クリストフォリ(最古のピアノ)で遊ぶ…その2(調律編)
1ヶ月ぶりに娘のレッスンに帯同。こちらに書きましたとおり、娘のピアノの先生というか、歌謡曲バンドの仲間というか、最近では古楽の仲間というかの方のお宅に、世界最古のピアノクリストフォリのレプリカが来たんですよ。
で、今日もそれをいじりに行ってきました(って娘のレッスンはどうなってるんだ?)。
まずは調律。そうそう、私、鍵盤楽器は基本弾けませんしほとんど弾きませんが、調律は大好きなんです。
ピアノの調律って、普通は専門家まかせじゃないですか。これってある意味特殊な状況ですよね。だって、自分の楽器を自分で調律しないなんて、ほかの楽器じゃありえない。まずチューニングができてなんぼです。
これはピアノという近代兵器(!)の特徴でもあります。つまり工業化しているということですね。ブラックボックス化です。人任せという意味では極端な話、原発と同じようなものです。
それも調律師の調律と言えば基本「平均率」ですよね。私はあんなつまらん調律はしませんよ(笑)。かと言って、ベルクマイスターとかヤングとかミーントーンとか、そういう古典調律をするわけでもありません。
では、どういう調律をするかと言うと、「適当」です(笑)。「適当」というのは「テキトー」という意味でもあり、「適切」という意味でもあります。
つまり、今から演奏するであろう曲のイメージに合わせて調律していきます。たとえば今日は、モーツァルトのピアノとヴァイオリンのためのソナタのハ長調かト長調を演奏しそうだったので、それに合わせて響きを作って行きます。
たとえば、同じト長調でも曲調によって、また共演する楽器によって当然調律は変わります。今回は自分が弾くバロック・ヴァイオリンと合わせますからイメージしやすかった。
音楽的なことを詳しく書くといろいろ出てきますけど、たとえば当該曲は途中同名調のト短調に転調する部分がありますから、DとEの間にある黒鍵をどう処理するかというのがミソになります。つまり、D♯として使う時とE♭として使う時とがあるので、どう辻褄を合わせるか、というか、どう折り合いをつけるか、あるいはどこまで妥協するかというのを考える(感じる)わけです。
それで和音を鳴らしたり、音階を弾いたりしながら最終的に調整していく。そう、和音を優先するかメロディーを優先するかも大切なポイントですね。
隣で娘がモダンピアノでレッスンしている横でこの作業をやってしまう私はもしかして天才?ww
まあ耳で合わせるというより、指先の振動で合わせるんで問題ないんです。もちろん、チューナーなんていう悪魔の道具は全く使いませんよ。
世の中のピアニストには、どれくらいこういう感覚があるんでしょうかね。ちなみにキース・ジャレットはコンサートの最中、自分でどんどん調律してました。
しっかし!困ったことが。ハ&ト長調用に調律したクリストフォリで、娘がニ長調の曲を弾くことになった!急きょEだけちょっと調整したんですけどね、ニ長調のところはまあいいのですが、5度転調してイ長調になったところでは、ゲゲゲッという響きが(笑)。ああ、やっぱり平均率(それも1年くらい平気で狂わない)はすごいな。
娘の演奏が終わりましたら、さあいよいよモーツァルト時代の響きの再現です。なにげにこれってすごい光景ですよね。この片田舎で久保田さんのクリフトフォリとルビオのバロック・ヴァイオリンの共演が実現するなんて(演奏の巧拙は別として)…。
前回はモダン・ヴァイオリンを持って行ってしまったので、全然音が溶け合わず今一つ演奏も乗り切れませんでした。しかし、今回はさすが同時代の楽器。音量的にも音質的にも絶妙にマッチしていた…はず。
いやあ楽しかったな。大人たちがキャーキャー盛り上がっている間、娘はヒマそうにiPhoneでゲームをやっておりましたが(苦笑)。
というわけで、皆さんも鍵盤楽器の調律という楽しみをぜひ体験してみてください。
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コメント
現代は前頭葉が発達したので平均律と純正律の差がますます開いてきたようです。ネットで見つけたDの純正律ピアノの演奏聴いてそう思いました。体で聴くと違和感無いです。でも身の回りの雑務や会話しながら聴くと、聴覚野に頭痛が。。。
投稿: 山田貢司 | 2015.05.04 13:51