原発やめますか、続けますか…
「(脱原発論について)あれだけ大きなアクシデントがあったので、集団ヒステリー状態になるのは心情としては分かる」
石原伸晃幹事長のこの発言が物議を醸しています。それはそうでしょう。私はこのニュースが流れてすぐにこうつぶやきました。
「客観的に見れば石原幹事長の分析は正しいが、使うべきでない言葉を使ってしまったのは間違い。なぜ今の政治家たちは言葉を選べないのだろう。他者意識が低いのだろうか。頭というより心の中の回路が一つ欠落して短絡している感じがする」
ここで「分析は正しい」としたのは、石原さんが原子力に代替する自然エネルギーへの転換には数十年かかるという常識を踏まえたものだと判断したからです。
基本脱原発論者である私から見ても、現在の一部の感情と発言には冷静さが欠けていると感じます。
しかし、やっぱり政権奪回を狙う最大野党の幹事長がこの言葉を使ってしまうのはどうでしょうか。私が幹事長だったら、一瞬心の中でそう思ってしまっても絶対に口に出しません。そういう「安全回路」はどこに行ってしまったのでしょうか。もしかして、そういう日本的な装置自体、経済的な効率論に駆逐されてしまったのでしょうか。
ただ、一方でこういうことも言えると思います。
「ヒステリー」と言われて「ヒステリック」に反応するのを「ヒステリー」という。
特に、それまで何も問題意識を持たずに過ごしてきたのに、コトが起きて突然極端な反対論者になったりするのは恥ずかしいことです。
イタリアの国民投票で「原発不採用」が決まったとして、それをうらやましがるのは結構ですが、じゃあ日本でも国民投票してさっさと全部停止させよ!というのは、さすがに目先しか見ていない「ヒステリー」状態ですね。
思えば、私がまるで予言者扱いされる原因となったあの「民主党圧勝、政権交代へ…どこかおかしくないですか?」という記事で憂慮した「集団気分」も、石原流に言えば「集団ヒステリー」ということになるかもしれません。
というわけで、我々はどんな考えをしようと、どんな立場をとろうと、冷静で論理的でありたいですね。「ヒステリー」とまでは言いませんが、私は今の国民は「パニック」に陥っていると感じます。
脱原発はもちろん理想です。しかし、そこまでの道のりが非常に険しいという現実を示すいい資料があります。
「原発やめますか、続けますか
史上空前の大アンケート 一流企業トップ100人、有識者50人に聞く」
ご覧になるとよく分かると思いますが、皆さんなんとも歯切れが悪い回答をなさっています。特に企業は死活問題ですから、すんなり「廃止」と言えるはずがありません。ある意味では冷静に論理的に現実的に考えての回答、あるいは無回答です。
これに対して、一般生活の中で電力を享受している程度の我々が、「もっとはっきりモノを言え」とか「企業こそ責任を感じろ」とか「結局目先の利益しか考えていないのか」と、それこそヒステリックになるのは簡単なことです。
しかし、こういう一大事を実現するためには、多様な視点を持ち、いろいろな立場に立って、総合的に判断して、なるべく多数が納得する形、すなわち想定されるリスクを最低限にする長期的な計画性をもって臨む必要があります。
そして、本来それをプロデュースし、ディレクトし、コンダクトするのが政治家であるべきなのです。そういう意味では政治家は教育者でなくてはなりません。
ついこの前も書きましたが、我々教育の世界では、何か問題が発生した時のみ、生徒や保護者や先生自身の成長を促すことができると考えます。
今まさに日本は国難という「成長の機会」に直面しています。ピンチをチャンスにできるか。大難を小難にできるか。国民全てが試されているとも言えます。
そんな国民を正しい方向に導く教育者たる政治家は現れないのでしょうか。
いずれにせよ、我々国民は「原発やめますか、続けますか」という問いに対する答えを、それぞれ冷静に考えてみるべきでしょう。冷静に考えれば考えるほど、あの選択肢の中から答えを選ぶのが難しいことが分かると思います。それ以前に、この問い自体、現在においては回答不可能な命題であることが分かるのでは。
「現在の自分」から自由になるのはとても難しいことですが、それこそが今必要な第一歩なのかもしれません。
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コメント
昨今、政治家という人種は一般的な国民とはかけ離れた思考回路を持つのだと言うことが証明された感がありますね。選挙システムが悪いのでしょうか? ああいう連中しか政治家になれないのは。
>「ヒステリー」と言われて「ヒステリック」に反応するのを「ヒステリー」という。
ヒステリーにしては日本人の反応は大人し過ぎませんか?この期に及んでも暴動が起きないなんて、とても理性的な国民としか思えません。
> 特に、それまで何も問題意識を持たずに過ごしてきたのに、コトが起きて突然極端な反対論者になったりするのは恥ずかしいことです。
恥ずかしいでしょうか? 今回の災害をきっかけに問題意識を持ったとして何がいけないんです? 遅いことは無いですよ。そもそも、今まで反対論者が意見を言ったところで巨大な力で封殺されてきたんですよ。今、大声を出さずしていつ出すのでしょうか?
>「民主党圧勝、政権交代へ…どこかおかしくないですか?」
あの時の選挙で政権交代以外の選択が、果たして日本国民にあり得たのでしょうか? そこに至るまでに様々な地方選挙で自民党は負け続けていましたが、その国民のシグナルに自民党は全く無頓着でした。唯一、片山虎之助さんくらいです、
「国民は本気で民主党に政権を取らそうなんて考えていない。自民党は今、お灸を据えられているのだ。その声(自民党しっかりしろ!)に真面目に応えなければ、本当に大変なことになる。」
みたいなことを言ってたのは。
自民党が信頼を取り戻すチャンスは何度もあったはずでしたが、一向に体質を改善しようとしませんでした。あの衆院選挙で自民党が大敗したのは、既得権益を手放すことが出来ず、政権にあぐらをかいて、国民にそっぽを向かれた当然の帰結です。
ところで、原発止めても問題ないみたいですよ。そりゃ、「さいせいかのうえねるぎー」なんて眠たいこと言い出したらいつまでも止められないですが。現に休止していた火力・水力発電などを再起動させただけで、何とか間に合っている現状は一体何なのでしょう。
投稿: LUKE | 2011.06.16 22:17