バッシングされるべきは誰か
ものすごくいやな気分ですね。
皆さん御存知のとおり、京都大学等の入試で不正をした受験生が逮捕されました。
この件に関して、私はあえて教育現場の者として言わせていただきますね。
まず前提として、カンニング、不正はいけないことです。これは教育以前の問題です。ですから、彼がその点で責められる、お咎めを受けるのは当然です。
しかし、彼だけをバッシング(罰しんぐ)して、それでおしまいというのはどうでしょう。彼に対するのと同様に、あるいはそれ以上に責められるべきところがあるのではないでしょうか。
今、ウチの生徒たちも大学入試に立ち向かっています。まだ、国立中期や後期が残っています。一生懸命頑張っています。
そんな受験生の一人がこんな話をしていました。
彼女がある大学…いや、あえて実名で書きましょう…法政大学を受験した時、監督の先生(と思われる年配の男)が、試験中居眠りを始め、しまいには大いびきをかきはじめたそうです。もう一人の監督官に促され、瞬間起きたそうですが、またすぐにいびきをかきはじめたと。
ウチの生徒のみならず、受験生みんな集中できず、怪訝な空気が試験会場内にひろがっていたと言います。わざと咳払いをする受験生もいたとか。
どうですか。これが大学入試の現状です。こういった事例は毎年枚挙に暇がありません。本当によく聞く話なんです。
京都大学をはじめ、今回山形の彼が受験したそうそうたる大学の監督体制はいったいどうだったのか。私はある程度想像できます。今回のような手口での不正が可能になる程度の監督体制や試験の実施形態にこそ、実は大きな問題があるのではないでしょうか。
私たちの現場でも、ちょうど明日から学年末試験が行われます。当然、不正に関していろいろな対策をとります。未然に防ぐための抑制策もとりますし、試験中の監督の仕方も練り上げられています。試験後のチェックももちろん怠りません。
それはある意味当然のことです。なぜなら、「いい点を取りたい」「カンニングができるものならしたい」、彼の場合なら「合格したかった」…こんな感情は人間として当たり前すぎるほど当たり前だからです。
いや、そんな不正をするくらいなら腹切って死んだ方がましだという立派な大人もいるでしょう。しかし、相手は子どもです。発達の過程にある人間です。そういう「悪心」が全くない方がおかしいとさえ言えます。
そういうことを前提に、私たち教育者は、そういう「悪心」が行為として発動しないように、教育的配慮を行なうわけです。そこは大人の責任であって、それを怠ることこそ犯罪を誘発する行為として咎められなければなりません。
それなのに、こうして「偽計業務妨害罪」とかいう、初めて聞くような罪状をもって逮捕するのというのは、これが教育の現場で起きた事件だということを考えると、いや、それをさっ引いても、やはり彼には重すぎる罰であると思います。
仮にそこの部分は百歩譲って法治国家の必然として許したとしましょう。しかし、マスコミはじめ、多くの国民による過度のバッシングの必要はあるのでしょうか。
そういう人たちは、例えばですよ、私が「小学校の時、先生が見ていないすきにみんなで答を見せ合った」とか、「実は高校の期末試験で机に公式を書いていた」とか、「大学の時、代返で昼飯代を稼いでいた」とか、「おととい気持ちよく立ち小便した」とか、仮の話ですよ(笑)、そう言ったとしたら、「そんなけしからんヤツが教頭先生とかやっていていいのか!即刻謝罪会見して辞職せよ!」って言うんでしょうね。
例の海老蔵問題や大相撲の八百長問題の時も書きましたが、そういう社会を作っておいて、そこまで放置しておいて、あるいは自分も似たことをしておいて、何かあるとすぐにバッシング側に回る、そういう「偽善社会」のあり方に非常なる不快感と不信感と危機感を感じます。
そういう空気がついにここ教育の現場にまで波及してきたのでしょうか。
ケータイという利器や知恵袋なるお手軽問題解決サイトを作ったのも、全て若者ではなくて大人です。それこそこういうことを言うとバッシングされそうですが、現代のハイテクを使えば、もっと巧妙に不正行為はできます。ある意味彼はその点では無知だったと思います。杜撰であったと思います。
それは事実であって、そういう利器やシステムを作った我々大人は、その危険性についてもしっかり認知し、その悪用に対する防止策を講じなければならないはずなのです。
ウチの学校では、そういうことも当然想定して、たとえば間接的にではありますが、このような指導をしています。「100%足がつく」ということを知っていれば、今回のような行為が発動することはなかったでしょう。
いずれにせよ、大学側の問題こそ、もっとバッシングされるべきです。大学のみならず、大人は我が事として大いに反省しましょう。もちろん、私も反省します。
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コメント
あんな杜撰なカンニング、シッカリ監督していて解らないわけ無いでしょうよ。むしろ大学側の責任を問うべきだという意見はごもっともに思います。庵主様がご存知か解りませんが、今回の報道のあり方も酷すぎます。あれでは当の予備校生が特定されてしまい、名前を伏せている意味が全くありません。しかも、某局のレポーターは祖父のところまで乗り込んで行き、謝罪させる始末。あ奴らは一体どういう教育を受けて来たのか来なかったのか。人にカンニングがどうこう言える人間かって話しですよ。
でもやっぱり当人も情けないですね。カンニングどうこうと言うより、方法が稚拙過ぎるのです。あれじゃバレるでしょうよ、どう考えても。最高学府に挑もうという人間が、そんなことすら解らないのかい?
ああ、なんだかやるせない。
投稿: LUKE | 2011.03.06 05:32