花粉と放射性物質はなぜ舞っているのか
↓杉花粉飛散マップ
昨日の話の続きとしましょうか。
この世界は「コト」と「モノ」でできています。それで全てです。ものすごく簡単に言えば、この世界は「自分」と「他者」、あるいは「知っているコト」と「知らないモノ」でできているということです。「既知」と「未知」。昨日の話で言えば「想定内」と「想定外」。
私たちの人生は、外部たる「モノ」を内部たる「コト」に取り込むことを主目的としているとも言えます。他の命を食したり、風景を見たり、音楽を聴いたり、学校で勉強したり、テレビを見たりするのは、基本そういう行為です。それを「コトを為す」という意味で「シゴト」と言います。
そして「コト」のメディア(媒体・手段)の代表が「コトの葉」です。人類の人類たる所以が「言語」にあるというのはそういうことです。
そして、相手にとっての「未知」たる「モノ」を伝えようとするのが「モノガタリ」ということになります。「カタル」という動詞は「コト」と同源です。
実際のところ、言語というメディアにも、そのメリットとデメリット、功罪という両面があります。たとえば「言語(記号)」によって普遍性を極めようとしたものに「科学」があります。科学はこの多様で雑多な「自然」という「モノ」を、どんどん人間の脳ミソで切り刻んで整理していきました。その功罪については、今回の地震や原発事故を見れば誰にでもわかると思います。
さらに近代になって「カネ(貨幣)」というメディアの勢力も非常に強くなりました。貨幣という「数値」によって、私たちは、多様で雑多で本来不可定なはずの「個人的な価値観」をどんどん切り刻み整理していったのです。その功罪も私たちは日々実感していますよね。
今はやりの花粉症なんかいい例でしょう。多様な日本の森をですね、国をあげてものすごい勢いで伐採して、そしてキレイに整然と杉の苗木を植えていった。杉がカネになると考えたからです。伐採や植林は科学や工業の領域ですね。経済と工業の見事なコラボレーションの結果、数十年後「想定外」の量の花粉が舞うことになった。のちに杉がカネにならなくなって森が手入れされず放置されたからです。
そう、「コト」の特徴は、「その時」性、「今」性が高いということなんです。我々の仕事は、実は今の欲求に忠実なのです。
「コト化」すなわち「シゴト」は、おそらく我々人類にアプリオリにインプットされたもの、まあ本能の一部でしょうから、そこにはモティベーションとしての「欲望」および、それが達成された時の「快感」が付随しています。
だから、その行きすぎを誰も止められないわけです。一種の麻薬性があると言えるかもしれません。それこそが様々な「人災」を起こしてしまう原因です。
自然を思い通りに制御したい、他者を思うように動かしたいという欲求は、結果として「科学」に基づく「工業技術」を発展させました。そして、私たちはその究極の形である「原子力工学」と「遺伝子工学」に手をつけてしまいました。この二つはもちろん、人工的に「自然」を作り出す行為です。つまり「神」の領域にまで足を踏み入れてしまった。
その最たる「作品」が、自然界にはほとんど存在しない「プルトニウム」でしょう。おそらく神様が生物(人間)にとって有害すぎるし有益でないのでほとんどお創りならなかった「プルトニウム」を、バカな人間(実際にはある科学者個人)が「その時」の欲求にまかせて作ってしまった。
そして、それが原子爆弾を生んで日本に投下されました。日本は神の怒りの直撃を受けたとも言えるでしょう。しかし、戦後、これまたバカな一部の人間の欲求のために、いや日本国民全体の「右肩上がりの継続」という欲求のためにでしょうか、こうして原子力発電を日常の中に作り、そしてほとんど意識的に意図的に、我々の日常の中に隠蔽してきました。おかげでこうして我々は自らの今の欲求を満たす「電力社会」を謳歌してきたわけですね。
そして、この現実です。我々は再びプルトニウムの洗礼を受けるのでしょうか。「モノ」たる自然の「コト」への逆襲。残念ながらそういうことになってしまいましたね。
以前私は「コト」の本質として「時間を微分して疑似的な永遠性を得る」ということを挙げました。その反対に「モノ」には必ず「時間の経過」という性質が伴います。私たちの脳ミソで処理される「情報」自体は不変で永遠なのですが、それを具現化すると「モノ」になってしまいますから、必ず経年変化、劣化していきます。そして、私たちの「シゴト」は虚しく「モノ」に帰すのです。それが歴史なのです。
スギ花粉と放射性物質、実は同じ仕組みで舞っているのです。最後は「モノ」まかせ、つまり風まかせであり、私たちはただ「祈る」ことしかできなくなってしまうのです。
ただ違うのは、前者が神が創った自然の「モノ」であるのに対し、後者は人間が作った「コト」であるということですね。
ちなみに私は重度の花粉症だったのですが、一日一食にして半年でほぼそれを完治させてしまいました。ある意味自分が「コト」を捨てて「モノ」に帰ったからこそできたことだと思います。では、「コト」たる放射性物質、たとえばプルトニウムについてはどう対処すればいいのか。それは今から考えます。楽天的な私にはその方法があるような予感がしているのです。
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