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2011.04.25

春眠暁を覚えず

春曉            春眠不覺曉 處處聞啼鳥 夜來風雨聲 花落知多少       春眠暁を覚えず 処処啼鳥を聞く 夜来風雨の声 花落つること知る多少

Spring77 わずと知れた孟浩然の五言絶句。私もたぶん中学生の時に習ったのだと思います。日本人なら皆知っている漢詩ナンバーワンでしょう。
 中学で教えるようになった私、この季節にちょっと取り上げてみようかなと思ったのですが、これって案外難しい詩ですよねえ。このシンプルな表現の中から何を読み取ればいいのか。
 正直、なんとなくながらこの意味が分かってきたのは最近の話です。ちょうどここ数日は夜風が強く、ようやく咲き始めた近所の桜も落ちてしまうのではないかと心配していたところですし、たしかに朝目覚めると明るくなっていて庭の木で鶯が鳴いていたりします。
 こういうことを「ああ…」という詩情で感じるようになるのは、まあこういう所に住むおじさんくらいのものであって、たとえば高度成長期の東京で中学時代を送っていた私なんかには到底分かるはずもない世界であったと思われます。
 しかし、教養というものは、そういう分からん時に詰め込まれたものが、のちに必要な時に蘇ってくるという性質のものなのでしょうね。意味も分からず教え込むということが大切なのかなあとも思います。
 で、今日はそんな小難しい教育論・教養論ではなく、冒頭の「春眠暁を覚えず」の理由を考えてみたいと思います。
 この詩がこれだけ記憶され、そして冒頭部分が日常会話にも用いられる理由として、たしかに「春は眠い」というのがありますね。
 実感として朝寝坊をした気分になるのが春の特徴なわけですが、実はその理由は非常に複雑なのです。そして難解。それをある意味一言で片づけてしまう魔法の言葉がこの「春眠暁を覚えず」なのではないでしょうか。
 よく言われるのは、寒くてつい目が覚めてしまっていた冬と比べ、春になると適温になってくるため目が覚めにくくなるという説です。あまりに心地よい睡眠のため自然に目が覚めることがなくなると。それもたしかにあるかもしれません。
 ただ、ここ富士山麓はとにかく一年中朝寒い。冬も夏も日較差が15度ありますので、どの季節も朝は寒くて目が覚めます。夏なんか窓を開けて寝たりすると大変なことになりますね。
 ですからある意味ではまだここはいいのでしょう、朝きっぱり起きるには。平地の方ではたしかに春の朝はずいぶん暖かく感じられることでしょうね。それで起きられない…というか自然と深い眠りのまま朝を迎えると。
 それから、感覚的なものもあると思います。日が伸びてそれまで起きていた時間にはすでに日の出後だったりする。真冬は日の出が7時くらいだったりして、6時半とかまだ薄暗かったりするわけですよ。しかし、今は5時に日の出ですから6時半と言うと完全に「昼間」という雰囲気です。実際、鳥などの動物も活発に活動していますから、そんな時にふと目が覚めると、ついつい「出遅れた!」と思うものです。そういう感覚的なものもあるでしょう。
 私なんかとっても原始的で、1年を通して日の出の30分くらい前に起きる生活を心がけていますから、たしかに春はどんどんきつくなっていきます。それまで6時半まで寝ていられたのに日に日にそれが早くなって、今では4時半に起きなければならないわけですからね。
 気温や日の出の時間だけを考えれば「秋眠も暁を覚えず」のはずですが、あんまりそういうことを言わないのは、秋はだんだん遅くまで寝ていられるようになるからでしょう。
 生理学的・精神医学的には、気温が不安定で自律神経がなんだかんだとか、年度初めということで社会的な変化にさらされてストレスがたまるだとかいろいろ言われています。そういうこともたしかにありますね。
 そうそう、一日一食生活を始める前までの私はひどい花粉症でしたから、薬による眠気というのもありました。薬以前に花粉症自体なんとなく神経をぼんやりさせるものです。今ではその原因はなくなりましたが。
 それから今年は、あの巨大地震のあと、毎晩のように大地が揺れますので、それでなんとなく寝不足気味だというのもあります。昨夜なんか富士山はずっと微動をしていて(強風のせいもありますが)、家がミシミシ言ってるし、なんとなく気になって枕元のiPhoneで地震情報を見てしまうというような状態でした。そういう意味でこの春は日本人は皆寝不足気味、朝も起きづらいことでしょう。
 早く本当の意味での「春眠暁を覚えず」を招く平和な夜が戻ってきてほしいと思います。

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