『薬を使わず治すうつ みやじっち先生のメンタルセラピー』 宮島賢也 (ルック)
最近お会いした方シリーズ第6弾。薬を使わないうつ治療を実践されている精神科医さんです。
私自身は「うつ」とは縁のない生活をしていますが、仕事柄そういう言葉を使う方々とは多く出会います。
たとえば高校生にもなると「うつ」と診断される生徒もでてきます。昔はそういう診断がなかったからということもありますけれど、「うつ」の生徒はほとんどいなかったと記憶しています。それが最近ずいぶんと増えた。そして、彼らはすぐに心療内科に通い、そして多くの薬を処方される。その様子にどこか違和感を抱いているのもたしかでした。
以前「はじめに言葉ありき…」という記事に書いたとおり、「名づけ」によるマイナス作用というのもあると思います。
しかし、社会自体が快適になるどころかストレスフルになっているのは事実なようで、そんな中で必要以上に悩み苦しみ、結果として気が塞いでしまうということは現実としてあるようです。
そう、私のようないい加減(テキトー)な人間はいいんですよ。自分に甘いから(笑)。まじめな人にとっては、それは辛い時代でしょうね。「自己責任」なんていう言葉を真に受けてしまったら大変でしょう。
著者の宮島先生はご自身も「うつ」を患い、薬による治療なども試みましたがなかなか改善せず、そして、この本にあるような境地にたどりつかれたとのこと。
先日の禅寺での修行僧の方も、少年時代から「まじめに」自分と向き合いすぎて、結局「苦しみ」が蓄積してしまって出家という手段をとったというようなことをおっしゃっていました。
「まじめ」という美徳が報われず、「テキトー」という悪徳が堂々とまかりとおるなんて、まあやっぱり世の中間違っていますよね(苦笑)。
しかし、私はいつも悩める生徒や親などに接する時、その「苦悩」こそが大切な体験であると申します。ある意味うらやましがりさえする。
現在の苦悩自体を否定するわけでなく、それをしっかり受け入れた上で、それが必要なものであることに気づき、そしてそこから一歩でも前に進めるよう話をします。
この本では、まさにそのように「自己肯定」するところから、自らの力によって「うつ」を脱していくことが語られます。それも短い言葉や、かわいいイラストによってですから、誰でもすっとその世界に入っていけます。
どこか宗教的(仏教的)でさえありますね。自分と現象を認める、すなわち、こだわりを捨てて全世界を肯定していくこと。それはお釈迦様の悟りの境地でもあります。
これは、ワタクシ流に言えば「よい加減」に、「適当(適切)」に生きるということです。ですから、うつではないワタクシもこの本を楽しんで読めました。なにしろ、完全に私の生き方を肯定してくれているんですから(笑)。
以前、泉谷閑示さんの『「普通がいい」という病』という名著を紹介しました。あの本も「自己肯定」を説いた内容であったと言えます。
この現代においては、自分を肯定することすら難しいのでしょうか。その原因はなんなのか、しっかり検証した上で、世の中を正しい方向に変えていかねばなりませんね。
薬はもちろん、ある意味対症的な言葉がけや洗脳(?)をしなくてもいい、あるいは「宗教」さえ必要としない「みろくの世」の実現のために、私も宮島先生とともに頑張っていきたいと思います。
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コメント
> 「まじめ」という美徳が報われず、「テキトー」という悪徳が堂々とまかりとおるなんて、まあやっぱり世の中間違っていますよね(苦笑)。
「ブラック・スワン」なんていう映画がありましたが、あの主人公もきっと真面目なんでしょうね。
真面目が美徳かどうかはさておき、自分が望む通りに出来ない、あるいは自分が期待している評価を人が下さないからと言って、拗ねて凹んで体調まで壊すなんて、端から見て迷惑な人間でしかありません。それに較べてダーク・サイド側の「ブラック・スワン」の、なんと能動的なことか! 昔から「悪」はクヨクヨ悩んだりしません。あの「ポジティブさ(笑)」は、真面目で善良な人間も、もう少し見習わなきゃいけませんね。
投稿: LUKE | 2011.06.29 18:23