないから諦めるしかなかったのですが、「抜けた」だけなのでなんとかなっちゃうわけですよね。だから、「いたずら」なんですよ。
まったく不思議というか、いったい太宰は私にどんな恨みがあるのでしょう(笑)。まあとにかくいろいろな意味で太宰とは縁があるのは事実です。まったくぅ。
さて、そんなこんなで演奏会は無事(?)終了。打ち上げとなり、皆さんで盛り上がっていました。
宴のたけなわの頃、登場しました!チェンバロ・オルガン奏者であり作曲家である武久源造さんです。
前回の打ち上げの時、初めてお話させてもらい、大変に面白かったので、あれ?今日はいらっしゃらないのかとひそかに落胆していた(皆さんは安心していた)ところに、遅れて登場。
今回の指揮者である淡野太郎さんのお母様淡野弓子さんの歌の伴奏をなさってきたそうで、弓子さんも一緒に合流いたしました。お弟子さんの山口眞理子さんもいらっしゃいます。
さあて、そこからは恒例の武久節満開でした。まあ面白いですね。とっても刺激的な話でした。
今、「万葉集」に曲をつけているということでした。私はたまたま最近短歌をやっているので、「当時の歌はまさに歌で、テキスト(文字)がない代わりにメロディーで語り(歌い)継がれた」という話をしました。そう、ホントは短歌も節をつけて作るべきなんですよ。
ですから、今彼がやっている万葉集の歌に節をつけるというのは実に理にかなった行為なのです。そして、オリジナルの(奈良時代の)メロディーが記録されない分、その時代時代に変わってもいいものなので、現代において彼が西洋の音楽理論で作ってもなんら問題ないわけです。
あと面白かったのは、武久さんや淡野さんらが「なんでドミソのミ(3度音)」を忘れた(気づかなかった)時代があったのかと、いわば近代西洋的な視点で不思議がっていたのに対して、私は得意の日本音楽的(実はグローバル)な視点で、「いや、ドミソのミこそ不協和音、不快和音だった」という話で対抗(?)したところですかね。いろいろな視点があると実に豊かな議論になります。
そして、最後には究極の問い。「なんで音楽をやるのか。やっているか」というそもそも論になりました。これは音楽に携わる者ならば、本当なら一度は必ず考えなければならない問いですよね。
皆さんそれぞれ納得のいく答を提示しておられました中、私は概略次のような解答をしました。
まず日本音楽の視点からすると、もともとは「招霊」のため。「もののね」ですね。これは西洋でも中世まではそのようなものだったということです。
そして、近代西洋音楽では、宇宙の大法則を感じるため。これは、「西洋音楽史」にも書いてあったように、「宗教なき時代の(疑似)宗教」としての音楽、「神なき時代の(疑似)神」としての音楽ということで言えば、まあ神との一体化ですから、これもまた「招霊」とも言えるのですが。
さらに演奏者としては、こんな話をしました。演奏者との一体化です。いきなり抱きついたら「セクハラ」になるか、「ホモ」とか言われちゃうじゃないですか。でも、一緒に楽器を演奏したり、歌を歌ったりすることで、疑似的にそういうことが可能になるんです。私はそれが楽しくてやっている部分があります。
ちなみにロックだと「もてたい」…それだけですね(笑)。
まあ、そんなこんなの話を、それぞれプロ、アマいろいろ話したので、とっても勉強になりました。楽しい楽しい夜を過ごすことができました。ありがとうございます。
ちなみに一番上の画像で紹介した武久さんの新作レコーディング。これは非常にいいですよ。武久さん作曲の小品がまたステキです。ぜひぜひお聴きください。
Amazon バルダキン・オルガンの世界
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