レミオロメン 『“Your Songs”with strings at Yokohama Arena』
昨日レミオロメンの「アイランド」を紹介しました。そこにはオリジナル・ヴァージョンのPVを貼りましたが、実際にはこの横浜でのライヴ音源を聴きながらいろいろ考えていました。
まず純粋にレミオの音楽として、ライヴ音源として非常に優れているということを書いておきましょう。ウチの家族もずいぶんと長いこと彼らの音楽に触れてきて、それぞれの感想を持つものなのですが、この音については全員手放しで称賛しております。
3月9日、彼らにとって特別な日に収録された音。with strings ということで、必要以上にゴージャスになるのではないか、ある意味彼らを苦しめた部分が強調されたりしないか、勝手に心配していました。しかし、それは杞憂でした。
昨年の12月、『10th Anniversary TOUR 2010“花鳥風月”結成10周年記念日ライブ in 山梨』の記事に「打ち込み」の問題を書きました。彼ら、それを読んだのでしょうか(笑)、こうして、ストリングスやブラスセクションを加えることによって、逆に彼らのがスリーピースのバンドとしての魅力が復活したような気がします。
神戸のライヴに行かれた知り合いの方も同様の印象を受けたとのこと。録音でのミキシングによるのではなく、会場でもこういうバランスだったのですね。
つまり、今までライヴでは皆川さんの負担が大きすぎたんですよね。というか、実際一人でこなすのは不可能なのでローディーさんや打ち込みに頼らざるを得なかったと。結果としてバンドの3人も打ち込みにそちらに寄り添うことになってしまった。
今回のライヴでは、そのあたり多くの演奏家が参加したおかげで、バンドの3人が余裕をもってもう一度アレンジ、演奏を見直した感じがしますね。
実際、ギターのフレーズ、ベースの進行、ドラムのおかずなども大きく変っています。特に前田くんのベース、いつもいつも書きますが、彼は本当にうまいし、ベースラインの作曲能力がすごい。バッハかポール・マッカートニーという感じですね(笑)。
アンサンブル的にも、もう一度心をしっかり合わせて基本に立ち返ろうという感じが伝わってきました。
その結果、聴き慣れたはずのたくさんの楽曲たちが、実に新鮮に心に響きました。今さらながらですが、家族で「名曲ばっかりじゃん!こりゃ、歴史に残るバンドだな」と感心しあっていました。
それにしても、この3月9日の日。三陸沖でM7.2の地震がありました。それがまさかあの11日の大地震の前震であったとは、誰も思いませんでした。私はもちろん、地震の専門家も一人として想像すらしなかったでしょう。まさに地震予知の、科学の、人間の限界を思い知らされる現実です。
藤巻くんももちろんそんなことは知る由もなく、ただただ感謝の気持ちをこめてていねいに、どちらかというと静かに平和に全曲を歌っています。今までになく落ち着いた、いい意味で力の抜けた歌唱を聴かせてくれます。
今となると、それが辛いほどにぐっと胸に迫ります。あの日、東北地方や関東地方の方々も、きっと普通の日常の幸せと平安を味わっていたことでしょう。まさかその二日後にあのような悪夢、いや現実が押し寄せてくるとは…。
この横浜のライヴは9日、10日と行われました。そして震災をはさんで、3月26日、27日に神戸で、という予定でした。
きっと彼らも悩みに悩んだことでしょう。私でさえも一昨日書いたように苦しんだくらいですから。それも神戸という土地。なにか因縁めいています。
結局彼らもチャリティーという意味を加えて、その因縁の土地で立派に演奏しました。神戸の両日に行かれた前出の知り合いも、言葉にならない感動を受けとったようです。
できれば、私も神戸の音も聴いてみたいような気がします。人の命と魂と音楽と言葉と…。
そういう意味ではフジファブリックの志村正彦くんの命と魂と音楽と言葉が生かされたYour Songは、間違いなくこのライヴのクライマックスでありました。
私もこんな年になって、本当にいろいろな命からいろいろなことを教えていただいている気がします。
アイランド (10th Anniversary ver.)
iTunes “Your Songs”with strings at Yokohama Arena
Amazon “Your Songs”with strings at Yokohama Arena
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