『完訳 日月神示』 岡本天明(書)・中矢伸一(校訂) (ヒカルランド)
昨日の記事にも出てきた「日月神示」。最近ブームですからご存知の方も多いことでしょう。その完訳版が今月のはじめに出ました。このタイミングでの発売はなんとも因縁めいていますね。
この本の校訂をなさっている中矢さんとは、昨年の12月に初めてお会いしました。そこにも書いたとおり、顔に似合わず(失礼)とっても柔和なお人柄で、そしてまた考え方にも柔軟性がおありで(ある意味ユルい)、大変魅力的な方でした。
その中矢さんの研究の一つの到達点がこの「完訳版」でしょう。日月神示は不思議な文字の羅列であり、一般の人にはなかなか読みづらいものです。それをこうして読みやすい形で、こういうタイミングで世に出すことこそ、中矢さんの天命であったと感じます。
私は実のところ、この「日月神示」についてはあまり詳しくありませんでした。もちろん興味はありましたが、これを正しく理解するには、やはり近代日本史や思想史、宗教史などをしっかり知っていなければならないし、出口王仁三郎の「霊界物語」などをまずは読みこなしておかないといけないなと思い、後回しにしていたんですね。
しかし、最近、昨年くらいでしょうかね、ちょっと考えが変りました。「日月神示」はその書記方法は難解ですが、文体自身は読みやすく、また内容も比喩がストレートで真意が理解しやすいのです。つまり、壮大かつ複雑な比喩の総体たる「霊界物語」を、分かりやすく翻訳したものだとも言えるのではないかと思い始めたのです。だとしたら、こちらから入るのもいいのではないかと。
ちょっとここで確認です。誤解されたくないので。
私がよくとりあげる出口王仁三郎の「霊界物語」やこの「日月神示」、それらともリンクしている地元の古文書群「宮下文書」、そして昨日の「をのこ草紙」など、なんか一般の(?)方からすると、単なるオカルトや宗教じみた話のように思えるかもしれませんね。
実際そういう部分もなきにしもあらずですけれども、私はそういう興味よりも、それ以前の私たち近現代日本人に眠る潜在意識を探る資料として、そして昨日も書いたとおり、戦後の教育が隠蔽してきた「モノガタリ」として、これらとつき合っているつもりです。案外冷静で客観的なんです。
これらの文献に対して、原理主義とも取れるような態度を示す方もたくさんいらっしゃいます。それはそれで自由ですから、私がとやかく言う問題ではないのですが、とりあえず私はそのあたりとは一線を画していると自負しています。また、そういう自負を持っていないと大変危険な領域でもあるわけです。
もちろんそうした世界に思わず逃げ込むこともありますよ。このブログでも時々そういう私がいるじゃないですか。特にあの巨大地震を目の当たりにして、そういう気持ちが発動してしまいましたね。それでもそっちに行きっぱなしではなくて、ちゃんと帰ってこれるのは、そういう冷めた自分もいるからです。かと言って、そっちの世界を完全に否定もできない。そのへんのバランスの中に、自分の本質を見ているとも言えましょうか。
と、自分自身のためにも書いておいて、話を元に戻します。
この「日月神示」は、昭和19年、鳩森八幡宮で宮司をしていた岡本天明に国常立尊という神が降りて以来何年もわたって自動書記させたものです。岡本天明は昨日の友清歓真と同様、元大本の信者であり出口王仁三郎の薫陶を受けている人物です。
結局のところ、昨日も書いたとおり、あの当時の独特の危機感と末世感によって、我々日本人の潜在意識が滲出してきたわけでしょう。そして、明治以来西洋化しつつあった日本が、さらに西洋に蹂躙され占領されるであろうその寸前にあって、大きな「モノガタリ」が噴出したと。その幽閉された潜在意識の象徴がクニトコタチであったと。
実は、そうした「本来の神の復権」の物語というのは、近現代のいろいろな次元に発見することができます。たとえば、近代文学=小説という特殊なジャンルも、ほとんどが究極的にはそこをテーマにしているとも言えるのです。
あるいは左翼運動なんかもそうですかね。戦後の政治闘争や思想闘争もそんなところがうかがえます。さらに進めれば、日本初のマンガやアニメにさえ、そういう影を見ることもできます。
それから、先ほど名前を挙げた「宮下文書」ですね。あの、とってもローカルかつグローバルなトンデモ地方史も、「本来の神の復権」の物語そのものです。
昨日も書いたとおり、あの震災や原発事故があって、私自身の潜在意識が滲出しはじめている感じなんですよね。だからこそ、今までの私の人生や運命の総決算として、こうした「物語」を冷静に客観的に読んでいきたいと思っているんです。そこだけを見るのではなく、全体の中でとらえたい。
結局はそこから未来の自分、未来の日本のあるべき姿についてのヒントを得たいのでしょうね。この「物語」の基本にあるのは、「今」とそこにつながる「近い過去」が間違っているという感覚なのかもしれません。
何が正しいのか、何が間違っているのか。自分の子どもや教え子たちが生きる世の中はどうあるべきなのか。そういうことを考えるためのヒントの一つとして、私はこういう「物語」を読んでいきたいと思っています。
そしてそして、私が恐れ多くも住まわせていただいているここ「富士山」の意味。「日月神示」も最初から最後まで「富士」「富士」の連呼です。「霊界物語」も「宮下文書」も。富士山を中心としたネットワーク「web0.0」とは何なのか。私のライフワークです。
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コメント
>未来の自分、未来の日本のあるべき姿についてのヒントを得たい
もっと俯瞰して「未来の世界」にまで視野を広げてみては?「日本」というカテゴリから解放された視点で「日月神示」をとらえても、やはり同じ印象や感銘を受けるのでしょうか?「富士」は世界にどのような影響を及ぼすのでしょうか?
過去のブログでの天皇に関する記事にも思ったのですが、「天皇」がどれだけ「日本」とって重要なのかも、正直私にはサッパリ解らなくてですね、違和感を感じまくりなんです。過去、帝政が崩壊した国などいくらでもありそうですが、国が変わっても人は連綿と続いておりますしねぇ。
投稿: LUKE | 2011.06.01 17:38
わわ、完訳日月神示がアマゾンで買えるようになったんですね。
こういうものに対して原理主義的になるとかなり危険ですよね。バランス感覚が大切だと感じます。
また、日月神示は八通りに読める(本当に数字通り8通りではなく)と記されていますから、それぞれが異なる解釈になるところも魅力の一つだと思ってます。
それにしてもブームになってるんですか、、、それが善いのか悪いのか。。。
投稿: ニキータ | 2011.06.01 22:56