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2011.03.05

前川清 『花の時・愛の時』

 日の「NHKのど自慢チャンピオン大会」ご覧になりましたか?
 Twitterでも思わずつぶやいてしまいましたが、グランドチャンピオンになられた斉藤光壱さんの歌唱が本当に素晴らしかった。歌にはかなりうるさいカミさんも号泣していました。
 斉藤さんはブラジル移民の3世。来日当初は言葉の問題もあって大変苦労されたようです。つまり、彼は日本語を外国語(第二言語)として習得したことになりますね。もちろん日系ですから家庭の中に日本語があったことでしょう。しかし、基本はネイティヴではないわけです。
 だからこそでしょうかね、非常に日本語を大切に歌われていまして、それが私たちの心に響いたんです。他の純粋な日本人の方々は、もちろん日本語に不自由はないわけですが、なんというか、あまりに当たり前に接しているせいでしょうか、上手だけれど魂がこもっていないというか、不思議と言葉が伝わって来なかったんです。ちょっとびっくりしました。
 ほら、私も外国の音楽をたくさんやるじゃないですか。来月もベートーヴェンをやることになりました。それも声楽曲です。そういう時、いつも大きな疑問を持っていたわけです。現代日本人が、18世紀とか19世紀とかのヨーロッパの曲を演奏するなんて、根本から間違っているんではないかと。言葉や習慣や伝統が違うのに、こんなにずうずうしく楽しくやっていていいのかと。
 まあ、そんな理屈抜きに好きだし感動するわけですから、実際は割り切っていましたけれど、どこか引っかかっていたことは確かなんですよね。
 それが、今日の斉藤さんの歌唱で氷解したような気がしました。大げさでなく、逆にネイティヴじゃないからこそ美しく表現できるのではないかとさえ思ったのです。それほど素晴らしかった。夫婦で、「この人がグランドチャンピオンにならなかったら八百長だな(笑&泣)」なんて言うほどでした。彼15人中6番目に歌ったんですが、その時点でそう思ったのです。
 明日日曜日のお昼にBS2で再放送がありますから、ぜひご覧ください。歌唱のみならず彼を取り巻く様々な日本語が全て美しかった。
 それから、斉藤さん以外ほとんど全ての人に共通していたんですが、歌い出しでほとんど失敗していました。私も楽器の演奏の際、最も難しいのが弾き出しであるということをよく理解しています。それから、音の終わりもそうですね。今日の皆さんも「歌いっぱなし」「出しっぱなし」が多かった。カラオケならそれでいいんですけどね。しっかり最後まで、そして細部にわたるまで魂をこめないと…なんて、私が偉そうに言えることではありませんが。
 そういう意味も含めまして、こういう上手な素人の大会を聴きますと、いかにプロ歌手がすごいかよく分かりますねえ。ゲストのお三人、坂本冬美さん、瀬川瑛子さん、森進一さん、それぞれテクニック以上に個性が光っていましたね。本当の歌手は、なんというか伝道師というかある種の「イタコ」でなければなりませんね。あちらの世界からのメッセージを伝える力が必要なようです。
 そして、カミさんと二人、共通した感想としてやっぱり「美空ひばりはすごい!」と。ある意味この大会とは全然関係ないし、歌も話も実際には出てこなかったのてすが、全ての歌や歌手の後に、完璧なひばりさんの世界があるんですよねえ。もう現れないでしょう、ああいう歌姫は。神の領域ですね。
 さてさて、ようやく今日のテーマ「花の時・愛の時」です。グランドチャンピオンの斉藤さんがお歌いになったのが、この前川清さんの曲でした。
 これがまたいい曲なんですよねえ。この曲は前川さんがクールファイブから独立してソロになった時の、第1弾シングルです。
 作詞はなかにし礼さん、作曲は三木たかしさんです。両巨頭によるこの楽曲、ある意味コテコテの王道を行っていますね。しかし、聴けば聴くほど味わいの出る深い曲です。別に新しいことをやっているわけではないのに、いや、だからこそでしょうか、心にしみる名曲ですね。
 たしかに前川清さんの歌のうまさも光ります。しかし、今日の斉藤さんは本家をもしのぐ歌唱を聴かせてくれましたよ。ものまねではなく、歌や言葉をご自分の世界に引き込んでいましたね。
 とにかく再放送をご覧下さいませ。私も録画したいと思います。
 あっそうそう、斉藤さんがブラジルの95歳のおばあちゃんについて語る時、「〜していただいた」と敬語を使っていましたが、テロップでは「〜してくれた」と直されていました。ブラジルのみならず、日系人の日本語には、古き良き時代が残っています。文法的に、あるいは慣習的にどうだというよりも、彼のおばあちゃんに対する気持ちを優先してほしかったような気がします。

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コメント

こんにちは。いつも楽しく拝読しております。

動画ありがとうございます。
いろんなものが伝わってきて、“この辺のおばさん”と一緒に泣いてしまいました。

投稿: すしさしみ | 2011.03.07 11:15

はじめまして、のど自慢の斉藤光壱さんの歌にすばらしく感動してしまって、検索しているうちにこちらにたどり着いたものです。

「ネイティブじゃないからこそ、歌詞の世界を丁寧に伝えようとする心」について書かれていたこちらのブログに、とても共感を覚えました。

私も音楽をやっていて、日本人がソウル・ミュージックにあこがれ必死に歌ったところで、それこそ魂も違うし、本場の人から見たらサルマネだなあと卑屈に思うところも多いのですが、斉藤さんの歌にまさに心洗われました。

生業にされていないからこそ、ここまで感動できたのかもしれませんね。斉藤さんの人生のすべてがこの歌に溶け込んでいるような、そんな気がして涙が止まりませんでした。久しぶりに“感動”というものを体感しました。

おじゃまいたしました!

投稿: achiki | 2011.03.07 14:14

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おめでとうございまーーーす。パラベンス! [続きを読む]

受信: 2011.03.06 16:36

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