チャリティー演奏会に参加します
お誘いを受けましてチャリティー演奏会に参加させていただくこととなりました。今週の土曜日、9日の夜、被災者の方々が避難している東京国際フォーラムにてバッハを中心に演奏いたします。
入場料収入は楽器運搬費等実費を除き全額寄付となります。ぜひご来場ください。
この演奏会は音楽学者・評論家である澤谷夏樹さんの「"いっしょに生きよう"--ふさいだ心には楽しみを、被災地には義援金を」という趣旨のもとに企画されたものです。
テーマは「バッハの素顔にズームイン!」。詳細は以下のとおりです。
日時:4月9日(土) 18:10開場18:30開演
場所:相田みつを美術館第2ホール(東京国際フォーラム)
料金:1500円(実費を除き全額寄付・被災者の方はご招待)
主催:三田樂所(みたがくそ)/共催:相田みつを美術館/協力:久保田チェンバロ工房
演奏曲目
J.S.バッハ アリア ニ長調 管弦楽組曲第3番 BWV1068より
J.S.バッハ ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ト長調
G.Ph.テレマン フルート、オーボエ、ヴァイオリンと通奏低音のための四重奏曲 ト長調 食卓の音楽 第1集より
J.S.バッハ カンタータ「悲しみを知らぬもの」BWV209より レシタティーヴォとアリア「さあ、悲しみや恐れがあっても旅立とう」
演奏者
木島千夏(ソプラノ)
大山有里子(バロック・オーボエ)
曽禰寛純(フラウト・トラヴェルソ)
原田純子(バロック・ヴァイオリン)
角田幹夫(バロック・ヴァイオリン)
山口隆之(バロック・ヴィオラ)
西谷尚己 (ヴィオラ・ダ・ガンバ)
野口詩歩梨(チェンバロ)
突然のお誘いでしたが、このような機会は貴重ですし、また、たまたまその日は東京にいますので参加させていただくことにしました。
実はいろいろ悩んでいたのです。ちょうど今日4月3日は、本来なら浜離宮朝日ホールでベートーヴェンを演奏している予定でした。
しかし、あの大震災があり、メンバーの中でもいろいろな意見が出てまいりまして、結局5月4日に延期ということになりました。
ただ、私は3月までは役職上基本自宅待機という状況で、新年度になってもどのような流れになるか不透明であったためやむなく不参加を表明しました。
このような時に、いったい「音楽」がどのような力を持つのか。あるいはアマチュア演奏家が今までのようにほとんど自己満足のための演奏活動をしていてよいのか。本当にいろいろ悩みました。
また、私の演奏する音楽はいわゆる宗教曲が多いということもあって、「宗教」の意味ということについても、今までにない様々な迷いや懊悩が生まれていたのです。
以前も書いたように、人間の脳内で構築された「コト」が、自然の猛威によって「モノ」に帰すという状況の中、はたして「コト」の代表である「言語」や「音楽」や「芸術」や「宗教」に、どんな価値があるのか、特に自分自身の脳内の「コト」が無力であるどころか、何か邪悪なものにさえ感じられていたのです。
プロにせよアマにせよ、日常においても「魂」をこめて表現しているのならともかくも、私のようにある意味「適当」に楽しんできただけの人間が、偉そうに「癒し」や「救済」を語ったところで、それは所詮「騙り」に過ぎないのではないか…こういう時は黙するに限る…。
そんなふうに思いながらも、こうして毎日多弁を弄しているわけですから、また困ったものですね(苦笑)。
今日、私の短歌の師匠である笹公人さんが、本日鎌倉の臨済宗円覚寺派総本山円覚寺で講演をされました。私は残念ながらうかがうことはできなかったのですが、無事そして有意義に講演が終わったとのご報告をいただきました。
どのような内容の講演だったか非常に興味のあるところです。今はその詳細は知り得ないのですが、ただその中で、私たちの同志、すなわち笹師匠のもとで「天命歌会」に参加しているお二人の、このたびの震災にまつわる歌と詩が紹介されたということ、そしてそれさが聴く人の心を打ったということだけは知ることができました。
円覚寺派の管長様もたいへん感激されたということでした。また管長猊下はこのたびの震災を受けて、被災地のお寺へ直筆の延命十句観音経と観音様の絵を送っているとのことです。
私は師匠や同志や管長猊下の純粋な魂に触れて、何かとても気持ちが軽くなったような気がしました。いろいろ理屈をこねて思い悩むふりをしているよりも、まずは自分のできることを魂こめてする方がずっと有益であるということに気づかされたのです。
そうか「言語」も「芸術」も「宗教」も単なる「コト」ではなく、「モノ」世界と「コト」世界をつなぐ手段であり媒体なのだ、と思えた瞬間、今までとは逆に「言語」や「芸術」や「宗教」にしかできないことがたくさんあるという、あまりに自明であったはずの基本的なところに立ち返ることができたのです。ありがとうございました。
そして、臨済宗と言えば、笹さんの友人でもあり、私も一度お会いしてお話ししたことのある玄侑宗久さんの番組が先ほど放送されました。ETV特集 「原発災害の地にて~対談 玄侑宗久 吉岡忍~」です。
これがまた、心にずしっと響く番組でした。まさに「宗教」と「芸術」。そして「言語」、またお二人ともに「科学」にお強い。
被災地の実態のほんの一部を知ることができただけでも私にとっては有意義でした。もちろん辛くて辛くてどうしようもなかったのも事実ですが。
しかし、対談されたお二人の行動と言葉だけでなく、被災地の一つ一つの命、家族や友人やペットや自然や仕事や土地に対するあまりに強い愛情、その全てに心打たれました。
そして、ちょうど舞い込んだチャリティーコンサートへの誘い。いろいろなタイミングが合って、私は前に進むことができそうです。本当に私はいろいろな方の「おかげさま」でようやく生きているのだなと改めて感じました。
本当にこういうことがないと分からないなんて、自分でも情けないのですが、しかし、だからこそ一生懸命にやっていくしかないのかなとも思います。
玄侑宗久さんが「死に甲斐」というある意味取り扱いの難しい言葉を口になさっていました。「周りが変わらなくては死に甲斐がない」と。
「死に甲斐」を活かすのは「生き甲斐」なのではないかな…そんなことを思いました。ぜひ、私の「生き甲斐」の一つの表現、9日のコンサートにぜひお越しください。
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コメント
なんのなんの。
「不適当」ならいざ知らず、「適当」に人生を楽しんで何も悪いことはありませんよ。国民の愚かさや無能ぶりを嘆くより余程健全です。
復興支援に協力したい方、それができる方は堂々とすればよし、したくない方、できない方だって引け目を感じることは無いです。私は後者を不謹慎だとは思いません。自分自身の生活をしっかりさせることだって、間接的ではありますが立派な復興支援てなもんです。
投稿: LUKE | 2011.04.04 14:51
先生、こんばんは。
「言語」や「芸術」や「宗教」は「モノ」世界と「コト」世界をつなぐ手段であり媒体なのだ...。
「言語」や「芸術」や「宗教」にしかできないことがたくさんある...。
私もそう思います。
私自身はそれらを表現したり発信したりできる能力がなく、いつもそれらから力を貸してもらうばかりなのですが、とても感謝しています。
先生方の演奏会、遠方のために伺うことができず残念ですが、その音色がたくさんの方々の魂に響くことを願っております。
投稿: 松原恵子 | 2011.04.04 20:14
おお、友人、知った方ばっかりだ(笑)!
よろしくお伝えください(←業務連絡…)
にしても、良い企画ですねー。
カンタータ209番良い曲ですよね。
良い会になりますよう♪
投稿: よこよこ | 2011.04.05 01:50
とっても素敵な企画ですね♪きっと被災地の方の心は癒されると思います。
残念ながら私は行けないけれど・・・素敵な演奏会になります様に願っております。
投稿: ぽん | 2011.04.05 09:51