『失敗学のすすめ』 畑村洋太郎 (講談社文庫)
今日もまた、学校という現場で強く実感しました。人は失敗や苦痛がないと学ばない生き物であると。
もちろん、成功や快適さから学ぶことも多々ありますけれど、革命的なドラスティックな人間的成長というものは、「痛い目にあう」ことによって向こうからやってくるもののようです。
その人からすれば、それは「産みの苦しみ」と言ってもいいかもしれません。成長とは生まれかわりだとすれば、私たちはその苦しみを避けて通るわけにはいかないのです。
私の学校では、ある意味生徒たちが「思いっきり失敗できる」「安心して悩む」ことのできる環境を整えているつもりです。生徒の失敗を叱責したり、処罰したりして終わりにするのではなく、そこで生じた苦痛や懊悩を生徒自身が乗り越えて行くための後押しを忘れないようにしています。
それはもちろん自分自身にも言えます。私も毎日が失敗の連続でして、いろいろな方にフォローしてもらっています(笑)。ホント、私は懲りない人間でして…皆さんすみません、なかなか成長しなくて。
さてさて、この本がにわかに脚光を浴びていますね。著者の畑村洋太郎さんが福島第一原発事故の事故原因を究明する第三者機関「事故調査・検証委員会」の委員長に指名されたからです。
私は何年か前に人にすすめられてこの本を読んでいました。たしかにこの本を読んで、自分の生き方が変わったかもしれませんね。先ほど書いた学校の方針も、もしかしたらこの「失敗学」の影響を受けているかもしれません。
日本人というのは、「失敗」を恥だと感じ、それを隠蔽したり、人のせいにしたりする傾向があります。今回の震災や人災についても、いろいろなところで自らの失敗を認めない発言が飛び交っていますね。
日本は「真似」の上手な国です。それは他国の失敗から学んで前轍を踏まないということを意味しているとも言えますが、自ら起こした失敗に対しては有効な対処ができないということをも意味します。
その対処ができないから、失敗の事態は悪化していきます。その悪化がさらに「恥」を増長してゆき、「大本営発表」のようなウソ(タイミングも含めて)がはびこります。
この期に及んでそんなことばかりを繰り返している日本は、今世界中に「恥」をさらしています。日本国内では通じるウソも、世界標準ではバレバレです。
そして、そういう状況に対して、何も言わない何も言えない国民(自分も含めて)にも情けなさを感じますね。これは歴史上稀に見る「国難」です。どこに責任があるとかないとか、あるいは神の仕業だとか、そんな馬鹿げたことを言うのではなく、我々が自らの問題として責任としてとらえていかねばならないはずです。
失敗とは成功や想定内の逆ですから、そこに想定外や危険が伴うのは当たり前。自分を守るのは自分。大切な人を守るのも自分。そのために情報を集めて最終判断をするのも自分。そういう意識こそが「失敗学」の原点ではないかと思います。
Amazon 失敗学のすすめ
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コメント
前回ご紹介の小出先生といい、今脚光を浴びても遅いんですよね、ホント。
3.11よりだいぶ以前、とある場所(記憶不鮮明によりご容赦)の原発誘致に対する説明会の模様がTVニュースで流れていたことが思い出されます。安全性を不安視した住民たちの様々な質問に対し、電気事業者の回答は、「それらの危険性は、実際ありもしないことであるから 100% 安全なのである。」として、原発に対しネガティブな意見を封殺していたものでした。
国是国策に対し異を唱えたり警鐘を鳴らすことがいかに困難であることか。
畑村先生のような方々が、普段から脚光を浴びるようで無ければ、また同じ轍を踏むことになるのでしょうね。
投稿: LUKE | 2011.05.27 12:54
こんばんわ。お初でございます。
畑村先生に期待ですね
投稿: はったん | 2011.06.02 22:25