河口浅間神社
今日Twitterでつぶやかせていただきました。
「一つ言っておかなければならないことがある。あらゆる危険性はあの日に突然生じたのではない。以前からずっと私たちのすぐ隣にあったのだ。そのことを忘れて今騒ぐのはどうだろう。それだとまた時が経てば忘れてしまう」
私たちは歴史を現代に生かさねばなりません。過去と現在と未来をしっかりつながなくてはいけないのに、どうして皆「今」ばかりに執着して生きてしまうのでしょうか。まさに「天災は忘れた頃にやってくる」。
あえて厳しい言い方をすれば、今回の大震災にも過去の体験が生かされていなかったとも言えます。
明治29年の明治三陸地震の津波は最大38.2m、地震及び津波による死者は2万人を超えました。昭和8年の昭和三陸地震は震度5だったのに津波は最大28.7mに及んだと言います。このような事実が120年くらいの間に二度あったにも関わらず、その後町が無反省に再建され、ある場所には原子力発電所まで建設されてしまいました。これはある意味人災でしょう。
今日はもっと古い事実を復習してみましょうか。
こちらの記事に書いたように、今から1140年ほど前、今回の東北地方太平洋沖大地震と非常によく似た地震が起こっています。
貞観11年(869年)発生の貞観地震(貞観三陸地震)。震源域は今回とほぼ同じ岩手沖から茨城沖にかけて。推定マグニチュードは最大8.6。今回の大地震発生以前は、日本史上最大の地震であったとも言われています。
津波(貞観津波)も発生、数千人が死亡したものと思われます。公式記録では津波による溺死者は約1000人となっています。実際にはその数倍でしょう。
その公式記録の名は「日本三代実録」。その三代実録には、貞観地震の数年前(貞観6年から約2年間)に富士山が噴火したとの記録があります。富士北西麓、長尾山などの側火山が噴火し、大量の溶岩を吐き出しました。一部は現在の本栖湖を埋め、のちに石花海(剗の海)を二湖に分断し(現在の精進湖と西湖)、また河口湖にも迫ったと記録があります。
その時形成された溶岩台地は現在青木ケ原樹海と言われる原生林を生み出しました。つまり青木ケ原の原生林は約1000歳の比較的若い原生林ということになります(ちなみに私が調査した新発見の溶岩洞穴「平次原風穴」は貞観の溶岩以前の古い溶岩流の内部にあり、約5000年前のものです。北麓では最も古い洞穴ではないでしょうか)。
貞観の噴火に際して、甲斐の国に浅間神社を創建せよとの勅命が発せられます。なんでも駿河の国の浅間神社の怠慢で富士山が噴火したので、甲斐の国でも浅間神の祀れということだったようです。
その神社こそ現在の富士河口湖町河口にある「河口浅間神社」です。実際は三代実録の浅間神社は現山梨県内のいくつかの神社に比定されており、私も実のところ異説を支持したい立場なのですが、まあ今日のところは一般の説に従っておきましょうか。
というわけで、今日は家族で河口浅間神社に参拝してきました。11日の東北地方太平洋沖地震、その後の茨城沖の地震、そして15日の富士山直下の地震を受けて、鎮火・地鎮を祈りに参ったわけです。
平安時代には、864年富士山噴火→869年三陸沖地震→887年仁和南海地震(実際には東海・東南海・南海地震連動型)というとんでもない連続災害が発生しました。今回はそういうことにもならないように祈ってきました。
今ではこの神社もパワースポットとして有名になっていますね。たしかに樹齢1200年という七本杉をはじめとんでもない「気」を発していましたね。カミさんや子どもたちも「あったか〜い」と言いながら杉の木(気)に触れていました。
私は「気」ではなくて、1200年を生きのびてきた、そのパワーの源泉となった「花粉」を思いっきり吸い込んでしまいまして、久々に鼻水が流動性の高い溶岩のように流れ出てしまいました(苦笑)。
ご覧のように、「鎮国」だけでなく「鎮爆」の文字まで掲げてあります。「鎮爆」はすごいな。そして、「天柱地鎮」の扁額も。まさに今必要な「祈り」、そして「言霊(事霊)」ですね。人間の気合いを感じました。
こちらに書いたように「マツリゴト」は「モノ」への懐柔と献呈と服従の意の表現ですが、それは単にゴマをするのではなく、まさに気合いを入れて、魂を込めて真剣に命懸けでやらねばならなかったのです。
それが感じられる神社ってそうそうありません。私の体験から言うと、ここ河口浅間神社と伍するのは鳥海山の大物忌神社かなあ…。
静岡側の大宮口や吉田口の冨士浅間神社もいいんですけどね、ここももっと深い意味でいいですよ。富士山の噴火が怖いという方、家でビクビクしているヒマがあったら、ぜひ河口浅間神社はじめ富士山を取り囲むたくさんの浅間神社を訪れて、そして祈って下さい!
そうそう、浅間神社と言えば祭神は木花咲耶姫命。そのコノハナサクヤヒメの夫神の名を名乗り、とんでもない流言飛語を垂れ流しているバチ当たりがいます。非常に残念なことです。なぜそれにだまされる人がいるのか、非常に不思議であり、残念であります。
きっとその方からすれば、私こそとんでもないウソつきということになるのでしょうね。まあ、それはそれで結構ですし、あんまり私もムキになると先方と同レベルになってしまうので、この辺でやめときます。
しっかし、こちらでも紹介した、富士山頂から東麓に現れる「山旗雲」を「噴煙」と言い切ってしまうのですから、こりゃあホントに困ったものです。それを信用する大人がたくさんいることにもガッカリしてしてまいますね。
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コメント
町は無反省に再建されたわけではありません。
漁業を生業とする人間が海辺に住まずしてどこに住めと? 利益や利便を追求するのは人として当たり前のこと。それを離れた場所から否定して何の意味があるのか? 現実的な問題として、際限なく防潮堤を高くすることなどできないのですよ。
そもそも庵主様は一体どのような歴史や過去の経験を元に富士山の周辺に生活拠点を置くのか? 想定される災害に対し、どれだけ万全の対策を施されているのか?
それから 30m 超の高波は、波が入り江に入って隆起してからの話だと思いますよ。防潮堤が築かれたあたりでの想定高と単純に比較されていませんか?
なんですかね、選挙結果にせよ、大相撲の八百長問題にせよ、海老蔵にせよ、今回の災害にせよ、庵主様の「国民は愚かだ」という切り口が、だんだん鼻についてくるようになりました。ご自身には、自分が国民の一部であるという自覚がないのでしょうか?
投稿: LUKE | 2011.03.21 01:45