あの曲のヴィオラ・バートの秘密(?)
先ほど「演奏会案内!」をアップしましたが、6月4日に横浜の開港記念会館講堂で演奏をいたします。
昨年も6月に演奏しましたね。こちら「バッハ vs みのるちゃん」です(笑)。そう、昨年半ば強引に実施してしまった我が中学の「遠足&芸術鑑賞 in 横浜」を今年も実施しちゃいます。いちおう好評だったのかな…?よくわかりませんが、まあ教頭先生出演のコンサートとなれば、生徒たちにとっても、多少眠気覚ましにはなるでしょうね。
で、今年は昨年に負けず劣らずなかなか豪華なプログラムであります。弾く方もけっこうハードですね。昨年はバロック・ヴィオラのみでの参加でしたが、今年はバロック・ヴァイオリンがメインでの参加になります。
ヴィオラを弾くのは1曲だけ。バッハの2本のリコーダーとチェンバロのための協奏曲ヘ長調。これは皆さんご存知のとおり、あのブランデンブルク協奏曲第4番のバッハ自身による編曲版ですね。ヴァイオリンのソロ・パートをチェンバロ用に編曲したもので、よく言われているように、これはバッハ自身が独奏・指揮したと言われるヴァージョン。すなわちコーヒーハウスでの演奏会用に、新曲を作るのは手間がかかるということで、自らの作品を転用したという作品です。
バッハがよくやったようにこの曲も原曲のト長調からヘ長調へと全音分低い調に移調されています。私はこのヴァージョンを弾くのは初めてですかね。原曲はたぶん今までにヴィオラで4回、ヴァイオリンで1回演奏していますが。
で、今回弾いてみて感じたことはですね、なんで微妙に変えるかな?ということです。面倒くさくて自曲の転用をしたのなら、ヴィオラのパートなんかそのまま1音下げて書けばいいのに、なんだか原曲と微妙に違うんですよ。そのせいで時々つまずいてしまう。原曲への慣れがあるからでしょうね。参った。
それにしても、その微妙な修正というか変更の意図がさっぱり分からんのですよ(笑)。気まぐれじゃないかなと。あるいは、原曲の時には思い浮かばなかったアイデアが浮かんだとか。とすれば、こちらの方がより完成版に近いということかなあ。
ところで、この曲(原曲も同様なんですが)の秘密をご存知ですか?いや、普通は知らないでしょうね。いくらこの曲やブランデンの方をよく聴いておられてもご存知ないでしょう。実際演奏してみないと分からないことがあるんです。それもヴィオラパートを弾いたことのある方でないと気づかない秘密…。
それはですねえ…あの3楽章は、そう、ヴィオラで始まるフーガですよね。ヴィオラ奏者の数少ない聴かせどころ、実においしいところです。あの時代、いやあの時代からずっとヴィオラが主役,ソロになることなんかほとんどないわけですよ。縁の下の力持ちというか、実に目立たない役どころなんです、ヴィオラってやつは(音楽的には実においしいところを受け持っているんですがね)。
で、この編曲版でもチェンバロを帯同しているとはいえ、ほとんどソロであのかっこいいフーガのテーマを弾くわけですよ。その後の対旋律も含めてヴィオラの音域を目一杯使って聴かせちゃうわけです。もう最高の気分ですね。
しかし!なんとなんと、あの壮大なフーガ風楽章の中で、あの主題をヴィオラが弾くのは、その冒頭のただ1回なのです!!ご存知なかったでしょう。第二主題は2回弾きますが、あの第一主題は最初に弾いておしまい。
あとはなんだかゴチャゴチャ意味のあるんだかないんだか分からない(失礼)動きをしたり、和音をビシッと決めたりして終わります。
これって、バッハの洒落じゃないかと思うんですよね。シャレっていうか、ある意味ブラックジョーク。最初に超カッコいいことさせといて、あとはまた本来の地味な役割に没頭させる…。ほかの楽器は何度もテーマを弾くのになあ。
というわけで、あの冒頭のテーマって一世一代の大舞台なんですよ、ヴィオラにとっては。ここでこけるともうリベンジできないんです(笑)。
今回はいつもと調が違ったりするんで、より緊張を強いられます。でも頑張るぞ!皆さん私の一世一代の大ばくち…いやいや大舞台をよ〜く聴いて下さいね。
演奏会に来られない方のために、動画を貼っておきます。これ、珍しい演奏ですね。チェンバロでなくてフォルテピアノで演奏しています。音はあんまりよくありませんが、なかなか面白い演奏です。ヴィオラに注目して聴いてみてください。
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