『大行進~中国“小皇帝”たちの孤独~』 (NHKハイビジョン特集)
先週見忘れたこの番組、昼間再放送していたので、家族でじっくり鑑賞。いろいろ考えさせられる内容でした。
急激すぎる経済発展を遂げる中国。その歪みの犠牲者となっている子どもたち。その苦悩と再生の様子がていねいに取材されていました。
ものすごく簡単に言ってしまうと、中国版「戸塚ヨットスクール」ということでしょうか。親とのディスコミュニケーションから非行に走った子どもたち(小皇帝)が集う民間の訓練学校です。
昭和の日本を見るようでもありましたね。私も高度経済成長の東京に育ちましたから、社会全体にそうした歪みを感じていました。子どもや若者が荒れ狂っていた時代でしたからねえ(私はフツーに育ちましたが)。
その原因のほとんどが、経済成長に伴う、親の子どもへの無関心でした。いや、もちろん関心があるように演じてはいましたよ。「あなたのためにこんなに頑張って働いているのに」と。
もちろん中国の新富裕層の親たちは、同じことを言っていました。ある意味日本よりも極端な言葉が聞けたかもしれません。「物は全てそろっているのに、なんで言うことを聞かないの」というような…ドラマやマンガじゃありませんよ(苦笑)。
私も長いこと教師をやっておりまして、本当にいろいろな問題を抱えた生徒と関わってきました。そのほとんど、いや全ての原因が、親とのディスコミュニケーションでした。
ディスコミュニケーションというのは、単に話をしないとか、一緒にいる時間が少ないとか、親が高圧的だとか、そういう単純なことではありません。たとえば両親がいない子どもでも素直にたくましく育つ場合もありますからね。
説明するのが難しいのですが…子どもが生まれてからその時々に親に(あるいは他人に)要求することが、いろいろ変るじゃないですか。それも人それぞれ本当に違う。それらにその時々どれだけ答えてあげられたかなんですね。「今」どうのこうのではないのです。
私も含めて、大人、親というのは、どうしても「今」の自分の基準で子どもに接してしまう。その極端な例が、最近とみに増えた「子どもを自己実現の道具と思う親」です。昔もあったかもしれませんが、ホント最近多くて子どもたちが可哀想ですよ。わかりやすい例で言えば、「(単に)自分が英語が話せないから子どもに英会話を習わせる」という親です。
反抗期以前には、子どもにとっての「親」は「神」ですからね。神様を絶対的に信じているわけです。そんな「神」が、経済成長の中で「金(カネ)」や「欲」という「悪魔」に惑わされている。それこそ子どもにとっては最悪な状況です。
子どもは反抗期を迎えて、そこに気づいてしまうわけですね。それで、いろいろな形の表現が始まる。非行はその一つの形にすぎません。
そうした、反社会的な行動や暴力に対して、はたして教育は何をしえるのか。その一つの解答がこの中国の訓練学校にはあったかと思います。
「厳しさという愛情」…たしかに、これって効果があるんですが、教育の作業としては、非常に面倒で疲れるんですよねえ(苦笑)。特に、現代日本においては「厳しさ」が「継続」の障害になることが往々にしてあります。その点、まだ中国ではそれが通用しているのかなと思いました。
クライマックスは、2週間で400キロを歩くという「大行進」。子どもたちに「達成感」と「自信」を与えます。教育ではよくある「困難を乗り越える」というやつです。私は個人的にですが、こういう試練を無理矢理与えるのは、別に学校や教師でなくともできると思っています。それをいい教育だ、先生の手柄だと考えるのは、ちょっと違うかなと。ま、それでもさすが中国はスケールが違う。どうせやるならこのくらいじゃなきゃ。これを年数回やるというのですから、おそるべし中国の教育…いや「訓練」。
いちおう同業者ですからね、訓練学校の先生方のご苦労、いやというほど分かりました。そうとう給料もいいのでしょう。実際、その学校の学費は日本円で言えば月20万円くらいなのでは。つまり、ここにも経済の原理が働いている。教育格差があるわけですね。
まあ、それにしても親たちの言動には笑ってしまいましたね。荒れた子どもたちの方がずっと大人っぽく見えました。
そうそう、現場の声としてどうしても言っておきたいことがあります。
親とのディスコミュニケーションによって、思春期に苦悩した子どもたちが、うまく育てられた子どもよりも劣っているかというと、決してそんなことはないということです。
ある意味特殊な経験と試練と葛藤と煩悶を経た人間には、それなりの力がつくということです。多くの芸術家などの偉人が、幼少期に特殊な家庭環境にあったりするのは、よくあることですよね。
全てを単純化することは間違いだということですね。教育や子育てに「決めつけ」は厳禁なのです。
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コメント
先生こんにちは(゚▽゚)/ うちは仕事柄 拘束時間が長く、子供達と接する時間は ほかの子と比べると断トツで少ないと思います。
学習面でも漢字のつまづきがあり、先日ケースワーカーの先生と話す機会が設けられました。
一言では片付けられませんが、息子の状況を見て 先生によってだいぶ見方が違うという事に気付きました。
大丈夫、伸びしろはある、という先生。
これだけ頑張っても出来ないというのは問題があるんでは…という先生。
結局 話だけの判断だと「漢字」LDという事らしいです。
今後二時間かけて個人的に面談して原因を特定するそうです。
親としては…複雑ですが 叱っても仕方ない状況とわかり、少し楽になったかな…
フルに働いてるとは言え、全然 富裕層ではないですし、やる気もないのにお金積んで塾にいかせるような事もしてませんが、子育ての難しさは全て長男が教えてくれている、そんな感じです。(なので次男、三男の事は ちょっとやそっとでは動じません。)
普通に、のレベルが昔とはだいぶ違いますね。
先生方にもご苦労かけているので、逆に繋がりは濃いですf^_^;
投稿: さお | 2011.02.13 12:43