『奇跡の記憶術』&『「論理力」短期集中講座』 出口汪 (フォレスト出版)
先日お会いした方シリーズ第4弾。出口汪さんの本です。
出口汪さんとは非常に不思議なご縁がありまして、最近は時々お会いしてお話しさせていただけるようになりました。
出口さんには「カリスマ予備校講師」「現代文の神様」というイメージがありますが、実はもっともっと大きなスケールでものをお考えの方です。本当に世の中を変えたい、皆を幸せにしたい、世界を平和にしたい、そういうことをベースに様々な活動をしておられます。
ご自身は最近まであまり意識されなかった、いやあえて避けていたとおっしゃりますが、汪さんの思想には曽祖父である出口王仁三郎の影響、いやいや、血が色濃く反映していると感じます。
そう、今回も私はその話をさせていただいたんです。王仁三郎の最重要視する「言霊(コトタマ)」という概念ですが、これってワタクシの「モノ・コト論」で言いますと、「コト」は「内部・概念・人為・想定内」など人間が認知し処理した情報や存在を表す語です。それは当然「言語」や「論理」と言い換えてもよい。そして、「タマ」は「エネルギー」を表しますから、まさに「論理力」ということになりますよね。
そうした脳内の情報の整理のしかた、つまり「コト」の収納方法が「記憶」に当たると思います。ですから、出口先生がこれらの著書で、「論理」と「理解」と「記憶」を結びつけているのは、ある意味では当然です。
しかし、その「当然」のことが全く意識されない、あるいは習得されないのが、今の日本の現実です。情緒的・感情的な言葉が跋扈し、人々は一知半解のまま、大切なことを忘れて行く…そんな日本の窮状を憂えて、その当たり前のことをシステム化しよう、そしてそれを教育界に、さらには社会全体に拡げようとしているのが、出口汪先生なのです。
正直なところ、こうした間違った日本語の世界を作ってしまったのは、私たち学校の国語科の教員の責任です。いつごろからなのでしょうかね、情緒的な文学鑑賞と表現に偏った学習が蔓延してしまったのは。
私はいつも言っています。今のような文学鑑賞の授業は「芸術科目」として行なってほしいと思います。音読も感想文も創作も、音楽や美術の表現や鑑賞と表現と同じ次元でやってもらいたい。それはそれで大切だと思います。
まあ、考えようによってはですね、他の教科があまりに「丸暗記」に偏ってきたので、それとのバランスを取るために、異様なほどに「暗記ではない」情緒的・感性的な「国語」という教科が出来上がったのかもしれませんが。
しかし、本来の「国語=日本語」の授業は、出口先生のおっしゃるように、「論理=言語=他者意識」をしっかり教えないといけない。それが正しいコミュニケーションや社会活動の基本となるに違いないからです。
私が比較的早く(20年以上前に)出口先生のお考えに共感したのは、やはり恩師大村はま先生の授業を受けていたからだと思います。大村先生の授業は、今思えば徹底的に「論理的」でした。「国語教育の神様」というと、一般的には情緒的に豊かな授業をされたと思われがちですが、実際は全く逆でした。どちらかというと冷たいと感じるまでに客観的な活動を要求するものでした。
そう考えると、こうして大村先生と出口先生というお二人の巨匠の教えとお人柄に直接触れることができた私は、国語教師として非常に幸運だったと言えましょう。もちろん、その分責任も大きいと思いますが。
数ヶ月前…そうだ、ちょうどあの震災の日でした。東大を卒業したけれども、教員になりたくて別の大学で勉強を始めた知り合いと話しました。彼がこの「奇跡の記憶術」に書かれていることと同じことを言っていたのが印象に残っています。
「人間の脳は忘れるようにできている」「自分の脳を信用していない」「忘れること前提に学習計画を立てる」などなど。
彼は本来賢い人間なので、こういう「当たり前」のことに自分で気づくことができたのでしょう。私たち凡人は、どうしても現実から逃避するために(つまり怠惰なだけなのですが)、その「当たり前」から逃げてしまいます。学校の先生もその「当たり前」のことを忘れて、ただただ「覚えろ」と言ってしまいがちです。
そういう「当たり前」が「奇跡」や「驚異」になってしまうところが、この日本という国の異常事態を物語っているのかもしれませんね。
私もご縁をいただいた者です。できるかぎり、出口先生のお手伝いをしてゆければと思います。恩返しの意味も含めまして。
出口先生、今まさに「奇跡の記憶術」第2弾を執筆中だそうです。記憶をコントロールする「メタ記憶」に続いて、「メタ意識」論が展開されるとのこと。楽しみですね。
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